道路構造物ジャーナルNET

シリーズ「コンクリート構造物の品質確保物語」㉔

ひび割れ抑制の考え方 その①(東北地整のひび割れ抑制のための参考資料(案)の策定)

横浜国立大学
大学院 都市イノベーション研究院
准教授

細田 暁

公開日:2018.05.10

(3)橋脚、橋台の既往の実績に基づくひび割れの照査と抑制対策の検討
 函渠、擁壁については、ひび割れの照査は行わない。そして、橋脚、橋台のひび割れの照査は、既往の実績による評価を用いることを基本とした。その上で、既往の実績による評価が難しい場合は、温度応力解析により照査するものとした。
 ここでいう既往の実績とは、施工記録等に基づいた客観的な評価が期待できる信頼性の高いデータを意味する。発注者および施工者のいずれか、もしくは双方が収集した、過去の実績や最近の同様な構造物の実績等が想定される。例えば連続高架橋の橋脚のように、同種の構造物が数多く施工される場合には、既往の施工実績から、施工段階で発生する初期ひび割れを予測することができる。また、橋台のたて壁や胸壁については、既往の実績による評価を用いることが望ましいが、本参考資料では、既に十分なデータの蓄積がある山口県の「コンクリート構造物品質確保ガイド 2017」3)のコンクリート施工記録のデータベースを照査に活用することを推奨した。ただし、東北の環境条件は山口県とは異なり、また骨材等の使用材料も各地で異なること等を念頭に置く必要がある。図-3に、山口県のデータベース等を活用したひび割れの照査と抑制対策の検討フローを示す。


図-3 山口県のデータベース等を活用したひび割れの照査と抑制対策の検討フロー

(4)温度応力解析による検討
 既往の実績に基づくひび割れの照査が難しいために温度応力解析を活用してひび割れの照査と抑制対策を検討する場合は、ひび割れの発生の有無の判断はひび割れ指数を用いて行うこととした。ひび割れの発生を許容する場合は、ひび割れ幅が過大とならならないように、当面1.0以上のひび割れ指数を確保することを目標とした。ひび割れの発生をできるだけ制限したい場合には 1.4 以上を確保することが望ましいとした。
 照査の結果、ひび割れ幅が目標値を超えることが懸念される場合には、ひび割れ指数が 1.0以上となるような対策、もしくはひび割れの発生を許容してひび割れ幅が0.2mmを下回るような対策を施すこととし、過剰なひび割れ対策が取られないような方向性を目指す記述とした。この背景は、温度応力解析により計算されるひび割れ幅の精度が高くなく、特に、橋台のようにひび割れと直交方向の鉄筋費が比較的小さい部材においては、ひび割れ幅が安全側に計算される傾向があるためである。
 そのため、ひび割れ指数で検討する場合には、ひび割れ指数の目標値は1.0とし、ひび割れ指数を用いない場合でも結果的にひび割れ幅が0.2mmを下回るように適切な対策を施せばよいように性能準拠的な記述に留めた。

3.「ひび割れ抑制のための参考資料(案)」の今後の課題

 ひび割れ抑制はコンクリート構造物の品質確保のために必要な手段の一つであるが、実態としては、過剰なひび割れ抑制対策が講じられる場合が少なくない。ひび割れの発生、ひび割れ幅には設計、施工、材料、環境条件等の多くの要因が関連し、目に見えるひび割れは調査・検査や補修の要否に関してのトラブルになりやすい。本来は、構造物の耐久性の観点から補修の要否を技術的に判断する必要があると思われるが、0.2mmという画一的な値がひび割れ調査の規格値として定められている現状も鑑み、現実社会の枠組みで合理的にひび割れ幅を0.2mm未満に抑制する方策を参考資料として取りまとめた。今後、0.2mmの規格値や、構造物が供用される環境等も適切に考慮したひび割れ抑制の方策を模索していく必要があると認識している。

4.次号以降で述べたいこと

 ひび割れは奥深い。ひび割れ自体が構造物の性能に本当に悪影響を及ぼすかどうかはケースバイケースであるが、仮に悪影響はない場合であったとしても、人間はひび割れから多くのことを学ぶことができる。目に見える、ある意味で非常に分かりやすい指標であるから、誰もが関わることになるし、人間の側が油断してかかるとひび割れに翻弄されることになる。私自身は、ひび割れを技術だけでなくマネジメントの観点で捉えるように心がけている。
 次号以降、今回述べた「ひび割れ抑制のための参考資料(案)」に基づいた実構造物の事例や、大本の山口システムにおける実例、温度応力解析の課題や適切な使い方などについて、私の知る範囲で述べていきたいと思う。

参考文献:
1) 土木学会、コンクリート技術シリーズNo.114、コンクリート構造物の品質・耐久性確保マネジメント研究小委員会(229委員会)成果報告書、2017.7
2) 東北地方整備局:ひび割れ抑制のための参考資料(案)(橋脚、橋台、函渠、擁壁編)、2017.2
3) 山口県:コンクリート構造物の品質確保ガイド2017、2017.4

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