道路構造物ジャーナルNET

⑳ 青森ベイブリッジ(1)

次世代の技術者へ

土木学会コンクリート委員会顧問
(JR東日本コンサルタンツ株式会社)

石橋 忠良

公開日:2021.04.01

 青森駅の上を跨いでいるPC斜張橋があります。今回は、この橋梁について紹介します。道路橋ですが、この計画から施工までかかわることになりました。施工者はK社を中心とした4社JVです。上部工施工の時のJVの所長は藤田和仁さんで、主任技術者は松渕得郎さんです。この2人とは、東北新幹線の建設で、阿武隈川橋梁の建設時の主任技術者と主任という関係で、当時、PCカンチレバー工法の阿武隈川橋梁の打ち継ぎ目の温度ひび割れ低減の検討で付き合っていたメンバーです。大規模の斜張橋の施工ということで、石原重孝さんは私が指名してK社の設計部から現場に来てもらいました。石原さんはPC斜張橋について当時国内で最も技術力が高いと私が思っていた技術者です。3人とも以前から良く知っているメンバーですが、技術的には何度か大議論をしました。


写真-1 青森駅と青函連絡船用の港を跨いだ青森ベイブリッジ

1.新幹線橋梁での検討成果を青森県の港湾道路に応用

 全国新幹線鉄道網が計画されていた1980(昭和55)年頃、長崎新幹線のルートは大村湾の上を通る計画でした。海上を橋梁で渡るということで、長スパンの橋梁を国鉄の構造物設計事務所(構設)で勉強していました。コンクリートのパートとして勉強していたのは、PC斜張橋とPCトラスです。
 図-1は、長崎新幹線の海上橋として当時検討していた斜張橋の一つです。中央径間250mの例です。実際の採用を考えてかなり詳細まで検討していました。技術的な大きな問題点はないことも検討済みでした。その後、新幹線ルートが変更になり、海上のルートはなくなってしまい、大村湾の上の海上橋はなくなりました。


図-1 検討していた長崎新幹線の海上橋

 そんな折、青森県の港湾課から、港湾道路を青森駅の上に造りたいとの相談が当時の国鉄にありました。青森県から相談を受けた盛岡の工事局から構設に構造形式の相談に来ました。
 各パートから案を出すように言われ、コンクリートのパートとしては、海沿いにほぼ直線のルートで、青函連絡船の使っている港を一跨ぎにし、また青森駅の鉄道線路も一跨ぎにする3径間連続のPC斜張橋を提案しました。ちょうど中央径間が港をまたいで、240mとなる計画です。この案を提案できたのは、その前に大村湾を渡るPC斜張橋を検討していたからです。鋼構造のパートはルートを陸側に曲げた短いスパンを組み合わせてわたる案を提案していました。いろいろな議論の末、コンクリートパート案のPC斜張橋を青森県に提案することとなりました。

2.青森ベイブリッジの設計概要

(1)桁と主塔
 この時代は、まだコンピューターがそれほど自由に使われることはなく、計算は大変労力のかかる時代です。基礎は地中連続壁剛体基礎を採用することとしました。斜張橋の形式も一面吊りとするか、二面吊りとするかなど議論がありましたが、一面吊りとなりました。地中連続壁剛体基礎も、深さをどうするかで議論がありましたが、浅いほうの案を採用しました。
 この橋梁は幅員25m、スパン129+240+129mの当時としては我が国最大規模のPC斜張橋でした。
 港湾道路ということで事業者は青森県の港湾課です。まだ建設省と運輸省に分かれていた時代です。運輸省の管轄の道路です。青森駅の上や青函連絡船の港の上を通るということで、設計が国鉄に委託されました。鉄道橋としてPC斜張橋の検討はしていましたが、道路なので道路橋の示方書に従わなくてはなりません。基本的なところは変わりませんが、せん断設計や許容圧縮応力度等、違う個所もあります。せん断設計などは鉛直締めをしない鉄道方式にしたかったのですが、道路橋示方書に従って鉛直締めを用いています。
 支承構造は鉄道橋で一般的なゴムシューと、ダンパー式のストッパーの組み合わせとしました。常時は1橋脚で固定ですが、地震時には各橋脚に固定となる構造です(図-2)。


図-2 ダンパー式ストッパー

 図-3は青森ベイブリッジの側面図です。図-4はその主塔です。図-1の検討していた鉄道橋にかなり近い形状です。


図-3 青森ベイブリッジ

図-4 主塔

(2)基礎
 基礎は地中連続壁剛体基礎です。基礎の深さをどこにするかで、この図-5の位置とさらに深くするという案がありましたが、この図に示す位置で止める計画としました。不完全支持基礎となるので沈下量を計算しています。計算上は130mm程度沈下を想定しています。実際も、現状でその程度沈下しているようです。


図-5 基礎と地質図(拡大してご覧ください)

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