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連載詳細

首都高速道路 横浜環状北線の建設を振り返る

首都高速道路株式会社

神奈川建設局編

④大熊川トラス橋

 大熊川トラス橋は、鶴見川、大熊川、江川の3つの河川が合流する地点に架かる橋長158mの単純ダブルデッキワーレントラス橋であり、同形式として国内最大支間長となっている。本橋を写真-3に示す。また、平成27年度土木学会田中賞(作品部門)を受賞した。


写真-3 大熊川トラス橋


(1)上部工の構造と特徴

 本橋は、河積を確保するために河川内に橋脚が設置できないことから、景観性と本体構造および架設工法を考慮してトラス橋を採用した。景観への配慮について、平坦な背後の丘陵との調和や隣接する橋梁との連続性を確保する構造形式とし、上部工の塗装色にシルキーホワイトを採用し軽快な印象を与えることとした。

本橋付近は高架から横浜北トンネルに向かってダブルデッキ構造からパラレル構造へ移行していく区間であるとともに、出入口による拡幅線形がはじまりつつある区間となっている。そのため、上層は北側に、下層は南側に拡幅しており、トラス弦材が曲線かつ主構間隔が拡幅していく特殊な形状を有している。このような形状により、二次応力を無視することができないため、格点剛結条件で立体解析を行い、すべての部材を軸力・曲げモーメント・せん断力が作用する部材として設計した。

(2)下部工の構造と特徴

 横浜港北JCT側の下部工は、河川や下水処理施設に囲まれた狭隘な作業ヤードであったため、コンパクトなケーソン基礎を採用した。また、地表面から支持層までにN値3~5程度の軟弱地盤層が分布しており、施工時に躯体重量に対して地盤反力の不足による過沈下の発生が懸念されるため、ケーソン沈設に先立ち地中支障物の撤去を兼ねオールケーシング工法により削孔、砕石にて置き換えることにより刃先部の沈下抵抗力を確保し過沈下を防止した。河川堤防や下水施設に近接していることから、施工前に3次元FEM解析による周辺地盤の影響検討を実施し、あらかじめ変状傾向を把握した上で施工中の挙動監視を行いながらの慎重な施工により、安全に施工を完了した。

(3)上部工の施工

 上部工の架設は、一非出水期(11月~5月)に、杭および構台施工・ベント設置・トラス地組立・架設・構台および杭撤去をおこない、以下に示す3ステップにより架設を実施した。

 1)送り出し:送り出し軌道を据付目標位置から直線配置とした場合、地組時に下水処理施設とトラスが干渉するため軌道をずらして送り出しした。完成時5%の縦断勾配下り方向にトラスを送り出すと大きな滑動力が生じることから、7日間かけて109.8mを水平方向に連続的に送り出した。送り出し状況を写真-4に示す。


写真-4 大熊川トラス橋架設状況

 2)回転横取り:送り出し完了後、軌道がずれているトラスを所定の位置とするため、平面的に2°回転させる必要がある。そのため、PK本0側を回転中心として、PK本1側の支点位置において、二軸スライド装置を設置し、橋軸直角方向5.5m、橋軸方向0.45mを同時に移動させた。

 3)降下:PK本0支点部において門型降下設備を組み立て、8.5mの降下を行った。

 以上により、大規模なトラス橋の送り出し架設を完了した。


⑤新横浜出入口

 新横浜出入口の構造は、土工部、擁壁及び開削トンネルにより構成されている。

 建設地点は、鶴見川の近傍であり、厚い軟弱粘性土地盤であるAc層が広範囲に広がっている。また、東側の範囲では、支持層である土丹層(Km層、Ks層)が隆起している部分もあり、支持層の起伏が激しいことを考慮して、支持層深さの決定を行った。地盤の支持力検討により、直接基礎で許容支持力を満足できない場合は、掘削深さや支持層深さの条件を考慮し、杭基礎または地盤改良による置き換え基礎とした。


⑥横浜北トンネル

 横浜北線は、家屋の移転を少なし、周辺環境を保全するため、全長約8.2kmのうち、約7割にあたる約5.9kmをトンネル構造(横浜北トンネル)としており、更にこのうち約5.5kmはシールドトンネルである。シールドトンネルの完成状況を写真-5に示す。


