道路構造物ジャーナルNET

新たに発刊した「道路橋防食便覧」のポイント

②耐候性鋼材と緻密なさび

公益財団法人 東京都道路整備保全公社
一般財団法人 首都高速道路技術センター

髙木 千太郎 氏

公開日:2014.11.01

架設時の調整も必要

 次に耐候性鋼材の施工は、所定の防食機能確保を図るために、鋼材の加工を行う製作時又は架設時に鋼材表面を緻密なさび層が形成されやすいよう調整することが必要となる。具体的な調整は、鋼材表面黒皮の除去、さび汚れの除去、付着した塩分の除去などである。耐候性鋼材は、緻密なさび層の形成が、適切に成されるように配慮し周到に計画、設計、製作、架設が行われた橋であっても、実際に架設された橋においては、計画、設計段階の想定より構成部材の部位が厳しい環境にさらされる場合や、予期しない箇所や構造的な経年劣化部位からの漏水などで局部的に設計時の想定以上の環境悪化が生じ、緻密なさび層が形成されない場合がある。例えば、塩分を含む漏水などがある場合には、長期にわたって点検が実施されずに放置されると、激しい腐食によって断面が欠損し、部材補強や取り替えが必要となる可能性もある。


                       耐候性鋼橋の損傷事例②

環境条件には厳重に注意を

 また、架橋後の周辺地形の変化、隣接構造物の設置、植生の変化、凍結防止剤の飛散状況の変化などによる風みち、湿潤環境や塩分環境の変化によって、緻密なさび層が形成されない環境となることもある。このように耐候性鋼橋でも実際に架橋された橋の各部が、適当な条件の下で設計で考慮した期間の耐久性を発揮するためには、適切な維持管理が必要である。耐候性鋼橋の防食機能の低下は、層状剥離さびの発生として現れ、それに伴って板厚減少量が大きくなる。したがって点検時には、層状剥離さび、及びその兆候となるうろこ状さびの発生の有無を点検するとともに、堆積物、漏水、滞水による部材のぬれやさびの外観など部材と鋼材の置かれた環境条件に注意することが必要となる。
 点検で損傷が確認された場合や、じんあいの堆積など措置が必要と判断された場合には、適切な維持補修等の措置を行う必要がある。異常なさびが発見された場合は、発生原因を的確に把握し、その要因を排除することが重要であるが、原因排除対策が可能な場合であっても、確実に発生原因が排除されるか否かによって、層状剥離さびが発生した箇所の処置が異なるので注意が必要である。
 原因の排除が適切であれば、層状剥離さびを除去し必要に応じて付着塩分を除去することによって、初期の環境状態に戻すことが可能なため、塗装など他の方法による対策の必要はない。一方、確実な原因排除が困難な場合は、可能な範囲で原因排除をすると同時に、層状剥離さびが発生した部位、及びその周辺も含めて他の防食法による対策を検討するのがよい。これまで、耐候性鋼材の道路橋への適用、耐候性鋼橋の計画、設計、施工、維持管理のポイントに関して「鋼道路橋防食便覧」における記述を中心に解説した。


下部構造上の部分塗装範囲(左)、適切に使えば維持管理費は安価になる橋梁例(供用から44年経過している都内の橋梁)(右)

適切に使えば維持管理費は安価に

おわりに
 耐食性材料の使用による防食は、使用鋼材そのものに腐食速度を低下させる合金元素を添加することで改質した耐食性を有する材料を使用する防食方法である。耐候性鋼材では、その表面に緻密なさび層が形成されるまでの期間は普通鋼材と同様にさび汁が生じるため、初期さびの形成抑制や、緻密なさび層の形成促進を設計、施工、維持管理の各段階で適切におこなうことが重要である。適用できない環境に耐候性鋼橋を架設すると緻密なさび層が形成せず層状剥離さびが形成し、最悪、交通規制せざるを得ない状況となる。
 このような事態とならないためにも、耐候性鋼材、ニッケル系耐候性鋼材、耐候性鋼用表面処理剤等の適用には架設時、供用後の環境、施工条件等を十分調査し、緻密なさび層が確実に形成される条件下とすることが重要なポイントである。さらに、本文でも記述しているが、耐侯性鋼材は、初期の段階でさび汁が生じるため、けた下を含む種々な箇所を汚すことがある。色彩は、塗装をしない限り茶褐色又は黒褐色である。
 耐候性鋼橋は、使用環境条件が適切であれば時間とともに緻密なさびが形成され、色彩は一様となりさび汁の流出もなくなる。耐候性鋼橋では、定期点検時に異常なさび形成の確認を行い、異常時にはその原因を究明し、原因を排除するとともに、必要に応じて塗装等によって補修するなどの適切な対策を施す必要がある。耐候性鋼材を鋼構造物に適用することは、環境等種々な条件に合致すれば塗装等の防食法を定期的に交換することなく、その後の維持管理費も安価ですむことになる。しかし、適用環境を誤ると維持管理費やその後の対策費が莫大となる。どのような防食法をを選定しても、対象となる防食法の適用条件やその後の維持管理を怠ると予想を超える事態となるので、種々な面での検討と細心の注意が必要であることは言うまでもない。

参考文献
1)土木工構造物の点検・診断・対策技術:2013年度版 一般社団法人日本鋼構造協会
※写真、図提供は筆者
(次回は12月1日に掲載します)

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