道路構造物ジャーナルNET

シリーズ「コンクリート構造物の品質確保物語」㊶

沖縄県におけるコンクリート構造物の耐久性向上に向けた取り組み

沖縄県
土木建築部港湾課
港湾開発監

砂川 勇二

公開日:2020.12.01

3.泡瀬連絡橋の品質確保試行7),8)

(1)泡瀬連絡橋概要
 泡瀬連絡橋は、中城湾港泡瀬地区開発事業で整備する人工島と沖縄本島東海岸を結ぶ橋長810m、4車線の海上橋であり(写真-1、図-2)、片側2車線を先行整備し、暫定供用する予定で工事を進めている。なお、本現場海域には、環境省RD絶滅危惧Ⅰ類のクビレミドロ(海藻)や同絶滅危惧ⅠA類のトカゲハゼ(魚類)が生息するため、4~7月の間は海中での工事を行わない。また、浮遊物質量SS=11.0mg/Lを水質監視基準にするなど、環境に配慮して事業を行っている現場である。


図-2 泡瀬連絡橋の側面図

(2)泡瀬連絡橋の耐久性向上対策
 本橋下部工の耐久性向上対策は、柱部にかぶり90mmの確保とエポキシ樹脂塗装鉄筋を用い、コンクリートをFAC(設計基準強度30N/mm2、スランプ12㎝、最大骨材寸法20mm)としている。FACの代表的な配合は、表-2に示すとおりFAを内割りで69kg/m3(20%)、外割りで21kg/m3(内割りと合計で90kg/m3)配合している。この配合は前述のFAC指針に示す内割り+外割り配合タイプであり、FAC指針の考え方で配合している。ここで、代表的としたのは、同現場には8社の生コンクリート工場が出荷しており、ベースとなるNCの各単位量が工場毎に異なるため、代表的な1社の配合を示している。また、FACの採用に加え表層品質確保の試行を行うことにより、材料面と施工面から耐久性の確保を行うこととしている。


表-2 泡瀬連絡橋下部工に用いたFACの配合(1工場の例)

(3)品質確保試行工事
 泡瀬連絡橋の品質確保試行工事は、平成30年度に7基(P1、P10、P11、P12、P13、P14、P17)、令和元年度に2基(P8、P9)の下部工で行われている。泡瀬連絡橋下部工の断面は、図-3に示すとおりP1~P6が壁式橋脚、P7~P17が2柱式橋脚である。

図-3 泡瀬連絡橋の標準断面図

 打設回数は、壁式橋脚がフーチング、柱部1ロット、2ロット目の3回、2柱式橋脚のP10、P11、P12、P13、P14、P17がフーチング、暫定側柱部1ロット、2ロット目、完成側柱部1ロット、2ロット目の5回、2柱式橋脚のP8、P9がフーチング、暫定側柱部、完成側柱部の3回である。
 試行にあたっては、各工区または複数工区合同で、元請け、下請けを含む打設作業に関わる作業員に対し事前に周知会を開催し、事例を紹介しながら、打設や締固め等の作業の留意点や評価方法等の確認・周知を図った(写真-2)


写真-2 周知会の様子

 打設は、事務所職員も臨場のうえ打設状況把握チェックシートを用いて打設状況の確認や品質確保のための指導等を行った。脱型後の表層品質確認もチェックシートを用いて発注者、作業員を含む受注者合同で行い、発生した初期欠陥等について、打設時の状況も踏まえて現場で原因の考察や改善点の指摘を行うとともに、終了後は講評を行って打設作業の良かった点、改善すべき点等を意見交換・共有し、次回の打設に反映するということを打設サイクル毎に行った。多くの関係者で繰り返し行う中で、基本事項の遵守に対する理解度が不測している作業員がいることも確認でき、意見や質問も多くなるなど、確実に打設作業に対する意識が向上していくことが実感できた。
 写真-3~写真-6に、打設~講評・意見交換の状況を、写真-7には脱型後の表層状況の例を示す。

 試行に用いた施工状況把握チェックシートは、山口県で開発されたものを基に現場で感じた必要事項やFACに関する注意事項をFAC指針から抽出し、表-3に示す項目を追加した。なお、項目の追加は、平成30年度試行工事と令和元年度試行工事で順次行った。また、目視評価は、坂田昇らが提案した「目視調査におけるグレードの一例」に温度応力ひび割れの項目を加えた。


表-3 山口県の施工状況把握チェックシートに追加した条項

 試行工事により得られた表層品質確認結果を表-4にまとめる。なお、同表は、目視評価グレードの点数「1~4」を用いず、部分的に発生した劣化状況が伝わりやすい記述とした。平成30年度の表層品質結果は、ノロ漏れが最も多く発生しており、次いで表面気泡、沈みひび割れであった。このうち、沈みひび割れは、工区により発生の有無が大きく左右されていることがわかる。また、ほとんどの工区で柱部2ロット目の表層品質は改善しており、フーチングから柱部1ロット目・2ロット目とPDCAサイクルを繰り返すことにより表層品質が向上していることがわかる。令和元年度試行の2工区では、H30年度試行結果をまとめた報告書を受注者が熟読し、同じ下請け業者を使って更に良い施工を心がけた結果、橋脚天端付近の気泡やバイブレータのオーバーラップ部分の色むらも無くなるなど、丁寧な施工によりほぼ完全な表層品質が得られた。


表-4 試行工事により得られた表層品質確認結果

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