道路構造物ジャーナルNET

シリーズ「コンクリート構造物の品質確保物語」㊶

沖縄県におけるコンクリート構造物の耐久性向上に向けた取り組み

沖縄県
土木建築部港湾課
港湾開発監

砂川 勇二

公開日:2020.12.01

4.まとめ

 高温多湿で塩害環境の厳しい島嶼県である沖縄県では、コンクリート構造物の長寿命化を目指してこれまで各種対策が講じられてきたが、100年耐久性を謳った海上長大橋である伊良部大橋の建設において、材料面からの耐久性向上策としてFACを採用した。その後、FACは多くの海上や海岸線の橋梁に用いられ、沖縄県ではFACの更なる利用および産業廃棄物利用による環境負荷低減効果を目指してFAC指針を策定し、県内全域で可能な限りFACを用いることを推奨している。FAC指針策定の結果、沖縄県内ではFAC利用促進が徐々に図られ、複数の工事での使用および検討が進んでいる。
 一方、施工面からの耐久性向上を図るため、土木学会コンクリート構造物の品質確保小委員会(350委員会)推奨のコンクリート表層品質確保の考え方を取り入れ、平成30年度と令和元年度に沖縄県中部土木事務所管内の県道20号線泡瀬連絡橋の9橋脚で試行工事を行った。なお、泡瀬連絡橋では、使用するコンクリートをFACとし、表層品質確保の試行と併せた耐久性向上対策を講じている。
 表層品質確保試行工事の結果、泡瀬連絡橋では1業者あたり3~5回の打設でPDCAサイクルを回した結果、いずれの施工においてもコンクリートの品質確保の意識の向上とあわせて表層品質の向上が確認できた。発注者を含む工事関係者からは、以下の感想が得られた。
 ● 高品質なコンクリート表層とはどのようなものか確認できた
 ●丁寧に作業するだけで品質がよくなることがわかった
 ●次の現場では養生方法や気象状況まで考えて対応してみよう
 ● 他の現場でも教えていいのか
 この結果から、発注者、元請け、下請けに至る多くの関係者で取り組むことで、表層品質確保の重要性とそれを実現させるための技術が周知でき、施工者だけでなく発注者の経験と技術力向上にも寄与することが確認できた。また、工事関係者全体と品質確保のための取り組みを共有する場を設けることで、施工における発注者と受注者、受注者と作業員、または発注者と作業員の対話が生まれ、次施工への改善に向けての現場の雰囲気がよくなり、施工の変化や取り組み継続の可能性を感じることができた。
 沖縄県におけるコンクリート構造物の耐久性向上には、受発注者ともに今回の泡瀬連絡橋での取り組みを継続していくことが重要である。今後は、令和2年度に下部工で継続実施している試行も含めて本取り組みの検証を行い、その結果も踏まえて他の土木建築部所管の現場へも普及を図っていきたいと考えている。この取り組みによる協働が、100年供用に向けた県内のコンクリート構造物の品質確保につながることを期待している。

謝辞
 泡瀬連絡橋下部工の表層品質確保試行に関し、沖縄県中部土木事務所中城湾港建設現場事務所の皆様にご尽力頂くとともに、公益財団法人沖縄県建設技術センター試験研究部の比嘉正也氏には各種資料のとりまとめにご協力頂いた。ここに謝意を表します。

【参考文献】
1)沖縄県土木建築部:沖縄県におけるフライアッシュコンクリートの配合及び施工指針,2019.5
2)土木学会:フライアッシュを用いたコンクリートの施工指針(案),コンクリートライブラリー94,1994
3)西日本高速道路(株):平成18年度沖縄自動車道那覇-石川間構造物現況調査総括報告書-,2007.3
4)土木学会:2012年制定コンクリート標準示方書【施工編】,p.122,2013.3
5)山口県土木建築部:コンクリート構造物品質確保ガイド2017,2018.4
6)坂田昇、渡邉賢三、細田暁:目視評価に基づくコンクリート構造物の表層品質評価手法の実績と調査結果を反映した表層品質向上技術,日本コンクリート工学,Vol.52,No.11,pp.999-1006,2014.11
7)沖縄県中部土木事務所:一般県道20号線(泡瀬工区)橋梁整備事業リーフレット,2020.2
8)沖縄県中部土木事務所:平成30年度県道20号線(泡瀬工区)橋梁コンクリート耐久性検討業務委託報告書,2019.5

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