道路構造物ジャーナルNET

第62回 維持管理は総力戦

民間と行政、双方の間から見えるもの

富山市
政策参与

植野 芳彦

公開日:2021.02.16

1.はじめに

 相変わらず、新型コロナウイルスが猛威を振るっています。世の中、この話題一色です。これに気を取られているとインフラの老朽化問題は、ひたひたと静かに侵攻してきている。待ったなしの状態なのだが……。意外と皆さん冷静というか? 一部の人たちの話しか聞かない。人口減少は必ず来る。これがどれくらいのインパクトをもたらすか? 人口に関しては国民が意識していないというところが大きい。無関心だということである。
 インフラの老朽化も同様。無関心であり、そもそも議員さんたちが、昔のままの考えでミスリードしようとしているのを見ると、情けなくもあり腹が立つ。我々は、とんでもない世界の入り口にいるのだが、あまり理解されていないし、それに対抗する人たちも少ない。

2.何人で1橋を管理します?

 最近、新型コロナウイルスの動向を見て考えさせられることが多い。おそらく、我が国は初動対応が間違ったのだと思う。これは日本人の悪いところである。最初に厳しい対応ができない。様々な理由があるだろうが、一気に鎮圧するというのができない国民なのだと思う。それでも、第2波、第3波はあったと思うが、皆優しくて、他人を気にしているからそうなるのである。
 全数近接目視点検の、第1ステージが終了し、道路メンテナンス年報などを見ても結果はほぼ予想通りである。約1割がⅢ評価、つまり7万橋がⅢである。この、Ⅲ評価を修繕していくことは非常に大変である。


 東北大学の久田先生が、人口当たり何人で1橋の面倒を見なければならないか? ということを言われる。評価としては説明力があり、危機感を示すのに良いと感じている。富山市では、2,200橋/42万人であるので、大体190人で1橋を見ていくことになる。冷静に他の自治体と比べると意外に良い数字かなと思う。簡単に言うと、子供までを含めて190人で1つの橋に対応することになる。通常は税金。しかし、もっと厳しい市町村は、たくさんある(単純に全国平均すれば170人で1橋)。
 将来予測をすると、相当に厳しい。というか、無理であると感じている。さらに、今回のコロナで財政は落ち込む。いかに工夫し、対処するか? 私は、危機感を持たない方々の存在が信じられない。たぶん、私の世代は多少の見苦しい状況を経験して終焉を迎える。しかし、2030年くらいを境に急激に悪化し、2050年、2070年と行くにしたがって、とんでもない状況が襲ってくる。若い方たちは、とんでもない未来が待っているかもしれない。私は、自分の子供や孫に暗い未来や大きな負担を残したくはない。
 さらに、災害も来る。老朽化した構造物が災害に耐えられない。現在の技術力の低下が、恐らく過去に比べ不安定な構造物を作っていると私は考えている。そんなものは、災害で不測の外力がかかれば、一発で持っていかれてしまう。この国難に対抗していくのは、我々土木技術者である。

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