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シリーズ「コンクリート構造物の品質確保物語」⑳

福島河川国道編②「ひと現場ひと工夫(気づき)」を大事に

横浜国立大学
大学院 都市イノベーション研究院
准教授 
細田 暁 氏

 インタビューシリーズの第八回目は、福島河川国道事務所で工務第二課長を務めていた小山田桂夫氏に話を聞いた(取材時の肩書、現在は国土交通省東北地方整備局道路部道路工事課建設専門官)。石巻国道維持出張所、東北技術事務所、本局道路工事課、福島河川国道と保全、研究、建設様々な部署に異動し、その都度技術に対して貪欲なまでに接してきたマルチなインハウスエンジニアである同氏と細田准教授との対話は非常に刺激的なものとなった。(聴き手:細田暁・横浜国立大学准教授)(編集:井手迫瑞樹


耐久性のことを意識したのはこの10年

 仕様規定に基づくだけでは不十分と意識が変化

 細田准教授 コンクリートの品質確保の取り組みにおいて、小山田さんがどのように周りを意識付けしているのか、また取組みを進化させるために工夫されていることがありましたら聞かせてください。

 小山田課長 入省してから30年経ちますが、コンクリート構造物を構築するにあたって、耐久性を意識したのはこの10年ぐらいです。それまでは、発注者は仕様規定に基づいたもの造りを忠実にやっていくことを一番としていましたし、またそれが求められていました。しかし、東北管内の環境条件や橋梁点検で劣化の進捗状況等を把握できたことから、仕様規定を忠実に守るだけでは不十分であると意識が変わってきました。

 細田 それは小山田さんだけではなく、全体的に変わってきているのですか。

 小山田 仕様規定だけでは不十分であると、周囲に言っていかなければならないと考えています。東北技術事務所にいたときに、岩城一郎先生が委員長を務めていた日本コンクリート工学会のLCC評価研究委員会に委員として一緒に勉強したことがあります。委員会では、劣化してきているコンクリート構造物の見方や管理手法、補修への反映の仕方が具体的に示され、保全手法を考える機会を得たことが大きく、自分の意識向上につながったと思います。





石巻国道維持主張所での実践活動(拡大して見てください)

 以前、施工者は生コンクリートを二次製品と同様だと思っているような話を聞いたことがあります。「適マーク使用承認工場でつくられた生コンクリートを使用して、不具合が生じるコンクリート構造物ができるわけがない」と。また、コンクリートの技能者も、「何十年も同じやり方でやってきたので問題はない」という人がいます。そういう人たちの意識を変えるためには、現場施工に伴うリスクを十分に伝えて、より良いコンクリート構造物構築を目指していかなければなりません。以前に担当した現場では、さまざまな技術的工夫をしながら、良いものができる過程を一緒に意見交換をしながら取り組むことで、現場代理人や技能労働者の方から「厳しい現場だったけど楽しかった」と言われたことがあります。

 各現場では、技術的な意見交換によりコンクリート構造物を構築していることを事務所の若い人たちにも伝承していかなければならないと考えています。そのためには、機会あるごとに自分が蓄積した知見や経験を若手職員へ伝えていかなければなりません。若手職員への勉強会はこの10年間行っていますが、若手を育てなければいつまで経ってもベテランの業務量が変わらないので、技術習得に向けた取組みも含め底上げをする必要があります。たとえ最初は5%くらいしか仕事に携われなくても、技術的な意見を少しでも言えるようになれば仕事に対するおもしろみがわかってくると思いますので、そこをうまく引き出せるようにしています。

 細田 岩城一郎先生との関係は、LCC委員会が初めてでしょうか。

 小山田 そうです。

 細田 小山田さんがLCC委員会に入ることになった理由は。

 小山田 東北技術事務所の技術課に平成22年7月に着任したときに副所長の佐藤和徳さんがLCC委員会の委員として参加していました。当初、私はオブザーバーでしたが、事務所でコンクリート構造物の耐久性について検討してきた経緯があったので、佐藤さんが転勤された後に委員として参加させていただきました。

