道路構造物ジャーナルNET

第88回 維持管理は手作り

民間と行政、双方の間から見えるもの

植野インフラマネジメントオフィス 代表
一般社団法人国際建造物保全技術協会 理事長

植野 芳彦

公開日:2023.05.16

1.はじめに

 18年間飼っていた、愛猫の「ミー」(右写真)が亡くなって2か月がたった。ミーは生まれて3か月くらいの時に知人から貰った、日本猫の虎ネコ雄。人間にすれば90歳くらいであろう。ミーには、様々なことを教わった。ペットは飼い主に似るという。いつも病院では大暴れして獣医さんを困らせて3人がかりであった。凶暴であった。流血事件に発展しそうだった。常に、謝罪して帰ってくる。帰るときは、何食わぬ顔でゲージに収まる。
 しかし、いろいろ教えてもらった、まさに「にゃんこ先生」である。最後に教えてもらったのは、いつかは亡くなるということである。まだまだ数年は生きるかと思っていた。12月にワクチンを打ちに行った時にも、獣医さんが、「まだまだ元気!18歳とは思えない。」と言っていたのだが、急激に弱っていった。
 江戸中期の武道書のひとつに、「猫の妙術」と言うのがある。これを読むと、勉強になる。「勝負」に直面したときの心構えを解いている。山岡鉄舟の愛読書だったそうだ。よく犬派と猫派とどちらか? と言うのが話題になるが、生き方として猫の方が、絶妙で楽なような気がする。なので、尻尾は振らない。今でも、ついミーを探してしまう。しばらくは、ペットロスが続くだろう。

2.続続・新技術の導入

 相変わらず「新技術導入」に関して、相談を受けることが多い。本気で対応する気があれば、わざわざ言う話ではない。当たり前すぎて、語る気もしないのが本音だ。自分のアンテナを高くすることが重要であり、どうしたらできるのか?楽になるのか?考えるのが人間であり、技術者は特にそうであるはず。それが、今日の社会を作ってきた。最初は非難され否定されるのは覚悟しなければならない。しかし、盛んに言われているドローン一辺倒には危機感を感じる。ドローンの使用にはかなりな制限があるはずで、出てくる結果も本当に診断に使えるのか? 判断できるのか? と言う問題が残る。視点が違うと思う。運用法が違う。富山市では、「橋梁マネジメント基本計画」において基本方針として入れている。10年前からの話である。“しくみ”として導入してきた。

 私は、ほとんど野球も見ない。サッカーも見ない。なぜかというと?試合時間が長すぎる。正直あまり興味もない。武道をずっとやってきたので、試合時間は短い。自分の性格に合っている。ここで、最近気になるのが、WBCでも活躍した「大谷の2刀流」と言うのがある。ファンからは怒られそうだが、大谷選手の場合も、マスコミや世の中が安易に使っているのは、「ピッチャーとバッター」という2つの事柄に対してそれぞれすごい能力を持っているからである。これはまあ、すごいおもしろい表現だと思うが、大谷に対し失礼である。私は2刀流と言うよりも、「大谷流」だと思う。天才的な能力を持つ大谷さんが、野球に関して自分の一流を成したという意味である。さらに、彼は進化している。ここがすごい。
 武術研究家の植野としては、そもそも2刀流とは、宮本武蔵の「二天一流」に代表される、両手で2本の刀を使用する技である。宮本武蔵はその著「五輪の書」の中で、「人間は2本の手を持っているので闘う時にそのすべてを利用する。つまり両手で2本の刀を使う」という理念を述べている。(これは厳密な言い方ではないが)これが2刀流である。これに対し、「一刀流」は通常時は1本の刀を使用する。しかし、1本の刀しか使わないかと言うとそうではなく、極意の中に2刀を使う技も入っているし、多くのその他の流派においても、2刀の技と言うのは存在する。二天一流以前の流派でも、2刀の技は存在し、多数の敵と戦う場合などは2刀を使うべきだと説いている。「一刀流」と言うのは一刀に精神を込めるという意味合いである。「一心一刀」とか「一の太刀」と言うのがそれを表している。さらに、古流には、槍術や薙刀、手裏剣、柔術等、戦う技すべてが入っている。現代の剣道になってしまってから、限られた技しか使えないようになっている。これは技を制限しスポーツ化したためであろう。

