道路構造物ジャーナルNET

⑦新設構造物のコンクリートの剥落対策

次世代の技術者へ

土木学会コンクリート委員会顧問
(JR東日本コンサルタンツ株式会社)

石橋 忠良 氏

公開日:2020.03.01

 前回、コンクリート片の剥落の原因と、その場合の対策について紹介しました。これも原因は、ほとんど建設時の設計、施工にあります。これから造る構造物が同じようなトラブルの原因とならないための、設計、施工の対応方法について紹介します。

1.鉄筋コンクリート

 鉄筋腐食の原因は、対応できる対策として、コンクリートの中性化への対策と、かぶり不足への対策があります。

1.1 中性化への対応
(1)単位水量の管理
 コンクリートの中性化が早まるのは、コンクリートの水セメント比が大きいことに大きな原因があります。その管理として現場で検査できる方法として単位水量を測ることがあります。
 ここ50年程度の間で、コンクリートの生産性向上に貢献した最大のものはポンプ施工かと思います。しかし、ポンプの出始めは、すぐにポンプが詰まるということで、水をコンクリートに加えるということがしばしば行われたようです。1964年(昭和39年)開業の東海道新幹線の建設時は、ポンプ施工はなく、コンクリートの現場での移動はバケットと人による猫車(一輪車)でした。またコンクリート打設時には、発注者も施工者の元請の社員も、みな現場についていました。この時代までは、単位水量の多いコンクリートは施工されていないようです。
 昭和40年代になりポンプ施工が行われ始めました。この頃は新幹線や高速道路の建設も盛んになり、現場に技術者が張り付くことができないほど多くの工事が国内各地で行われました。この時代に造られたコンクリート構造物は、中性化速度が早いものが多くなっています。それはポンプの閉塞を嫌い、コンクリートに水を加えることがしばしば行われたからです。近年はポンプの性能も向上し詰まるということは少なくなってきています。それでも水セメント比を管理することはコンクリートの中性化速度を速めないために、鉄筋の腐食防止に重要です。数年前に現場数カ所で、生コンの単位水量の検査をしてみました。図-1はいくつかの現場で単位水量を測定した結果です。


図-1 計画の単位水量と測定値(SED No16より)

 図中の社とはプラントです。計画値よりも単位水量の多いプラントがほとんどです。F社は計画配合より測定値が小さく管理されているので、単位水量の管理を真面目にしようとすれば、できなくはないと思います。現場での生コンの単位水量試験は手間もかかるので、午前と午後の1回程度のルールにしようと思っていたのですが、この調査を実施した若手の技術者から、「それでは品質を担保できません。1時間に1回は必要です」と言われ、当時、示方書に1時間に1回単位水量を測定するように定めました。
 その後、このルールが厳しいという話が、各地の生コン工場から出てきており、ルールを緩めてくれないかとの話がありました。生コンの実態は、今でも配合表の単位水量を超えた水量で出荷しているのが多いのではないかとの疑念を持っています。
 最近は多くの単位水量の測定方法が提案され、実施されてきています。連続的に常時計測も可能な時代になってきています。生コンの品質確認のための計測項目も、より品質を確保するのにふさわしい検査項目に変えていくことが必要です。スランプは施工性にかかわる品質なので、施工者に任せてしまい、完成構造物の品質に直接かかわる単位水量、空気量などを発注者はできるだけ完成構造物に近いところで検査する仕組みに変えていったほうが良いと思っています。ちなみに、JR東日本の契約ではスランプは参考値として示し、契約上は縛ることをしていません。

1.2 かぶりの管理
 鉄筋腐食の大きな原因の一つがかぶり不足です。設計かぶりが確保されていれば鉄筋腐食は簡単には生じません。30mm程度のかぶりが確実に確保されることが重要です。
 今のかぶりの検査は、鉄筋の組み立て時で、コンクリートの打設前です。多くはコンクリートの打設時に鉄筋が動いたりして、かぶり不足が生じているのだと思います。完成構造物でかぶりを非破壊検査で測定し、不足するものは対策をするようにして、かぶり不足のままの構造物をそのままで受け取らないように、建設時点で対応することが必要です。
 設計かぶりの大きなものは、設計と少々異なっても良いですが、最低でも30mm程度は確保するように非破壊検査の導入が望まれます。図-2は非破壊検査の精度を調べたものです。かぶりの少ない範囲では非常に精度が良いです。これで真面目に管理すれば、鉄筋腐食によるコンクリートの剥落問題はほとんど解決するのでは、と思っています。また設計かぶりも施工誤差を考えて少し大きくすることも大切です。


図-2 鉄筋位置の非破壊検査

1.3 剥落防止にプラスチック繊維を入れる
 このほかに、JR東日本で剥落対策として新設構造物に対して追加したことは、剥落すると人などに当たる可能性のある箇所の部材のコンクリートには、すべてプラスチック繊維を入れることにしたことです。入れる繊維の材料費は、コンクリートm3当たり500円程度です。
 現在は横浜国大の教授となっている細田先生が、大学院の博士課程を終えたのちに実務経験のために3年ほどJR東日本におりました。このプラスチック繊維を入れた場合と入れない場合とでどうなるかの試験を細田さんにしてもらい、ルールを決めました。写真-1はプラスチック繊維の入っていない場合と、入っている場合の比較試験です。無筋コンクリートに鉄筋相当の穴をあけ、そこに膨張材を入れクラックを入れてから、コンクリートが剥落するのにハンマーで何回たたくかの試験をしたものです。繊維のないものは9回で、繊維入りのものは200回でも剥落しませんでした。


写真-1 合成繊維の有無と剥落までの打撃回数(左は繊維無し、右が繊維有り)

1.4 水切りの構造の見直しと打音検査  水切りの三角形の切欠きは、型枠を外す時にクラックを入れやすいので、一例ですが図-3のように脱型しやすい型枠の形状に変えることにしました。また、剥落したら人に当たるような箇所は、打音検査をすることにしました。


図-3 水切りの構造の変更

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