道路構造物ジャーナルNET

①愛知県の地方機関における橋梁現場担当の現状

若手・中堅インハウスエンジニアの本音 ~マネジメントしつつ専門的知見を得ていくために~

愛知県豊田工事事務所
工務課(工務・環境グループ)

宮川 洋一

公開日:2017.07.06

はじめに
 先日、設計から現場施工までを一貫してかかわった橋梁の長寿命化工事が、(一社)全国建設技術協会の「全建賞」をいただくという、うれしいニュースが飛び込んできた。
 当時は非常に限られた時間の中でただ無我夢中で挑んでいたので、全建賞に応募するなんて考えもしなかったのだが、私の転勤後、後任の方々が応募してくれた。とてもうれしかった。本工事にかかわっていただいた方々に感謝したい。


殿橋の上部工連続化による耐震補強(平成28年度全建賞授賞事業に選ばれた)

 地方自治体の出先機関における橋梁現場の最前線から離れて2年目、ようやく精神的にも体調的にも普段の日常を取り戻した感がある。
 今思い返してみれば、この工事だけでなく、まだまだやり残したことはいくつもあるものの、もう一度あの状態に自分自身が置かれた場合に同じ事が実現できたのかと考えてみても、自信どころか、チャレンジすることができるのか心もとない。本工事の内容は過去に本誌で紹介されている。その詳細やいきさつなどについてご報告したいが、それはのちの機会にすることとし、今回は、愛知県の地方機関における橋梁現場担当の実情について紹介し、それらについて私が思うことを書いてみた。かなり主観的な書きぶりもあると思うが、どうかお許し願いたい。

橋梁現場最前線の仕事

 愛知県には9つの建設事務所がある。その中で私の所属していた西三河建設事務所は、徳川家康の生まれ故郷、岡崎市を中心とした三河部の都市圏域に存在し、トヨタ自動車の本社工場を有する豊田市の隣に位置することから、製造業の盛んな地域といえる。
 人口約60万人、面積600㎢、一級河川矢作川が流れ、山間部から三河湾を望む海岸部まで存在する。管内の管理橋梁は約550橋ある。
 愛知県全体では、人口約750万人(名古屋市230万人含)、面積約5,200㎢、管理橋梁は政令市名古屋市を除いて約4,400橋あり、当事務所は概ね平均的な規模の事務所といえる。


(位置図)

橋梁現場担当の仕事内容

 西三河建設事務所には、本部と支所があり、それぞれの管内を担当各課が分担して所管している。本部の道路整備課に所属する橋梁担当は唯一、本部、支所を含めた管内全域を所管する。施設管理をする維持管理課は別に存在するが、既設橋梁の維持補修業務は橋梁担当が所管することとしている。

 新設橋梁は、橋長50m以上の複数径間の橋梁を対象としていたが、近年はそれに満たない橋梁や、前後区間の道路築造も含めた一連の区間を担当する。少なくなったとはいえ、新設橋梁事業は3橋ほどの現場があり、そのうちの1橋は前後区間の道路築造を含む区間の供用開始までを含めて担当していた。道路築造を含むと、隣接する土地区画整理事業との工程調整、用地買収地権者、乗り入れ調整、交差道路との調整、電気、ガス、水道、NTTなどの占用者、流末管理者との調整、供用開始に伴う協議などすべてを抱えた。

 橋梁点検は5年で一巡させる計画であるため、毎年100橋程度の橋梁点検を建設コンサルタントに業務を委託しており、10m以下の橋梁については再任用職員が直営にて点検業務を行っている。
 当県では以前より橋梁点検は実施されていたが、平成19年度より改正された点検要領に基づき実施されて以来、既に一巡を超えた。平成26年度からは、道路法改正に伴い橋梁点検が義務化され、改定された点検要領に基づき、実施している。
 これら橋梁点検結果に基づき、県内全橋梁を対象とした「橋梁長寿命化修繕計画」を策定し、計画的に点検・補修工事を行ってきた。
 当初のころは緊急工事を要する重大な損傷がいくつも発見されるという時期があったが、実はこれらの損傷は建設コンサルタントの実施する「橋梁定期点検」では見つかっていないことが多かった。これらの事例についても後日紹介することとしたい。

 既設橋梁の耐震補強については「あいち地震対策アクションプラン」が策定されており、これは阪神淡路大震災後の平成8年度に全国的に実施された「道路防災総点検」結果に基づき抽出された橋梁を対象としている。この計画では耐震対策がメニュー化され、主に上部工対策として落橋防止、下部工対策として橋脚補強を実施している。その後、国から通知が出された「緊急輸送道路の橋梁耐震補強3箇年プログラム」(いわゆる「3プロ」)を受け、時点修正しながら、「第2次あいち地震対策アクションプラン」、「第3次…アクションプラン」まで強化されている。この耐震対策についても思うことがあるので、これものちの話題としたい。

 上記のほか、鋼橋の再塗装工事、橋面舗装工事、ジョイント取り換え工事などの定期修繕的な更新工事を行っている。

 工事の発注・監督だけでなく、測量・調査・設計業務委託の発注(特記仕様書作成、積算、見積徴取など)、業務委託の監督のほか、河川管理者、交通管理者、占用者、鉄道事業者、交差道路管理者との協議を実施する。
 また、橋梁に関する予算管理(予算要望、執行管理、繰越事務等)も担当内で行っている。このほか監査・会計検査対応、河川事業による市道橋の技術相談、管内市町の実施する橋梁に関する技術的相談、添架占用者との相談、河川の出水期前点検、降格橋梁の引継ぎ、突発的に発生してくる案件の対応もある。
 維持管理課の担当者との信頼関係にもよるが、橋梁について何かあるとすべて橋梁担当が対応を迫られる場合もある。

 長々と実態を書いてきた。何が言いたいか。これらの業務を実質橋梁担当者2人でこなすのである。とても忙しいのである。

 少しでも負担を軽くするためにと、積算資料作成業務、施工管理業務を発注し、「しのいでいる」がとにかくまわしていくだけで精一杯である。
 本来技術的に深く検討すべきと思われる案件や「事務分掌」にないが、やるべき大切と思われる事柄が職員の余裕がないために、なおざりにされているのではないかと私は危惧している。
 これ以降は私がこれまで橋梁担当の仕事を続けてきて、主に橋梁補修・補強工事について、思ったことを書いてみたい。あくまでも私個人の見解である。

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