 細田 その佐藤さんの博士論文の最終発表で、管理部門と建設部門の乖離――管理の実態や厳しさを必ずしもわかっていない建設部門、というスライドがありました。そもそも管理と改築で人事交流はあるものなのか、また管理が長かった小山田さんが現在は改築事業の陣頭指揮をとっている理由を教えてくれますか。

 小山田 道路をつくるためには、調査、改築、管理という各部門で担当していきますので、職員は当然さまざまな部門を経験します。各部門のスペシャリストもいますが、やはり人事によるところが大きいです。ただ、どの部門においてもその時々で意識を持って取り組むことと、それまでの経験を生かしながら業務に携わっていくことが大事だと思っています。

 細田 東日本大震災がなければ、ずっと管理側にいた可能性もありますか。

 小山田 それはないと思います。石巻国道維持出張所の前が東北技術事務所、その前は整備局の道路工事課に配属されていたので、これまでの経歴でたまたま管理のほうが長くなっているだけです。また、これまでに各地で勤務するなかで多くのコンクリート構造物の劣化状況を把握する機会があり、新設構造物においても苦労して造ってきた経験が大きいと感じています。


ほかの現場での工夫を

 桑折高架橋の施工につなげていく

 細田 コンクリートの品質と耐久性の観点から、福島河川国道事務所の現状をお聞きかせください。

 小山田 福島市は盆地地形を有していることから夏場の外気温が高く、暑中コンクリートの初期欠陥、特に温度応力等に伴うひび割れが多く発生しています。外気温という環境条件があるので、他の東北管内に比べてスムーズに施工できる期間は限定されますし、暑中コンクリートの対策をしっかりやらなければなりません。

 復興支援道路の相馬福島道路では、桑折高架橋が橋長1,218mと一番長い橋梁になります。この橋梁では架橋条件や構造的な特性を踏まえ、これまでの現場経験と様々な工夫をしながら、耐久性向上を目指したコンクリート構造物を構築したいと考えています。

 桑折高架橋は新幹線を跨ぐので、地上高は30mぐらいです。さらに4%の縦断勾配と、曲線半径(R)が1,100mの片勾配を有しています。そのため、冬期間には塩化物系の凍結抑制剤を散布することから、局部的に塩害などの劣化が進む可能性があります。

 29年度に阿武隈東IC~阿武隈IC間(5.0km)と、霊山道路(霊山IC~阿武隈IC間12km)合計17kmの供用開始を予定しています。その区間の橋梁で様々な技術を試行しながら劣化対策を検討し、桑折高架橋に反映していきたいと思っています。ただし、復興支援道路の特性から事業スピードが求められています。コストと時間的な制約があるなかでどのような取り組みをしていくかを考えることも重要です。


桑折高架橋(P11から起点側)

 細田 勉強会や講習会はどれくらいの頻度でおこなっているのですか。

 小山田 平成27年12月には県内の他事務所の職員にも参加を頂き、初めてのコンクリート勉強会を開催しました。この勉強会は、コンクリートの品質確保の意識を高めることが目的でした。2回目は28年4月に開催して、施工者と施工管理を担当する方にも参加を頂き、さらなる意識の高揚に努めました。また、12月には、実物のコンクリート構造物を見ながら目視評価と定量的な試験方法について勉強をしました。そして29年の3月6日には地元の受注会社にも参加を頂き、先行工事で実践している内容とその効果や今後の対策について情報共有を行いました。先行事例では、内外温度差や膨張材、鉄筋比のデータも取れているので、施工時期を踏まえた工夫事例や実施データを共有することで地元の受注者の負担軽減に努めています。マスコンクリートの温度管理は、データロガー用いて把握した温度と解析結果を検証し対策検討を行っています。桑折高架橋の下部工工事では橋脚の基数が多く、施工時期も異なることから、各工事で取り組んだ手法と効果を取りまとめることで、初期欠陥等の要因解明につなげていければ理想です。


コンクリート構造物の品質確保に関する講習会は過去3回開いている