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建設機械自動化では実験施設と開発基盤を整備

土木研究所 技術支援拠点を整備してリアルタイムで現場と情報共有

公開日:2021.02.01

 国立研究開発法人土木研究所は1月29日、DX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みについて明らかにした。インフラ環境の整備では、同研究所を国土交通省と100Gbpsのネットワークで接続し、同研究所内に非接触・リモート方式の技術支援の拠点となる「DXルーム」を整備する。広域的災害の被災状況などをDXルームで把握することにより、迅速で的確な技術支援の実現を目指すもので、今年の台風シーズン前までの整備を予定している。また、橋梁の老朽化対策に関する技術支援も実施する予定だ。
 土砂管理研究グループ地すべりチームでは、3次元カラー点群データをもとに地すべり発生現場をCIMモデル化するシステムをすでに構築しており、バーチャルな現場を再現することにより災害の全体像の把握と共有、遠隔支援に役立てきた。インフラ環境と技術支援拠点を整備することにより、被災現場の高精細な画像やCIMモデルなどがリアルタイムで共有ができ、現地調査前の事前検討や説明・助言が詳細に行えるようになり、災害対応のより一層の迅速化、効率性の向上が期待できる。

 橋梁診断業務についても、開発中のエキスパートシステム(診断AI)の入力・出力情報や3次元データをリアルタイムで現地と共有することで、同研究所から現場の診断業務を遠隔で支援することが可能になり、信頼性向上が図れることになる。診断AIは、3巡目の定期点検開始となる2024年度までの開発を目指している。


診断AIと遠隔技術支援で診断業務の信頼性向上を図る

 さらに、建設機械屋外実験施設およびエンジニアリングセンタを整備して、自律施工研究開発基盤の整備にも取り組む。現在、屋外実験施設である実証フィールド(18,000m2)を整備中で、フィールドには土砂材料約1,500m3を常設し、幅10m、高さ3m、直線部延長50m、曲線部延長75mの道路盛土の工事現場の再現が可能となる。ローカル5Gによる移動体無線設備のほか、国土交通省と光ファイバで接続されることになっている。
 実証フィールドでは建設機械の遠隔操作、自律施工などの実験を行い、それら技術の開発・普及促進を図っていく。エンジニアリングセンタは、実証実験に必要な装置類を建設機械に架装するための工場設備となる。産学共同研究での活用や民間企業単独での利用も可能で、自動化技術などに関心のある地方の中小建設企業の挑戦の場としても活用してもらいたいとしている。また、高速通信ネットワークを使って、遠隔地からの実験参加も可能だ。今夏までに最初の建設機械デモを行いたいとしている。


実証フィールドの概要

 自律施工研究開発基盤の整備のなかではオープンプラットフォーム対応にも取り組んでいく。競争領域と協調領域を分け、協調領域をオープンプラットフォームとすることで開発の無駄を省くことが狙いだ。具体的には、3次元仮想空間のシミュレーター上でモデル化した建設機械を試運転して自動施工プログラミングの性能を事前に確認したうえで、実物大の実証フィールドにおいてオープンプラットフォームを搭載した建設機械を使って、プログラムによる自動施工の実証実験を可能にするものだ。開発・実験・検証から現場導入へのサイクル促進や、大学などの研究機関やベンチャー企業の参入をしやすくすることを期待している。
(2021年2月1日掲載)

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