写真-5 シールドトンネル架設状況


(1)シールドトンネル

 シールドトンネルは全区間にわたり民地(住宅地)の下を通過しており、土地の地下を使用する権利である「区分地上権」を取得させていただき、家屋の移転を行わずに施工した。このようにシールドトンネルの全区間にわたり民地の下を通過する構造は、首都高速道路において初めてである。

 シールドトンネルは、新横浜発進立坑を起点に子安台換気所を終点とする延長約5.5kmの大断面併設トンネルを写真-6に示す2台の泥土圧シールド機(外径φ12.49m)によって構築した.土被りは11m~57mで、併設トンネルの離隔は3.0~7.6mである.掘進土質は泥岩(Km),砂質泥岩(Kms)、砂・砂岩(Ks)の互層で、Km及びKmsは一軸圧縮強度が1000kN/m2以上、Ks層はN値が50以上といずれも硬質な地盤であるが、Ks層については、被圧(最大0.5MPa程度)されている。地表面付近にはN値0~3程度の軟弱な沖積層が堆積している箇所もあり、一部の区間についてはシールド頂部に出現する。


写真-6 シールド機全景

 シールドトンネルは外形12.3m、内径11.5mであり、道路軸方向となるセグメント幅は2.0mとした。セグメントはSFRCセグメントを基本として、馬場換気所等の一部は鋼製セグメントを用いている。SFRCセグメントにおいて、道路床版よりも上側になる部分は鋼繊維に加えてポリプロピレンを混入した耐火型SFRCセグメントとした。耐火試験により火災後のセグメントの耐荷力を確認し、二次覆工を省略してシールド径の縮小を図った。

 床版は、道路直角方向の幅が8.15m、道路軸方向の幅が2.0m、厚さ0.33mのプレキャストPC床版を用いた。2台のシールドマシンによる上下線同時掘進とプレキャスト床版施工により高速施工を実施している。床版施工状況を写真-7に示す。


写真-7 シールド内床版施工状況

 また、シールドトンネル区間は、通常時に車が走行する車道部と、緊急時に人が避難する道路下安全空間の2層構造となっている。この2層をつなぐ非常口は首都高で初めての「すべり台方式」を採用しており、災害時は本線からすべり台を使用して道路下の安全空間へ避難する計画である。

(2)シールドの地中拡幅

 トンネルの中央付近に馬場換気所、馬場出入口があり、本線トンネルにおける馬場出入口の分合流拡幅部も民地(住宅地)の下となっており、この分合流拡幅部は本線シールドトンネル内から非開削で地中拡幅する工法とした。地中拡幅は入口2箇所、出口2箇所の計4箇所あり、各々の道路軸方向の延長は約150m~約220mである。

 まず、地中拡幅始端部の本線シールド外周に、パイプルーフを施工するための発進基地となる空間を、拡大シールドにより構築した。具体的には、本線シールドの外形φ12.3mからφ18.3mに拡大した。拡大部の道路軸方向の延長は11.0mである。

 次に、この拡大空間をパイプルーフ発進基地とし、道路軸方向に大口径パイプルーフ(φ1200mm、27本)を施工した。このパイプルーフは、地山切開き時の支保工及び切開き部外周を止水するための薬液注入工の作業エリアとして構築するものである。パイプルーフ間の地山にはパイプルーフ内から薬液注入を行い、本線シールドトンネル、パイプルーフ、薬液注入されたパイプルーフ間の地山、さらに薬液注入された地中拡幅部と止水隔壁部からなる遮水ゾーンを構築する。

 遮水ゾーンを構築後、トンネル軸方向に4m~8m幅で本線シールドの仮設鋼製セグメントを撤去して切り開き、パイプルーフで覆われた地山を拡幅掘削する。拡幅掘削部の内側に、防水層と鉄筋コンクリート構造の躯体を施工し、必要強度が確保された後に隣接するブロックの掘削を行う。これらを繰り返すことで、楕円形躯体を構築した。