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㉚北九州空港連絡橋(その7)~コンクリート構造物の長寿命化~

現場力=技術力(技術者とは何だ?)

株式会社日本インシーク
技術本部 技師長

角 和夫 氏

公開日:2022.03.01

 ◇その他の対策(透水性シート)
 ・コンクリート中の余剰水と気泡を型枠外に排出させ、ジャンカ等の発生を防止しコンクリート表面を緻密にすることで中性化速度の遅延耐凍融解性の向上水流衝撃による耐摩耗性の向上表面ひび割れ防止が可能な透水性シートを設置した(図-4参照)。
 ・コンクリートの内外温度差による温度ひび割れを最小限に抑えることを目的として、感潮帯部の施工時には型枠材の背面に「保温材」を取り付けた。

 ◇完成後の橋脚(写真-3参照)

③ステップ3……維持管理指針の策定
 ★維持管理指針の骨子
 ・劣化の進行をモニタリングし、劣化が顕在化する前から詳細な点検・調査を行い、劣化が顕在化する前に未然に防止する方法、とした。
 ・要求性能を明示し、性能照査を実施しながら維持管理を進めていくこと。
 ・要求性能は、「耐久性能」とした。これは、設定した要求性能全てについて性能照査を実施するのではなく、「耐久性能」を代表とする管理すべき性能としておけば他の要求性能は自動的に満足するものと考えた。
 ・塩害、ASRについて劣化の状況を示す最も端的な指標を「ひび割れの発生」と位置付けた。
 ・具体的に管理すべき性能は、「耐久性上有害なひび割れの発生を許容しない」こととした。

 ★モニタリングシステムの設置(図-5参照)
 ・5P橋脚と20P橋脚内部に複合センサ(塩化物イオン浸透モニタリングセンサおよび埋め込み照合電極)を埋設し、塩化物イオンの浸透深さや鉄筋の腐食状態をモニタリングするシステムを設置した。

【裏話】
 地方自治体にとって身軽な維持管理とは何か。福岡県に着任当初から悩んだ。産官学の技術的なポテンシャルを上げるための検討や実施はやぶさかではなかった。しかし、コンクリート部会(分科会)から提案があった「モニタリングシステムの導入」には断固反対した。「角の目の黒いうちは」である。将来、誰が海中橋脚をモニタリングするのか。「四捨五入(丸投げか)」。とても役所には面倒見切れないのは分かっている。「絵に描いた餅」で終わる可能性が大きかったからである。本四へ復帰して数年後、風の便りで「福岡県が維持管理指針を策定した」と。反対者が帰った後に行動に出るとは。部会の先生(大学の先生)が面倒を見てくれるものと陰ながら期待している。

(4)最後に

 今回、北九州空港連絡橋の下部工(コンクリート構造物)について記憶の範囲において記述した。なお、足りない部分については、「未来への道標 新北九州空港連絡道路工事誌(福岡県)」から引用させて頂いた。着任当時(1995年)、九州のコンクリート工学分野における大御所、中堅、若手総数約50名の先生が部会員として活躍されていた。行政職員と研究者という立場は違うが、良いものを創る(残す)という目標は一緒であった。
 行政の不自由さは建設から維持管理に移行すればどうなるのか分かっている。私が目標として掲げる「少しでも身軽な維持管理」を可能とする技術は必須である。しかし、海中橋脚の内部に「モニタリングシステムの設置」は必要ないのではないかと思う。そのために、調査・設計から材料の選別・調達や構造細目の策定までを行ったのだから。
 話は古くなるが、2017年4月、JICAチュニジア業務の御褒美でチュニジアに向けて旅立った。チュニジア政府およびJICAチュニジア主催の橋梁セミナーにて講演(写真-4参照)するためである。

 モニタリングシステムに否定的な私への質問が政府技術者からあった。「モニタリングシステムはダメなんでしょうか?」と。「モニタリングシステムが全部ダメだと言っているわけではなく、モニタリングシステム導入の前にやるべきことがあるでしょ」と言った。何でも機械任せにする前に、自分で動かないのですか。技術者育成はどうしているんですか。モニタリングシステムの導入で損傷等を判定・識別可能な構造物を選択できていますか。例えば、変形が出やすい構造物とか、ひび割れが感知しやすい部材とか。
 フランスの影響を受けやすいチュニジアにおいては「モニタリングシステム」を崇拝している技術者が非常に多い。以前、本連載に書いたが「OSMOSシステム」(2020.10.9「工学ストランドによるPC橋の載荷試験」)は、有効なモニタリングシステムになりうると考えている。産官学の皆さん、身軽な維持管理を考えた設計・施工・研究をしていますか?
(次回は4月1日に掲載予定です)

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