道路構造物ジャーナルNET

-分かっていますか?何が問題なのか- ⑲ 勝鬨橋の跳開について

これでよいのか専門技術者

(一般財団法人)首都高速道路技術センター
上席研究員

髙木 千太郎 氏

公開日:2016.11.01

はじめに

 先月末(9月29日)、日本大学理工学部の野村教授からメールがあり、『インターネットを見ていたら勝鬨橋が開いていましたけれど、髙木さん開けることが出来るのですか?』との問いかけであった。野村先生から教えていただいたアドレスのサイトを見てびっくり、開いていたのである「開かないはずの勝鬨橋」が、それも今まさに、の映像である。
 その後10月中旬からは、テレビCMでも数多く流れ、多くの視聴者が目にしたシーンであると思う。題名は、「プレミアムボス“プレミアムTOKYO”」であるが、出演者は、タモリ、船長のTommy Lee Jones、客の貫地谷しほり他である。初めてネットを見たときはひどく感激した。水上バス、隅田川、水遊び、芸者、夕暮れ時、勝鬨橋、東京湾と映像の流れが素晴らしい。特に、船長が握る特別な操作装置を下しながら『開けゴマ!』の掛け声で、開けることが出来ない双葉跳開可動橋の勝鬨橋が夢のように見事に中央部が、それもハの字に開いた途端、ハトが一斉に飛び立つのである。良くできている、素晴らしい、小泉元首相の言葉ではないが『傷みをものともせずによく頑張った!感動した!』である。合成された動画とは言え、私が今年の年初めに願いを込めて執筆したことがかなったことは実に喜ばしい。次に空くのは「2020東京オリンピック」かな?・・・レガシーを残すと言っている小池知事に頼んでみるか!・・・となるが。
 さて、今回は、私が感動したプレミアムボスの勝鬨橋跳開にちなんで「可動橋」の種類と特徴、再跳開について分かっていることなどを中心に、技術者としてあるべき本来の姿について述べることとする。

1.主要な可動橋の種類と特徴

 そもそも可動橋の起源は、中世時代のヨーロッパ、おそらくノルマンディー地方の城や町において外敵から防護する手段の一つとして使われたことにある。当時の可動橋は、カウンターウェイトとウインチによる操作で容易に跳開する1スパンの跳ね上げ型式の橋梁であった。当然敵が攻め込むのを防ぐには、物理的に近寄れない空間、要は人馬が容易に渡ることができない水深のある水空間を住居や町の周囲に張り巡らすことである。しかし、単に溝を掘り、水を貯めただけでは敵から守ることはできても、自らが畑地や狩りに行くことは困難となる。そこで、技術者の登場、簡易に水空間を跨ぐことができ、必要の無い時は容易に渡れない設備、それが可動橋なのである。世界には、種々な可動橋が多くの国で架設されているが、最も数が多いのは私の経験では米国であると思う。ここで可動橋のおさらいをしよう。
 可動橋の主な種類は、①上部構造がトラニオン軸を中心に開閉する勝鬨橋と同型式の跳開橋(Bascule Bridge)写真‐2参照、②上部構造が上下に昇降する昇開橋(Vertical Lift Bridge)写真-3参照、③上部構造が橋脚を軸として旋回する旋回橋(Swing Bridge)写真‐4参照、④上部構造を橋台側の空間に引き込むことでスペースを創る引込み橋(Retracting Bridge)写真‐5参照、⑤上部構造を浮体構造として築造し、必要時に動かすことでスペースを創る浮体橋(Floating Bridge)写真-6参照、以上の6型式が主要な可動橋である。
 勝鬨橋のような跳開型式の可動橋を採用するメリットは、運河、海峡、河川を跨ぐ橋梁ではあるが無制限の垂直クリアランスを経済的に提供することが可能であること。デメリットは、可動部分のバランスを適切に保つこと、カウンターウェイトピットを乾燥状態に保つ必要性があること、可動施設や設備のメンテナンスが必要となること、センターロック(後述のシャーロックと同じ)やリアロック(テールロック)の機能確保が必要となることなどが挙げられる。なお、現在国内には、33橋もの可動橋があると聞いているが、勝鬨橋と同様な跳開橋が15橋、昇開橋が9橋、旋回橋が8橋、引込み橋が1橋である。その内可動していない可動橋は、4橋である。以上が、可動橋の概説である。それでは、本題の勝鬨橋に話しを移すとしよう。

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