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③広島県でのコンクリートの品質改善についての実証実験

失敗から学んだコンクリート打設

株式会社ファインテクノ
調査計測部
マネージャー

平瀬 真幸

公開日:2023.02.01

高度な知見や特別な技量がなくても、誰でも高品質にできる可能性
 試験施工で品質向上となるかどうか研究してみよう

 今回は、私が広島県西部建設事務所廿日市支所にて、コンクリートの品質改善について、さらなる品質向上に資する実証実験を提案した事などについてお伝えします。
 私が広島県で発注者支援業務に着任してしばらくして、職員さんから「現場を回っているだけで施工者は全然違ってくるので、悪い所は指摘是正するか言う事を聞かない施工者については監督職員に報告して良いモノ造りをさせて欲しい」と要望されて現場を巡回する機会をいただきました。そこで、日々の気付きなど様々な品質向上の意見を受・発注者と交わすうちに、品質向上に対して強い関心を示された職員の方々とコンクリートの品質改善について議論が進みました。

 高度な知見や特別な技量がなくても、誰でも高品質にできる可能性があることを経験談として話し、さらに「コンクリートの劣化は、ほぼ初期欠陥が原因であり、建設時に丁寧に構築されたならそのストック効果は半永久的なのではないかと」という話をしました。その具体例として、明治時代に廣井勇先生が監督された小樽港のブロックが、ほぼ建設当時のまま残っている事を挙げました。続けて、私が取組んできました品質改善や学会と発注者による書籍【新設コンクリート革命】などを紹介しながら、広島県での品質改善の提案に至り、「試験施工で品質向上となるかどうか研究してみよう」と言う意見が圧倒的となり、コンクリートについて実証実験の機会を得ました。いまも検証が続いておりますが、これまでの実験でわかった事があるので以下に概要と結果を記します。

 事前にお断りしたいのは、ここで紹介するのは広島県で3回実施した結果の一部です。サンプルも少ない為、引き続きこれからの検証が必要ですが、主に代表的な1現場の試験結果について以下に資料と結果を簡単に紹介します。

 1. 試験供試体コア採取位置図:縦100cm×横100cm×長さ100cm 締固め間隔45cm

 2. 使用材料
  (無筋)24-5-40BB と 24-8-40BB(W/C60.0%以下)
  (有筋)27-8-20BB と 27-12-20BB(W/C55.0%以下)
 3. 締固め時間
  材料毎に締固め時間10秒・60秒・空気を全て排出するまで(90~180秒)
 4. 検証する内容
  4.1 目視評価(山口県HPより)
  4.2 圧縮強度試験
  4.3 バイブレータ締固め間隔の検証
  4.4 透気係数
4.5 材料分離厚さ・ブリーディング強度

 5. 検証結果
  5.1 目視評価
   5.1.1 結果は表の通り。(評価項目は山口県HP資料を参考とした)
   (打重ね線・砂すじは、全ての供試体で発生しなかったので評価から除外)

 5.2 圧縮強度試験
  5.2.1 全配合で、締固め時間が長いほど強度は高い傾向。
  5.2.2 強度比較は、スランプが小さい方が優位。

 5.3 バイブレータ締固め効果(振動器φ×9倍450㎜間隔)
  5.3.1  1供試体から長さ1mのコア(試験供試体コア採取位置図参照)を3本採取、それを上中下に切断し9本で圧縮強度を実施した。
     最も強度が高い値を100%とした場合。振動器318㎜の位置で、最大45%の強度低下が確認された。

 5.4 透気試験(供試体製作から約9ヶ月後に測定、養生91日)
  5.4.1 全配合で、締固め時間が長い程に透気係数は優位となった。

 5.5 材料分離厚さと採取したブリーディング強度
  5.5.1 ※ここで言う材料分離とは粗骨材が振動で沈降して存在しない層の事としており、ペーストとは細骨材がほとんど存在しない層であり、ブリーディングとは表面に堆積した泡状モルタルを指す。材料分離した箇所のブリーディングの強度においては、ほとんどゼロ(N/mm2)であった。


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