 また、こいつ関係ないことを言いはじめたな? 何が言いたいのか? と思っているであろう。つまり、この精神である、「使えるものはすべて使う」これが重要である。世の中の多くの方々は「新技術、新技術」と騒いでいるが、新技術と言われるものは、単なる道具にすぎない。使えると思えるものは、すべて使うことが重要だ。ドローンしかないのならばそれで仕方がない。其れでそのあとどうするかである。また、こう書くと叱られるが、ドローンをけなしているのではない。「新技術は、ドローンだけではないですよ。」と言いたいのである。あらゆるものを研究し使えるものは使う。場合によれば使えるものすべてを使うことが重要であり、目的達成に一心を込める気概が重要なのである。
 診断協議などで、話を聞いていると、仮に橋梁など構造物の知識はあったにしても、非破壊検査技術などの診断に活用できる道具の知識がない。これは官も民も一緒である。新技術の導入には、多くの知識と挑戦心、実施体験や実績、実装のための実験が必要である。机上論の方々には理解できない面倒なことであるがそれが科学技術だろう。多くの、試験方法を試してどの方法が良いか? 1つの方法ではなく複数の方法で試してみる必要性もある。これが、皆さんの好きな2刀流であるのでは? どうやったら結果が導き出せれるかの組み合わせや、検証が必要である。


富山市におけるi-Constructionの取組み状況

 しかし、今の段階では、使えそうなものは、すべて使ってみるという、試みが重要である。考えないと、ダメな時代になってきた。標準設計(マニュアル)を捨てた人たちは、1点1点自分で考えたくてそうしたのだから考えるべきである。まあ、これも、一方で「標準設計はいらない」と言っていた人たちが、なぜか?さまざまな面で、マニュアルや手引きを作りたがる。マニュアルと言うのは作業標準である。おかしな状況である。標準化を捨てたのならば、その都度その都度、徹底的に考えるべきである。しかし、維持管理において、マニュアル化はかなり難しい。1件1件の手作りとなると思う。それぞれ条件が違いすぎる。
 私はマニュアルや標準設計は作っておいてよいが、維持管理は手作りだと思っている。

 新技術の導入に、何かを使わなくてはいけないという強迫観念から、「ドローンでも使おうか?」と言うのはやめたほうが良い。刀も使えないやつが使うとケガをする。日本人の悪いところである。精神論を言うくせに1つのものに固執してしまう。失敗しても直さない。考えもしない。新技術は、沢山あって当たり前。民間企業は常に工夫している。新技術の導入が進まないのは、官側の問題が大きいと思う。これも何も考えていない結果である。先行きが楽しみである。


新技術導入の手引き(案)/包括的民間委託導入の手引き

民間活力の活用を促進していかなくてはいけない

 ドローンの使用では、君津市が有名であるが、そこでも古明地さんと言う若手技術者が苦労して使用法などを確立していったから、すごいのである。ちなみに、熊本の玉名市では、木下さんと言うのが、やはり相当苦労して「DIY補修」と言うのをやっている。それぞれが工夫をして自らの場所に会ったやり方を導入している。その他さまざまな工夫をしている方々もいるだろう。

 現在の「橋梁点検要領」は、表面だけを見ている。ひび割れ中心に見て、劣化度を判断しているわけだが、いわば擦り傷切り傷だけの軽傷を見ているわけである。内部の状況までは見ようとしていない。これでどこまで判断できるのか? 熟練の技術者は判断できると思うが、そういう方は少ない。
 最近言われている、インフラメンテナンスの第2ステージと言うことであるが、これまでが第1ステージであったならば、表面ひび割れを見て、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳの評価をつけて、喜んでいた時期は終わったということである。スクリーニングが終わり、今後はメンテナンスの本丸に入っていかなければならない。その時に、何をどうするのか?である。点検によって出てきた結果を基に、前回と今回の状況を判断し、何をすべきか? である。

 「包括管理」や「群での管理」ということも、やっと言われだしたが、これは管理者側とすれば当たり前のことである。そもそもがこれまでも、そうだったのである。よく、これがわからないという相談を受けるが、確かに民間は分からないかもしれない。いままでが、特殊な業務以外は、1件1件が基本ですから。しかし、今後は多数のものを、一時に管理していかない時代であり思考を変えなければならない。かなり老朽化が激しくても対処できないという物も出てくるはずである。そういった当たり前のことをやるだけなのである。
 新技術も包括管理も群の管理も当たり前のことである。インフラマネジメントをしていこうと思ったら、当然なのであるが、何を大騒ぎしているのか。要は管理者の判断能力と決断力、責任の所在の考え方である。
 第1ステージの次に何をやるべきかだが、はずは第1ステージの結果から、管理する構造物群をどう評価しどう補修していくか? 問本来の維持管理に入っていかなければならない。したがって点検で四苦八苦していたのでは、次にはいけない。補修そのものが相当に厄介である。そしてこの部分が、あまり検討されてこなかった。補修してもすぐに再劣化してしまえば意味は無い。意味がないばかりか費用はどんどん増えていく。この補修材料や補修工法の議論があまりされないまま、来てしまった感がある。

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