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「ローカルに輝く国土」

国土交通省 「新たな広域道路ネットワークに関する検討会」の中間とりまとめを公表

公開日:2020.06.09

 国土交通省は8日、「新たな広域道路ネットワークに関する検討会」(座長:朝倉康夫東工大教授)の中間とりまとめを公表した。現状の交通課題の解消を図る観点と、新たな国土形成の観点の両輪で新たな広域道路ネットワークの在り方について議論を重ねたもの。広域道路ネットワークの整備を広域道路(仮称)と特定広域道路(仮称)に分けて2階層で計画することを提案しているほか、新コロナで浮き彫りになった事実――首都圏の過密リスクの分散、サプライチェーンの国内回帰の議論やIoTなどを利用した地方でのテレワークの実施などによる東京一極集中の是正を見据えた「ローカルに輝く国土」形成の可能性――などにも触れるなど意欲的なとりまとめ内容になっている。

 同検討会では、新コロナ下における広域道路ネットワークにおける現状認識として、①小型車の長距離利用は大幅に減っているものの、大型車は1割も減っておらず、小型車でも通勤など近距離利用は、長距離ほど減っていないデータを示した。

 一方で物流に占める道路の重要性は揺るがず、さらにマスクなどで露呈したグローバリズムの脆弱性からサプライチェーンの国内回帰が進む可能性や、労働者のテレワークによる居住地の地方分散が進めば、さらに道路の重要性は増す。しかし現状は②一方で主要都市間の連絡速度は平均で60km/hに達しているものの、ミッシングリンクがある個所では約8割が同速度以下となっており、渋滞などの影響で約40km/hにすら達しない区間もあるとした。渋滞損失は全区間延長の約1割で全体の約4割の損失時間を生じさせている。

 震災や豪雨の災害リスクにも言及し、③豪雨時の事前通行規制区間は直轄国道だけでも約200箇所あり、2017年度だけでも約96万時間kmの通行止め時間が発生した。加えて④インフラの老朽化への対策や⑤トラックのさらなる大型化(1台当たりの輸送量を増やし、担い手不足に対応する)も考慮する必要性を指摘している。

 そうした課題へ対応するため広域道路(仮称)の括りを広域道路(仮称)と特定広域道路(仮称)に類別して整備するべきとした。広域道路(仮称)は、「広域交通の拠点となる都市を効率的かつ効果的に連絡する道路」「高規格幹線道路や上記の広域道路(仮称)と重要な空港・港湾等を連絡する道路」と定義した。

 特定広域道路(仮称)は、「ブロック都市圏間を連絡する道路」「ブロック都市圏内の拠点連絡や中心都市を環状に連絡する道路」「高規格幹線道路や特定広域道路(仮称)と重要な空港・港湾を連絡する道路」と定義した。サービス速度は概ね60km/hが必要とし、物流にとって重要な定時制を高めるため、渋滞箇所を特定した上で、交通量が多い主要道路との交差点の立体化や沿道の土地利用状況を踏まえた沿道アクセスコントロールを計画段階からも考慮していかなければならない、とした。加えて、高規格幹線道路とともに全国的に主要な道路ネットワークを構築するものであることから、高規格幹線道路を補完・代替するという防災・減災、国土強靱化の観点からも検討する必要がある、と広域道路よりも高いレベルとして位置付けていることを示唆している。

(2020年6月9日掲載)

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