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構造物残りは8橋の上部工 年内に8割の4車線化工事が完了

NEXCO東日本新潟支社 上信越道4車線化現場を公開

公開日:2018.07.14

 東日本高速道路新潟支社は13日、4車線化工事を進めている上信越道信濃町IC~上越JCT間の現場を報道陣に公開した。同区間は全体延長37.5kmのうち12.8kmの4車線化をかんりょうしており、現在は残る24.7kmの4車線化工事を進めている。年内にそのうちの8割、また2019年度内には全対象区間の工事が完了する予定だ。

 区間構造物延長は土工が19.5km(78.9%)、橋梁が3.1km(12.6%)、トンネルが2.1km(8.5%)をそれぞれ占める。橋梁は20橋、トンネルは5本ある。2012年4月20日に4車線化への事業許可変更が認められ、2017年度から全線で工事を展開、既にトンネルは5本とも開通し、橋梁上部工も20橋中12橋が完成、残りの上部工も着手済みだ。昨年10月以降は舗装・施工工事にも着手しており、事業費ベースの進捗率は7割に達している。

 当初、上信越道の4車線化は今年度中の供用を目指していた。それが1年延期になったのは、上信越道の地質特性、冬季工事の困難という2つの要因による所が多い。同地の地質特性は山側の信濃町IC~新井PA間が火砕流等堆積物、海側の新井PA~上越JCT間が砂岸泥岩互層でそれぞれ構成されている。これらはⅠ期線工事で既に直面しており、2期線工事に当たっても調査をかけて、設計施工を始めた。特に地盤については、山側区間において岩塊は1m程度と想定していたものの、2mを超える岩塊も出るなど、基礎工事前の岩塊や転石の除去に想定以上の時間を要したこと、海側においては雨などの影響で法面や盛土の被災個所が10箇所に上りその応急対策や防止対策に手間を要したことが、供用時期の見直しにつながった。

のり面対策例/舗装の施工へ
 当日、報道陣に公開したのは、金谷トンネル(5工区、上越高田IC~上越JCT間)、れいめい橋(1工区、信濃町IC~妙高高原IC間)、大田切川橋(2工区、妙高高原IC~妙高SA間)の3ヵ所。

金谷トンネル手前の儀明川橋/金谷トンネル坑口(左側がⅡ期線)
 金谷トンネルは既に貫通し、舗装までを架け終えている「4車線化工事の中で最も進んでいる」箇所であり、全長は370m、NATMによって施工された。一部新幹線トンネルと交差しており、施工に際してはmm単位の変位計測を求められた。

同トンネル坑内
 れいめい橋は、橋長500.5mのPC5+4径間連続ラーメン箱桁橋。ここは直下に新潟県と長野県の県境である関川が流れる。関川河岸には転石や岩塊が点在していた。地盤にはやはり妙高山の火山活動由来の岩塊などが含まれ、巨大なものは2mほどになり、しかも供用中のⅠ期線に留意しながら人力で破砕し撤去しなければならなかった。また岩塊や転石は含まれるものの、周囲の地盤は脆く、杭基礎やケーソン基礎が必要であり、基礎の幅が大きくなったことから岩塊などの除去範囲も広くなり「フーチングの施工が困難を極めた」(東日本高速道路)。橋脚高は最大で34mの中空式で、オールステージングで施工し、大型クレーンなどで鉄筋の運搬、コンクリート打設を行った。

上部工の張出が進捗 手前の鉄塔は北陸電力の送電線用
 現在は上部工の張り出し架設(P5~A2)およびベントとトラス式の架設桁を用いた架設(A1~P5)が進んでいる。張り出し架設部の最大支間長は106m(P6~P7間)、最大ブロック数は11ブロック。現在は数ブロック程度張り出した状況。ベント架設部はP3~P5までの架設を終えた状況であり、冬を迎える前に剛結させる予定だ。

高圧送電線が桁上を走っているために低空頭ワーゲンを採用した
 上部工の課題は安全対策だ。一つは北陸電力の非常に高い電圧を有する送電線が張り出し架設部上空と交差する、「4mの範囲内に入るだけで感電してしまう」(同)ため、施工の際は低空頭のワーゲンを使用し、離隔を5m以上確保した。また、Ⅰ期線が非常に近接しているため、ブルーネットで現場を囲うなど、風に対する(飛散)養生もしっかりと行っていた。同橋の基本設計は八千代エンジニヤリング、上部工元請はピーエス三菱。

 最後に訪れた太田切川橋も難工事個所だ。同橋は橋長259mの鋼逆ローゼ橋(固定アーチ)でアーチ支間長は167m。桁下に施工用道路が作れないため、ケーブルクレーンによる架設を行っており、アーチ桁は最終ブロックを残してほぼ架設を終えていた(最終ブロックも翌日架設し、閉合した)。

太田切川橋

固定アーチとした


Ⅰ期線は支承構造であり、今後耐震補強が必要になる可能性もある
 同橋は架設地付近の直下を国際石油開発帝石の天然ガスパイプラインが通っている。同パイプラインが送り出す天然ガスは、東京都民全世帯の消費量に匹敵する巨大な量であり、基礎工施工中に損壊させれば大きな影響を与えてしまうため、事前の位置調査などをしっかりと行った。上部工は、A2側に33.3m、A1側に28.3mのタワーを配置してケーブルクレーンを設置、アーチ桁を斜吊して支持しながら架設を行った。鉄塔支間長は202.125m。バックステイは最大91mに達している。工期の短縮を図るため、スライド式の防雪装置を使い、冬季にも架設した。また、ここも北陸電力の鉄塔、送電線があり安全に配慮している。基本設計はパシフィックコンサルタンツ、上部工元請はJFEエンジニアリング。

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