道路構造物ジャーナルNET

阪神高速道路の維持管理報文連載

①阪神高速道路の構造物の劣化と維持管理の課題を考える(1)

阪神高速道路株式会社
大阪管理局 
保全部 保全設計課 課長 

小林 寛 氏

公開日:2017.02.21

高欄等の損傷

 本線とランプの近接部で、設計・施工が古く水切りが設置されていない高欄において、コンクリートの剥離および鉄筋腐食が見られた。周辺の高欄では昭和60年頃に水切り設置を含む補修工事が実施されたが、当該高欄は狭隘のため十分な施工が出来なかったものと考えられる。
 路下が一般道であることから、可能な範囲で落下の恐れのある部分を除去し、今後断面修復を実施する予定である。
 この様な狭隘区間は、日常点検における車上目視や路下からの目視での発見が難しく、また事後の補修も困難が伴う場合が多いことから、早期の発見が肝要となる。

大規模更新・修繕事業

 平成27年度より大規模修繕・更新事業がスタートし、コンクリート構造物関係ではRC床版の更新・修繕に向けた調査、ASR橋脚の修繕に向けた調査、設計年次が古く構造詳細に懸念があるPC桁の調査が進行中である。
 なお、阪神高速道路の大規模更新・修繕事業については、阪神高速のホームページをご参照いただきたい。
http://www.hanshin-exp.co.jp/company/torikumi/renewal/koshinkeikaku/

RC床版の更新
 旧基準で設計されたRC床版は、疲労耐久性の観点からみると、現行基準に比べ、床版厚、鉄筋量、床版支間等が厳しいことから、阪神高速では、昭和50年代後半よりこのようなRC床版に対し、下面からの鋼板接着補強を実施してきた。この方法は優秀な補強効果を発揮したものの、日常の目視点検等では劣化の兆候がつかみづらく、一部において漏水や接着不良音等の発生が確認されたことから、疲労耐久性を評価すべく、上記損傷が発生している床版パネルの切出しを平成26年の通行止工事にて実施した結果、切断面に水平ひび割れが確認され、床版内部の劣化を確認した(図6)。

 切出した床版および、比較対象として同一径間内から切出した健全な床版パネルに対し、輪荷重走行試験にて疲労耐久性を確認した結果、内部が劣化した床版パネル供試体は、健全パネル供試体の1/15程度の走行回数で破壊し、疲労耐久性が著しく小さいことが明らかとなった。これより、補強済みRC床版の疲労耐久性の評価にあたっては、床版内部の劣化状態を指標に加える必要があることが示唆され、その後床版内部の詳細調査を順次実施し、同様の劣化が疑われるRC床版が複数確認されたため、一部については床版取替の試験工事を実施するとともに、調査結果と疲労寿命評価の精度を高めるべく、対象床版から別途切り出した供試体を用いて輪荷重走行試験を追加実施中である。
 床版取替工事関しては、対象となりうる古い床版は鋼合成桁区間が多いことや、街中の工事になること、通行止めを伴うことから、既設床版の撤去に関しては施工時の安全性確保、低騒音かつ急速施工を可能とする撤去工法や、急速施工が可能で既設橋梁の縦断勾配に影響を与えず軽量な取替床版が課題となる。

ASR橋脚の修繕・更新
 ASRの発生が確認されている橋脚に対して、従来より当社が制定しているマニュアルに基づき維持管理を行ってきたところである。マニュアルでは外観調査と促進膨張試験結果によりASRと判定された橋脚は、ひび割れ総延長、ひび割れ幅により外観劣化度をランク付けし、ランクにより追跡点検~耐力補強までの対策メニューが施される事となっており、既に鋼板や炭素繊維シートによる耐力補強(図7)や、梁の再構築(図8)が実施されたものもある。
 また対策として実施された当時の表面保護材ではASR抑制効果が十分ではなく、対策後25年近くを経て保護材の下でのひび割れ発生・伸展が発見され、ASR進行の発見が遅れたケースも見られた。


 大規模修繕工事としては、現在105橋脚を対象にコア抜きを行い圧縮強度、静弾性係数、全膨張量の調査を実施中である。
 補強・補修方針としては耐力の不足が認められるものについてはPC外ケーブル等による補強を行い、耐力の不足が認められないもののうち、全膨張量が500μを超えるものについてはASR抑制のため亜硝酸リチウム圧入工法を基本とする。
 補強・抑制工法とも現在のところRC構造物での実績はあるが、PC構造物(PC梁)で同様な工法が適用できるのかが、現在の課題であり、有識者・学識経験者を交えた検討委員会にて検討中である。

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