道路構造物ジャーナルNET

㊱「(地元)コンサルの能力=発注者の能力」である

民間と行政、双方の間から見えるもの

富山市
建設技術統括監

植野 芳彦

公開日:2018.11.16

1.はじめに 

 前回は、コンサルへの能力別発注に関して書いた。内容が気に食わない方々も多いことだと思う。しかし、現実なのだ。反省の無いところに発展は無い。委託するコンサルタントの能力は、発注者の能力につながる。点検であれば点検精度。補修設計であれば、補修の良否。通常の設計業務では寿命に。計画ではその後の多くの課題をはらんでいることを認識しなければならない。本来は地元コンサルの能力は、その自治体の能力となることを認識しなければならない。
 では、信頼関係を如何に築くか?それは、第一は誠実さであろう。何が誠実か?(能力的に)できないことはできない。わからないことはわからない。実績のないものは、実績が無いのでできない。と言うことである。双方で知ったかぶりをして、良くない結果を出すよりも、やらないほうがよい。今回は、前回の続きと「再劣化」について書く。

2. 「(地元)コンサルの能力=発注者の能力」である

前回の能力別発注で、何が言いたいかと言うと、私は常日頃、自分の経験から「医者と弁護士とコンサルは良いところを選べ。」と言っている。ダメなところを選定すると医者は命に関わり、弁護士は裁判の時に負けてしまう。コンサルは実際自分にあまり影響が無いので、適当に選んでいるのではないだろうか?しかし、これからの時代リスクを抱えることになると考えている。周りを見ていると、皆さん勉強が足りない。何処の企業がどういうことが得意でどういう会社か?経営状態はどうなのか?全然勉強していない。これは、私に言わせれば怠慢だ。企業の名前すら分かっていない。自分が関係する業界くらい、勉強しておくべきだ。

 今はなかなか目に見えないが、今後問題になってくるのは、維持管理のコストである。知見の無い発注者が、知見の無い業者に発注し、打合せをしても良い結果にはならない。これを理解すべきである。そして、素人に税金を払って発注する必要は無いので有る。「地元育成」といつも言われるが、住民はそれを望んでいるのだろうか?納税者の一部で有る、市内業者がそれを望んでいるだけではないのか? それによるリスクのほうが長い目で見れば大きいと思う。

 そもそも育成できるのか? と言う問題が有る。こちら側の能力の問題もあるが、私は一番大事なのは、育成されるほうの姿勢だと思う。私がよく言うのは「相手に育つ気がなければ育てられない」という事である。仕事を出せば育つのか? と言いたい。その姿勢を判断するのが、有資格者数であり、実績、さらには、「業務評価」である。業務評価については、発注者側はキチント付けるべきであり、評価されるほうは気になるのが普通だと思うが、ここではそうではない。

 さらに、災害時に協力してもらえると言うことも言われるが、果たしてそうだろうか?それで決めてしまってよいのだろうか?未だに、議員や市長に私の悪口を言って何とかしようとしている程度の業者が、本当の意味での仕事ができるのか? 市民に多大なリスクを負わせることになるのだが、何処まで分かっているのか?何をどうしても、地方の理論というものがあるので、どうやってもらってもかまわないが、責任だけはとってほしい。

 表題に書いたように「(地元)コンサルの能力=発注者の能力」であることを忘れてはならない。この最初の部分がうまくいかないと、私の構想は全て終わる。もうやる価値が無いので、後は諦めてもらうしかない。「勝手にやれば」と開き直るだけである。
 なぜ、地元コンサルの状況にこだわるのか? というと、地元コンサルの技術力、能力がその自治体の能力であるからである。これはコンサルだけではなく地元建設会社に関しても同様であるが、自治体がきちんと指導し育成してきたかが問われているのである。長年甘やかしてきた結果が現在なのであるのは、既存の構造物を見れば一目瞭然である。これらを今からでも遅くないのできちんとしないと、維持管理のコストは増大する方向に行き、財政は破綻する。
 過去から、「地元の育成」というまやかしの言葉で、甘やかしてきたのが現在の結果であり、自業自得なのであるが、官庁職員も民間企業も育たない結果となってしまった。これは、首長さんや議員さんのそういう希望があるという、勝手に解釈している幹部職員の責任である。もし仮に、そういう圧力があれば、現在の社会では大変なことである。また、「災害時に助けてもらうため」ということもよく言われるが、本当にそうなのだろうか?災害時には、地元は機能しなくなり他所からの応援のほうが頼りになる。まあ、この議論はしても仕方がない。
 インフラの維持管理において、最大の難関が、今後補修をどのようにしていくか? ということである。現在の点検は、維持管理、マネジメントの入り口に過ぎない。しかし、その根本の議論もない。実際にかかわってこなかった人たちが机上で議論しても良い結果は出ない。点検率ばかり求め、その精度の議論もない。点検精度が悪ければ、後工程である診断や補修は、適正ではない結果になる。長寿命化、予防保全と言っている割には、この辺の仕組みができていない。


ゲルバー部の再劣化状況

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