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上部工は設計照査進む 主塔ブロックは3回に分けて架設

京浜港湾  東扇島~水江町地区 鋼PC複合斜張橋下部工が終盤

公開日:2020.03.16

 国土交通省関東地方整備局京浜港湾事務所は、現在、川崎港の東扇島~水江町地区臨港道路整備事業を進めている。主構造物は京浜運河上に架かる橋長865mの鋼(運河渡河部、525m、主塔も含め総鋼重約17,800t)・PC(両側径間部170m×2)連続複合斜張橋だ。中央径間長525mは斜張橋としては東日本一の長さを有する。現在は下部工の一部(MP1,MP4)が完了し、MP2、MP5、MP6が施工中でMP3が躯体の施工を終え、支保工を撤去中だ。(井手迫瑞樹)

 同橋の特徴は、その主塔高の低さだ。京浜運河上に架かるため、径間長は同運河を通る船舶に配慮して400m以上、クリアランスも42ⅿ(船舶と桁下との余裕高2m を含め)以上取らなくてはならず、ここでは渡河部の径間長は525m、桁下クリアランスを中央部で47m取る設計とした。通常、この径間長、クリアランスに対するに主塔高は150m以上が必要であるが、羽田空港が近傍にあることから主塔高を抑える必要があった。そのため両側径間部をPCとし、カウンターウェイトとするとともに軸力が大きくなる主塔の一部にはSBHS鋼を採用している。鋼・PCの剛結は鋼殻セルを使用している。桁形式はPC部が3室箱桁、鋼桁部は扁平六角形3室箱桁とした。


橋梁イメージ(国土交通省関東地方整備局京浜港湾事務所提供、以下同)

60mを超える大深度基礎
 MP3は気仙沼湾横断橋と同様の支保工を採用

 同地は基礎も厳しい。深度は60mを超える個所もある。通常は鋼管矢板井筒基礎で行いたいところだが、「護岸に近い箇所は基礎の面積を狭くするため」(京浜港湾事務所)、ニューマチックケーソンを採用(MP1、MP4(主塔基礎)、MP5、MP6)、鋼管矢板井筒基礎は、MP2、MP3(主塔基礎)で使った。MP3工区(東亜・若築・みらいJV)が施工しているが、鋼管矢板長は64.5m、打設量は外周部が90本、隔壁部が82本、さらには中打杭12本を打設している。周囲の鋼管矢板を打設して継手を嵌合して閉合させ、鋼管矢板の中にコンクリートを充填させ、継手部の土を取り除いてモルタルを注入し、井筒の内外の縁を切り、そうして初めて井筒の中を掘削した。 鋼管矢板を構築した後は水中掘削を行い、掘削後は水中で底盤コンクリート(厚さ3.3m)を打設した。打設後に水を排出し、井筒(締切)内をドライな状態に変えるが、ドライ状態下では水圧が無く井筒内外の圧力が変わるため、支保工を事前に設けておく必要がある。


MP1(左)、MP2(右)の施工状況

MP3、MP4の主塔基礎

MP5、MP6の施工状況

 その支保工は、橋脚躯体内構築の施工性・品質確保・工期短縮を目的として、従来の切梁・腹起構造から開口の大きい構造となるトラス構造の支保工を採用した。気仙沼湾横断橋の主塔で採用したタイプで、速さもさることながら、切梁や中間杭が橋脚躯体を貫通しないため、品質確保に対する寄与も大きい。


トラス構造の支保工を採用したMP3

 橋脚や基礎のマスコン対策としては温度応力解析、低発熱セメントを採用するとともに、一部で膨張材も使用した。鉄筋量が膨大なため、配筋にも相当苦労したようだ。また、MP4ではひび割れ防止鉄筋を入れている。全ての橋梁で、表層目視チェックを行っている。

上部工はPC桁部から先行して架設
 鋼桁接合は全断面溶接

 上部工架設は、PC箱桁部から先行して行う予定。MP2、MP5(側径間の中間橋脚)にピロン柱を配置し、ワーゲンと仮斜吊材を用いて左右に張り出していく(1回ごとの張出長は横桁部4.0ⅿ、横桁無し部4.5m)。PC箱桁が主塔近傍まで達したタイミングで主塔の架設にかかる。


主橋梁部上部構造

 主塔打設は3ブロックに分けて行う。5,000t積みの台船に載せた1ブロック最大1,400tの主塔ブロックを3,000t吊FC船で架設する。主塔を中段まで架設した後、主塔の腰の部分に支承を配置し、PC桁を張り出して載せる。その際に鋼殻セルも含めた接合桁、主塔近傍の鋼箱桁を配置する。
 その後に主塔上部をFC船で架設する。中央径間の鋼桁(1ブロック平均12.5m、一般部200t、最大(主塔近傍)280t)については、台船で運び、吊り上げて順次架設し、斜材で繋いでいく。鋼桁同士の接合は、海上橋ゆえの防食を考慮して全断面溶接を採用するため、風の影響を大きく受けそうだ。
 現在、上部工は設計照査を進めている。同橋も含めた川崎港臨港道路東扇島水江町線(延長3km)の完成供用は2023年度内を予定している。


川崎港臨港道路東扇島水江町線(延長3km)の完成供用イメージ

 設計は大日本コンサルタント・日本工営JV。下部工は鹿島・東亜・白石JV(MP1)、五洋・清水JV(MP2)、東亜・若築・みらいJV(MP3)、大成・東洋・大豊JV、(MP4)、清水・五洋JV(MP5、MP6)。上部工は東扇島PC桁部が三井住友・みらい・日本ピーエスJV、東扇島側主塔および主径間(ほぼ半分)部がIHI・JFE・横河JV、水江町側主塔および主径間部(残り半分)がMMB・宮地・川田JV、水江町側PC桁部が鹿島・東亜JV。(2020年3月16日掲載)

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