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建ロボテックと富士ピー・エスが橋梁床版用に改良 実橋梁で実証試験済み

鉄筋結束ロボット『トモロボ』 PC橋 橋梁床版施工現場の鉄筋結束を自動化することにより施工効率を5割以上向上

公開日:2021.02.08

 建ロボテックと富士ピー・エスは、鉄筋結束ロボット「トモロボ」を太径(D19~26)に対応し、橋梁工事におけるコンクリート床版の鉄筋結束に使用できるよう改良した。既に富士ピー・エスの現場で実証試験を行い、実用性と有効性も確認している。今後は実証試験を踏まえた改良を行い、同社施工の工事で運用を開始すると共に、4月からは一般販売の予約も開始する予定で、2022年度は10台程度の売上を目指す。(井手迫瑞樹)

労働人口減に対応、猛暑による効率低下も問題ない
 鉄筋結束機そのものの改造は不要

 ロボット技術が現場に必要な背景には、建設現場における労働人口の減少がある。また夏季における猛暑日は年々増加傾向にあるが「34℃を超える暑さであった場合、生産性が35%ほど落ちる。それを補填できる」(建ロボテック・眞部達也社長)のも魅力だ。
 トモロボは、マックス社の鉄筋結束機「ツインタイア」(1台当たりの重量は約3㎏)を左右に2台取り付けるだけで、比較的単純な形状の床版の鉄筋結束作業を自動化できるロボット。結束機の把持は専用アダプターをつけるだけで取り付け可能で、結束機そのものを改造する必要がない。


施工中のトモロボ

 ロボットは施工前に全結束、チドリ結束、2つ飛び結束を選択するだけであとは自律走行して結束していく。ロボットの走行方法は鉄筋上にテーパー車輪を載せ鉄筋をレール代わりにして走っている。その鉄筋幅に合わせてロボットの幅が変わる。最小幅は300mm、Max650~700mmに対応できる。機械にはセンサーが付いており、鉄筋の交点を感知しながら結束作業を進めるため、ピッチの変化には自動対応できる。また、鉄筋高さのずれ、傾きなど、様々な環境下でも鉄筋の交点を感知して結束作業を行うことができる。配筋ピッチは100、150、200、250、300mmに対応し、鉄筋径も従来はφ10~16であったのが、今回φ19~26mmにも対応できるようになった。ピッチ誤差は±20mm。前方に障害物や人がいる場合や、鉄筋がない開口部などがあれば自動停止する機能を備えている。

 現場での実証試験は、国交省中国地方整備局浜田河川国道事務所の滝見高架橋の床版の一部で、幅員9.5m×10往復を施工した。今回はPCコンポ桁の床版部で使用したが、トモロボを活用した場合「通常の1.5倍程度の作業量をこなすことが期待でき労務費もコスト縮減できる。さらに昼休みなど人間が休息する時でも機械は休まず稼働するため、もう少し生産性は上がると考えている」(富士ピー・エス)。機械購入費は、「PC4径間連結コンポ桁を2橋程施工すれば労務費換算でペイできる価格であり、鉄筋工を主体としている会社であっても気軽に手の届く価格帯になっている」(同)ということだ。同社では、PCコンポだけでなくホロースラブの床版部や二主鈑桁の床版部などといった現場に投入していく方針だ。

トモロボの施工(遠景)

 トモロボは自立走行であるがAIは使っていない。トモロボ1台ごとにAIを付ければ機械コストが上昇するためだ。但し今後は稼働状況を全部ウェブに挙げて、クラウド上のAIで学習させ、得た情報をプログラミングに反映させる計画を考えている。

PC橋や鋼橋コンクリート床版施工現場を機械化・IT化
 働き方改革、生産性向上、作業員の待遇改善に寄与

 富士ピー・エス 堤忠彦社長「当社は、コロナに関係なく、以前から自動化、ロボット化は工場を中心に進めてきました。最初にコロナの影響があったため事業の非接触化ということでデジタルツールを使い始めました。現在は現場施工におけるIT化やデジタル化、安全面におけるデジタル化の導入により、安全管理を向上させるなど様々な取り組みをしています。建設現場においてもIT化は土工を中心に進んでいますが、橋梁施工においては自動化、IT化がなかなか進んでいませんでした。今回トモロボを試行していただいて、大きな道筋をつけていただいたと考えています。現場においてDXは働き方改革、生産性向上、最終的には現場作業員の待遇改善につながっていけば良いと思います。さらには若い人にとってもモノづくり現場の魅力がさらにアップし、多くの人が興味を持ってくれるきっかけの一つになってくれればと考えています」。
(2021年2月8日掲載)

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