道路構造物ジャーナルNET

-分かっていますか?何が問題なのか- 第51回 新たな構造、形式にチャレンジするには ‐過去に学び、現代に活かすポイント‐

これでよいのか専門技術者

(一般財団法人)首都高速道路技術センター
上席研究員

髙木 千太郎

公開日:2019.09.01

3.講演するのであれば、もっと的確に調べましょうよ!

 先日、とある組織の技術報告会があり、興味深い数人の講演を聞く機会があった。いずれの話しも私が関連している社会基盤施設の話しで、橋梁に関する技術や附属物に関する話題提供であり、私としては、今風の新たな技術や状況を数多く吸収できる場であろうと期待して臨んだ場でもあった。しかし、私個人としては全てがそうでは無かったので、大きく落胆した。貴重な体験、新たな知見を得る事が出来た講演もあったが、ただ一つこれで良いのか!! と怒りがこみ上げた講演があったのでここで苦言を呈しておく。

 講演者は、自らが優れていると自己満足で考えるのは勝手である。しかし、講演者の立場で、公衆の前、自らの知識が無いのに、あたかも自らがその部門で優れた能力を持ち、豊かな経験があるように見せかけ、発言するのは如何なものかと感じた。本人が自己満足状態で講演している事柄は、事実とは大きく差異があり、誤りが数多くあった。であるにも関わらず講演者は、得意げに一方的に話を進め、事実が分からない人に、それが真実で常識であるように話す態度には、開いた口が閉まらない。私は講演を続ける当人の顔や発言を見聞きしながら、自画自賛する嫌な講演とはこういう事だとも思った。

 私も分からない分野の講演を依頼され、止むを得ず話す講演を引き受ける機会は少なからずある。そのような時は、少なくとも自分として曖昧な部分を最低限調べ、それでも理解できない箇所は、数多くの資料を紐解き、可能な限り自分のものにしてから話すように努力している。それが、本来の真の技術者像であり、尊敬に値する技術者として評価される基本と考えているからだ。とかく、自らの組織が社会的に認められている立場の技術者は、自己研鑽を怠り、他人が創った資料を引用して内容の薄い、誤りの多い講演する機会を多々見る。公的、私的にかかわらず、他人に講演する技術者は、所属組織や肩書で見下した話し方をするのではなく、自らの知識と経験を持って、同様な立ち位置、嫌、へり下った素直な態度で臨むべきである。私が不快感を持った講演者は、直ぐに先の事例で話した、研究室で日々悩みぬいた学生時代を思い起こし、自らの不足している技術を学び直し、他人に説明できるレベルまで如何に築き上げるかを、もう一度振り返って考えて貰いたい。それが、先輩技術者の務めであるからと私は思うし、自らもそのように努力しているつもりだ。底が浅い技術者は、組織に所属している時は何とかなり、周囲もそれなりに扱ってくれるが、一度組織から外れると誰も相手にしてくれなくなることを肝に命じてほしい。

 後味が悪いので、最後に、次回説明しようと考えている自碇式吊橋と非常に似通った外観と見るたびに私は思っている、鋼ゲルバー突桁式吊補剛桁の“葛西橋”の美しい外観を写真‐10に示す。“葛西橋”は、何度もお話ししている本州四国連絡橋架橋にも関わった“鈴木俊男”氏が設計者で、施工時に多くの苦労話があると聞いているので次回の話題提供で是非話そうと思っている。その際、今回話題提供した新たな構造形式採用にも触れた話をと私自身意気込んでいることから、読者が期待を膨らませるように写真‐10に示し、次回の話しに引き継ぐ事とした。

(2019年9月1日掲載、次回は12月1日に掲載予定です。)

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