道路構造物ジャーナルNET

⑥コンクリートの剥落

次世代の技術者へ

土木学会コンクリート委員会顧問
(JR東日本コンサルタンツ株式会社)

石橋 忠良

公開日:2020.02.01

 今回はコンクリート片の剥落についての話をします。ただし塩分が原因の鋼材腐食に関わるものは除いた話題です。塩分が関わるものはそれだけを取り上げて次々回に紹介する予定です。

1.鉄筋腐食が原因で鉄筋コンクリートのかぶりの剥落(温和な環境)

1.1 はじめに
 高架橋などのコンクリートのかぶりが剥落するということは、かなり前からあり、車を傷つけたりしてはその都度対応していました。近年ではすぐにマスコミの話題となり、非難されることになります。そのため今では、このコンクリートの剥落に対する事前対策の費用が非常に大きくなっています。
 この剥落の原因は、多くは鋼材の腐食膨張によりかぶりが落下するものです(写真-1)。


写真-1 鋼材腐食によるかぶりの剥落

 鋼材は腐食すると体積2倍から3倍に膨張するので、その膨張圧で、コンクリートかぶりが剥落することになります。

1.2 実構造物の被り部分をはつっての調査から
 図-1と図-2に実構造物の剥落箇所のかぶりと中性化深さと、剥落のない箇所の中性化深さと鉄筋位置の関係を示します。これは、剥落した箇所とその付近の剥落していない箇所のコンクリートをはつり、中性化深さや被りを調査したものです。


図-1 コンクリート片の剥落と中性化残り、雨水の影響あり


図-2 コンクリート片の剥落と中性化残り、雨水の影響なし

 図-1のコンクリート表面に水が流れたりする環境では鉄筋の位置が中性化残り10mmになると剥落が生じています。今までいろいろな文献で言われている、中性化残り10mmで鋼材腐食が始まるということと一致します。
 図-2は水の影響を受けない箇所の調査結果です。中性化が鉄筋位置よりも深くなっても鋼材の腐食膨張は見られず、剥落が生じていないことを示しています。水の影響を受けないというのはスラブ下面など、雨の当たらない部位です。
 写真-2は水の影響の様子がよくわかる柱の表面の状況です。水の流れる範囲の鉄筋は腐食し、かぶりが剥落するので補修跡があります。水の流れない箇所には補修跡はありません。


写真-2 水の影響の有無と補修跡

 写真-3は張り出しスラブ下面の状況です。左には水切りがなく、右は水切りがあります。スラブ下面に水切りのない左の写真には水がスラブ下面にまわり、鉄筋が腐食し、かぶりが剥落した後の補修跡があります。左は水切りが施工されているため、下面に水がまわらず、かぶりの剥落の跡はありません。
 鉄筋腐食に影響しているのは、かぶり、中性化、水の存在が相互に影響していることがわかります。


写真-3 水切りの有無によるスラブ下面の状況

2.型枠脱型時の初期ひび割れが原因のもの

 コンクリート剥落のもう一つの原因が、施工時の型枠脱型時に初期ひび割れを入れていることにあります。

2.1 鉄筋コンクリート
 高架橋のスラブ端部の下面には雨水が、桁下に回らないように水切りが施工されます。この水切りの先端部のコンクリートもしばしば剥落します(写真-4)。原因は、水きりのため三角形状にコンクリート下面を切り欠くので、その箇所のかぶりが少ないことと、合わせて三角形状の型枠を外す時に、叩いたりすることでコンクリートにクラックを入れていることがあります。外し難い型枠を用いると、外す時点でコンクリートに初期ひび割れを入れやすいのです。


写真-4 水切り部のコンクリートの剥落

2.2 無筋コンクリート
 トンネルは一般的に無筋コンクリートです。ですから、鉄筋腐食によるコンクリートの剥落はありません。それでもトンネルのコンクリート片の剥落は起きています。ほとんどの原因は、型枠脱型時のひび割れと、不十分なコンクリート施工です。トンネルのコンクリートは打設後1日で脱型することがほとんどです。型枠脱型時に少しの力がコンクリートにかかるとその時点では剥落しませんがクラックが入ってしまいます。このクラックが長期的には剥落の原因となります。
 山岳トンネルの技術者の技術の興味は、いかに早く掘るかという分野です。地山の性状に合わせて掘削方法や、支保工の構造を考えることは熱心です。しかし、コンクリートの施工にはあまり興味を持ってこなかったようです。トンネルの強度は、基本は地山とその補強のロックボルトや支保工が中心で、コンクリートは地山の風化防止と表面をきれいに見せるという機能が優先されたというのは言い過ぎでしょうか。

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