道路構造物ジャーナルNET

土木研究所集中連載⑤

道路橋RC床版の耐久性向上に向けた研究開発

国立研究開発法人土木研究所 寒地土木研究所 
寒地基礎技術研究グループ 寒地構造チーム 
主任研究員

佐藤 孝司

公開日:2016.12.16

1.はじめに

 道路橋RC床版(以下、床版)の劣化要因は、主に大型車の輪荷重による疲労や床版内部への水の浸入とされている1)。これらの劣化要因に加え、積雪寒冷地では凍害や凍結防止剤の散布による塩害の影響を受けた床版の劣化損傷が、比較的交通量の少ない路線の橋梁においても顕在化してきている。このように、疲労に加えて、凍害、塩害、アルカリシリカ反応との複合劣化が生じた場合には、疲労単独の場合に比べて損傷の進行程度が大きく、その耐久性を大きく損なうことが明らかとなってきた。ここでは積雪寒冷地における床版の耐久性向上に向けた取り組みについて紹介する。

2.床版の損傷

2.1床版の損傷状況
 積雪寒冷地においては、凍害や凍結防止剤による塩害が床版の劣化損傷の主たる要因の一つと考えられるが、その進行形態から初期段階での発見は難しく、橋面舗装の変状が確認された時(写真-1、写真-2)には、既に劣化損傷が深刻化していることが少なくない。
 舗装下(床版上面)の損傷状況を適切に把握するためには,舗装のひび割れ・はく離・ポットホールの劣化を早期に発見することによって,床版上面の損傷状況を的確に類推することが可能となる。そのため床版の健全性をより長く保つためには、床版の構造特性、劣化損傷を発生させる主たる劣化要因、道路の維持管理状況の違いなどを理解した上で、劣化損傷の原因推定および劣化進行の想定が可能となるよう、日常の維持管理に努めることが重要である。

2.2床版の損傷メカニズム
 積雪寒冷地における床版の劣化損傷において、特に問題となるのは凍害である。凍害は床版内に含まれる水分が凍結により膨張し、内部に膨張圧を生じてその周辺を破壊することで進行する。凍害は一般に表面から劣化が進行し、徐々に内側に影響範囲が進展する。
 さらに近年の劣化損傷の事例より、凍害の影響によるものと考えられる床版の面内方向、すなわち水平方向にひびわれを確認している。床版に生じる水平ひびわれの発生の模式図(進行形態)について、図-1 に示す。また、主に凍害の影響と推察される損傷の進行状況(断面)を、写真-3(a)~(c) に示す。なお、凍害は水分が存在しないと発生しない。そのため、道路橋の床版においては、雨水等が滞留しやすい床版上面から凍害が進展する。写真-3(a)は、凍害による水平ひびわれの発生初期の状況である。写真-3(b)を見ると、床版上面から上側鉄筋の間に水平ひびわれが生じていることがわかる。さらに写真-3(c)では、床版上側の水平ひびわれが密となり、上面付近の砂利化に損傷が進行していることがわかる。
 これらの状況より、床版下面にはひびわれが生じていないため、下面からその損傷の程度を目視確認することが難しい。なお、水平ひびわれはその他の要因でも生じることはあるが、凍害の場合はその他の損傷を伴わない場合も多く、より判断が難しいものとなる。

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