道路構造物ジャーナルNET

-分かっていますか?何が問題なのか- ㉟鋼道路橋の耐久性向上(その2)

これでよいのか専門技術者

(一般財団法人)首都高速道路技術センター
上席研究員

髙木 千太郎

公開日:2018.03.01

はじめに
『道路橋の耐久性向上』をメインテーマとし、前回からその中でも『鋼道路橋の耐久性向上』について私の考えをもとに説明をスタートさせた。今回で2回目となる『鋼道路橋の耐久性向上』は、時間軸の短い疲労損傷から時間軸の長い腐食損傷へと移っていく。しかし、いずれにしても耐久性の向上、寿命を延ばす施策は、多くの専門技術者が目標とはしてはいるが、なかなか到達点が見えてはこない。私が自らも取り組んできた『道路橋の耐久性向上』を敢えて今回のメインテーマに据えたのは、法制度化された点検・診断は完了し、それをもとに計画を立てはしたが、最も重要な措置、対策は未だ進まずの声が国内のあちこちから聞こえてくるからだ。今回の連載は、多くの技術者に少しでも参考になれば幸い、との私の強い思いで執筆していることを理解され、今回の連載を有効に活用していただきたい。
そして前回の文末には、図々しく自分のPR、私が書き下ろした書籍『これでよいのか!
インフラ専門技術者』の購入をもお願いした。2月末には書店の店頭に並んでいる私の書籍(写真‐1参照)には、本ネットでの連載当初約2年間のエキスと連載の中では書くことができなかった、点検法制度化以降に起こった重大事故を取り上げている。この理由は、国を含めて数多くの地方自治体が維持管理を重視する社会に舵を切ることができたと勘違い(私の個人的な感覚かもしれない?)し、重要施策から外れつつあるからだ。
 事実を証明するとは言いたくは無いが、あれほど大騒ぎした中央道・笹子トンネル天井板落下事故も昨年12月に事故後5年目となったにもかかわらず、その後の措置、成果は全く話題にも上らなかった。放送局名は差控えるが半年前、ある記者が私に取材に来て「今年の12月で事故後5年を迎えますが、どのような考え方をお持ちですか?」と聞かれた。当然私は、その後の国の取り組み、地方自治体や高速道路会社の現状と課題を説明した。すると記者は、「髙木さんの話されたことを局に戻って相談します。ご相談した件で年末に放映したいと決まった時は、お願いできますか?」と口にし、帰っていった。その後連絡も無いし、笹子トンネル天井板落下事故を大きく取り上げた番組も無かったことから、番組を制作しても視聴率を取れないと判断したのであろう。
 要するに、『安全・安心を確保するインフラメンテナンス』では、話題性に欠けると判断したのだ。しかし、現実はどうであろうか? 今回の書籍執筆は、悲惨なインフラ事故が再び起こらないように、敢えて警鐘を鳴らしたと私は考えている。前回もお願いしたが、ネットで読むのとは大きな違いと考えている。私の書籍を是非お読みいただき、皆様の意見(反論を含む)を『道路構造物ジャーナルNET』のメイン記者・井出迫氏がパンクするくらい多数いただきたい。我々の真の声を国民に聞いてもらいましょうよ、読者の皆さん。ここで話を書籍のPRから本題に戻すとしよう。

鋼橋の製作・架設で品質管理をないがしろにする事例が多すぎる
 世界のインフラ業界で日本の置かれている厳しい現実を直視

 前回私が言わんとしたことは、疲労亀裂調査の第一ステップ、塗膜割れと疲労亀裂の相関性について、分かって業務発注していますか!ではない。道路橋に発生する疲労亀裂は、特定な交通環境下で起こることを理解してほしかったのが第一の理由である。私の経験から言わせてもらえば、市街地の道路橋、それも大型車混入率が高い箇所であったとしても、疲労亀裂が発生する確率は一部の学識経験者が言うほど高くはない。適切に設計と製作が行われていれば、違法な過積載車が日々通行する条件であっても、重大事故に繋がるような疲労亀裂発生の可能性は低い。最も恐れているのは、受注した企業が鋼橋の製作・架設工事を利益追求することに重点をおき、品質管理をないがしろにするような悪しき事例が多すぎることだ。この事実を私の連載を読む読者の多くの方々に問題視してほしいからなのだが。良く言われる話に日本の製作技術は世界一との評価がある。果たして本当なのだろうかと疑問を抱く事例が後を絶たない。夢を追うことは素晴らしいとは思うが、世界のインフラ業界で日本の置かれている厳しい現実を直視することが我が国の関係者には必要と私は思う。前回の最後に載せた『謎の鋼製蝶番』事件を読み、私が提供した嘘のような実物写真を見た方はどう思ったのか聞きたいものだ。

塗膜割れ=疲労亀裂ではなかった失敗談

 次に前回、鋼道路橋の耐久性向上とは言いつつ、かなりの枠を使って塗膜割れと疲労亀裂の説明を行った真意を明かそう。実は私自身の失敗談がベースとなって、同じような判断を行わないようにとの親心?から前回説明した。
 塗膜割れイコール疲労亀裂が存在すると考え、全てを非破壊試験によって確認することは、リスク管理から言えば安全側の判断とも言える。しかし、経費縮減のご時世、管理者から「疲労亀裂発生箇所の塗膜割れぐらい、専門家であれば当然わかるでしょう。まさか全てを詳細調査するわけではないですよね」と言われかねないからだが。それでは自らの恥ずべき経験談を語るとしよう。
 私は地方都市の道路橋において、塗膜割れイコール疲労亀裂内在と思い込み、「疲労亀裂発見! これは重大損傷につながりますよ」と言いそうになった。皆さんが聞きたい話に進む前に、自らの立場を守るために何故これから話すシチュエーションになったか前提条件を説明しておこう。ある時、私に地方の道路橋を何橋か見る機会が設けられた。私としては、初めて訪れる地域であることから、現地調査に行く前に(道路橋の種々な問題を調査するために現地調査に出向いたので、疲労亀裂調査がメインテーマではない)、同行する職員にどのような環境下に管理橋が置かれているのか聞いてみた。
「資料を見ると、大型車が通っている路線もあるようですが、過去に疲労亀裂があった橋梁はありますか?」と私が聞いた職員は、行政職員となる前にコンサルタントに在籍していたこともあって、疲労損傷の知識もあるからか、「管内の橋梁では、過去に疲労亀裂が発見されたことを聞いたことも無い。私自身現場に行って幾つも橋を見ていますが、管理している道路は疲労損傷が発生する環境とは思えません」と答えが返ってきた。私は結構はっきり物事を言うなと思うと同時に、説明資料を見ながら国や県から移管された橋梁、緊急輸送道路上の橋もあることを確認。心の中で「彼はそう決めつけてはいるが、資料を見ると亀裂発生の可能性は皆無ではないな」と呟いた。もし私が亀裂を発見すれば、「さすがですね髙木さん、専門技術者としての見る目持っていますね」と、私に対する評価もかなりあがるはずと、変な欲がでた。
 そうこうしているうちに目的の橋に到着、調査が始まった。写真‐2を見てほしい。疲労亀裂発生の高い箇所事例としても良く取り上げられる箇所である。


写真‐2 下フランジと補剛材交差部の塗膜割れ

 私が見間違いそうになったこの橋は、供用後42年経過した鉄筋コンクリート床版単純鋼合成H型橋である。主桁の下フランジに登り、床版に取りつく横構のコーナーを見た瞬間に「疲労亀裂発見!」と心の中で叫んだ。

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