道路構造物ジャーナルNET

道路橋の維持補修

「水を制するー既設橋の桁端部」

(一社)日本建設機械施工協会 施工技術総合研究所
研究第二部 部長

谷倉 泉

公開日:2014.09.29

1.橋をとりまく最近の情勢

 国内の橋長2m以上の道路橋は約70万橋と非常に多いが、橋数で見ると約3/4が政令市と市町村が管理する中小橋であり、その多くで橋梁技術者が不足していると言われている。さらにその橋数の推移については、平成40年には建設後50年以上経過する道路橋(橋長2m以上)の割合が現在の約16%から約65%となるなど、高齢化の割合が加速度的に増加すると言う予測がなされている。このような中、国土交通省は平成19年度には「橋梁長寿命化修繕計画策定事業」を、平成25年度11月にはメンテナンス元年と称しての「インフラ長寿命化基本計画」を、さらに今年の2014年6月には定期点検の基本的な方法を示した「道路橋定期点検要領」を策定している。
 この定期点検要領では、橋の点検、診断に必要な情報を得るための点検を近接目視により行うことを基本として、5年に1回の頻度で実施することとしている。昨今の非破壊検査技術や情報伝達技術は以前に比べると格段に向上しているが、見る目のある点検員が直接目視して確認することは、医療分野における臨床と同様に、橋の現状を知って診断する上で非常に重要かつ確実性を高めるものであると言えよう。しかしながら、地方自治体の一部では少ない技術者で多数の橋を点検する必要に迫られており、予算不足、点検員不足などの現実に直面しているケースが見られる。これも「コンクリートから人へ」の弊害の表れの一つではないかと感じているが、その点は専門家や外部からの支援も含めて早急に対策を講じ、これを機会により良い維持管理体制を築いていっていただきたいところである。管理する橋の数が少なければ何とか対応できるとしても、数が多ければ人も費用も時間も不足してお手上げとなってしまう恐れもあり、言い換えれば点検が雑になってしまわないか懸念されるところである。
 その一方で、内閣府総合科学技術会議が2014年度からスタートした戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)では、府省間の枠を超えた産学官の連携のもとに我が国にとって将来的に有望な市場を開拓し、日本経済の再生を果たしていく方針が盛り込まれた。そのSIPの1つに、インフラ維持管理・更新・マネジメント技術(PD:藤野陽三横浜国大特任教授)が含まれており、予防保全によるインフラ維持管理水準の低コストでの実現を目指す動きが始まっており、維持補修の追い風となりそうである。
 また、現状における国内のインフラストックは800兆円規模となっており、今後50年間に必要な維持更新は190兆円に達するとも言われている。その内の約45兆円の資産額である高速道路インフラに関しては、今後の維持更新費が15年間で3兆円規模(橋梁は約2兆円)に達すると見られており、今後の橋のLCC削減に向けた取り組みはより一層その重みを増してきている。

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