道路構造物ジャーナルNET

⑪基礎の移動、沈下、地下水の変化による構造物への影響

次世代の技術者へ

土木学会コンクリート委員会顧問
(JR東日本コンサルタンツ株式会社)

石橋 忠良

公開日:2020.07.01

1.5 地盤沈下による高架橋の沈下とバラスト厚
 1.4の前述のように地下水のくみ上げ規制のなかった時代は、地下水の低下に伴い日本のいたる地域で地盤が圧密沈下していました。杭基礎も周辺地盤の沈下で引きずられ沈下しました。広い範囲で沈下が進むので構造物には外観上沈下はわかりにくいです。
 鉄道は軌道を日々整備しているので下がっていると前後に取り付けるように修正していきます。1.4で述べた橋梁では、桁を扛上して、橋脚天端を継ぎ足して処置し、桁への作用荷重を増やさないように対応しました。高架橋はラーメン構造なので、そのまま下がった量だけバラストを増やして軌道のレベルを維持します。今では地盤沈下地帯にあった構造物の軌道のバラストの厚さは建設時より数十cm増えていることもあります。死荷重は当然増えていることになります。このことを知って、メンテナンスの問題があった時に対応することも必要です。 

1.6 地下水の上昇
 今は地下水のくみ上げが規制されているため地盤沈下は止まっています。逆に地下水が、建設時よりも上がってしまい、地下の構造物で、浮き上がる心配や、スラブが水圧で壊れる心配が生じています。  東京駅の総武横須賀線の走っている地下構造物や、上野駅の新幹線の走っている地下構造物は、浮き上がり防止と、スラブの補強を兼ねて、鉄塊をホームの下に積み上げたり、地下に向かってグラウンドアンカーの施工をしています(図-3)。地下水を監視しながら、地下水が上昇してくるのに合わせてグラウンドアンカーを追加してきています。
 図-4は東京都の観測している地下水位の変動結果です。


図-3 上野地下駅地下水対策


図-4 主な観測井の地下水位変動量3)

2.場所打ち杭の先端の施工は信用できない、その対応

 鉄道高架橋を都市部で造るときは、今の地平の線路を高架化したりする場合が多く、狭い用地での工事となります。狭い用地の中で地中梁を施工すると、土を掘るので、その箇所で資機材を移動させようとすると、さらに掘削箇所に仮の桟橋を造るなど大変な工事となります。
 この地中梁をなくした高架橋にすれば資機材の移動が容易になり、工事費、工期が低減できます。地中梁をなくした高架橋を採用しようと、学識経験者や、先輩の技術者に集まってもらい、意見を聞きました。
 先輩の先生から、反対という意見がありました。それは、このような高架橋の基礎は場所打ち杭です。この場所打ち杭の施工が信頼できないので駄目という意見でした。杭の先端はスライムがたまったままのものも多く、地中梁があるので杭先端の施工不良が軌道面に影響するのを防いでいるとの意見です。場所打ち杭の先端は信用できないというのです。
 そこで、別の先輩の先生から、杭の先端の処置が信頼できる杭の場合については認めようとの意見が出され、そのように整理しました。そこで杭の先端に杭のコンクリート施工後、モルタル注入するなどのいくつかの工法を採用することで地中梁をなくした高架橋を造っています。東日本大震災の時に仙台市の長町付近や、平泉近くに、地中梁なしのパイルベントの高架橋が杭の先端に注入する方法を採用して、造られていました。地震による被害は、近くの古い設計の新幹線高架橋には、耐震補強前のものに被害は生じましたが、これらは無被害でした。
 場所打ち杭の先端の信頼度を上げることは必要なことで、これができれば、杭の支持力も大きくできるのではと思っています。しかし、杭の支持性能の改良の提案には、実杭での載荷試験が必要といわれることが多く、今ではほとんどの機関で、杭の支持性能の改良、開発はコストがかかりすぎるので行われない状況です。
 コンクリート構造は模型試験で、多くの研究開発が可能ですが、杭の支持力についても、模型試験など低コストでの開発ができるようになることを期待しています。

3.載荷実験は完全に破壊するまで

 構造物の模型の破壊実験などを見る機会や、行う機会があると思います。荷重をかけていって、鉄筋が降伏したり、荷重がもう上がらないと止めてしまったりしていませんか。
 構造物の安全性を判断するには、それからも荷重を載荷し続けて、本当に耐荷力を失うことを確認することが大切です。この降伏してからの状況を知らないと実構造物の状況の判断ができず、鉄筋が降伏したら、構造物は安全でないと間違った判断をしてしまいます。
 単純梁が曲げで降伏するような場合は、実構造物でも危険と判断するのは妥当です。しかし、構造物に生じる大きなひび割れは、基礎の移動などの強制変位によるものが多いのです。単純桁は計算モデルと使われ方も一致しています。基礎は、計算通りの地盤でないことなど、多くの不確実性があります。そのため、計算と異なり、沈下したり、移動したりが起こります。その移動に追随するため構造物も変形しますし、ひび割れも入ります。どの程度まで変形できるのか、どの程度のひび割れまで耐荷力を維持しているかということを、せっかくの破壊実験をするのであれば、途中でやめないで確認してください。このような破壊性状を見ていることで、現場に行ったときに変状構造物がまだ安全か、危険かの判断できるようになります。
 また現場に行って変状構造物を見たときの状況確認も大切です。多くはその状況で発見されるまで問題なく使われていることが多いのです。その発見した時の変状状況の程度までは、使用に耐えられることを証明しています。ですから多くの構造物の変状を見ることは、次の変状に出会った時の判断の役に立ちます。
 耐震の実験は、降伏以降の変形能力が耐震性能に影響するので、降伏荷重以降、耐荷力がかなり低下するまで載荷実験が行われます。耐荷力が低下しても、変形能力が大きいことは耐震性能向上に貢献しています。通常の強制変位での変形能力はこの耐震性能の変形性能よりも大きいのが普通です。かなり大きな変形に耐えられることになります。また耐震性能の実験で、壊した柱のコンクリートのひび割れや、剥落部を樹脂などで補修することで十分元の耐荷力に回復できることもわかっています。
 実験は破壊まで確認するようにして、破壊状況を記憶にとどめましょう。

【参考文献】
1)宮田尚彦、奥田寿夫、田母神貞衛、石橋忠良、青木桂一;鉄筋コンクリート部材の疲労強度、構造物設計資料76,1983.12月、(社)鉄道施設協会
2)後藤広太郎;構造物の保守・防災、鉄道施設技術発達史、平成6年1月、(社)鉄道施設協会
3)平成22年地盤沈下調査報告書 p.13、2011.7、東京都土木技術支援・人材育成センター
(2020年7月1日掲載。次回は8月1日に掲載予定です)

石橋忠良氏【次世代の技術者へ】シリーズ
①私の概歴
②鉄道建設の歴史
③アルカリ骨材反応
④アルカリ骨材反応(2)
⑤アルカリ骨材反応(3)
⑥コンクリートの剥落
⑦新設構造物のコンクリートの剥落対策
⑧塩害(海砂、飛来塩分)
⑨道路 PCグラウト
⑩支承部の損傷

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