道路構造物ジャーナルNET

宮田社長定例記者会見

首都高速道路 来年度から「i-DRAEMs」を本格導入

公開日:2016.10.26

 首都高速道路は19日、宮田年耕社長による定例会見を開催した。宮田社長は、維持管理分野において、2017年度から新たなスマートインフラ管理システム「i-DREAMs」の本格運用を開始することや、横羽線と第三京浜を繋ぐ横浜北線が17年3月に開通する見込みとなったことなどについて話した。(井手迫瑞樹)

 i-dreamは、損傷推定AIエンジンを中枢にした維持管理計画の作成支援システム。先に発表したInfraDoctorや、ICTを用いた新技術を取り込むとともに、点検データや点群情報、近赤外線情報などのセンシングデータ、構造物諸元や図面、交通量などの各種データを入力することで、損傷推定AIエンジンが学習し、劣化、損傷、補修補強候補を自動検査しその結果をエンジニアが最終判断して維持管理計画の作成支援に役立てるもの。同種のシステムの道路インフラへの導入は国内で初めて。

i-DREAMsの全体イメージ

 具体的に期待する主な効果としては、次の5点を示している。
 ①点群データを用いて設計することにより、現状の寸法や付属物の配置などにあった構造検討ができるとともに、システム上で検討資料の確認ができることで設計、施工の効率化が期待できる。②GISプラットホームから、構造物の管理に必要な全てのデータベースにアクセスすることが可能になり、当該スパンをクリックするだけで構造物の諸元や交通量、図面データ、点検補修履歴などを手軽に確認できるため、総合的な視点から診断評価することが可能、③測定した点群の相対変位により構造物の変状を抽出し、接近が難しい個所も含めて構造物の変状、浮き・剥離などを定量的に把握可能、④点群データから、任意断面のCAD図および3D解析モデルを容易に作成することが可能なため、劣化診断、予測解析を実現、⑤AIエンジンを用いて、センシングデータや交通量などの環境条件データから構造物の劣化状況や進展性を推定し、補修時期や補修工法の決定を支援することで予測保全を実現―――することなどだ。
 特に③~⑤については、将来的には「点検すべき個所の絞り込みやスクリーニングなどもAIで行うことができる。また、劣化因子を判断し損傷状況を推定するとともに補修補強工法を推定できる」(宮田社長)としている。また、CAD図面の作成などは従来8日かかっていたものを1.5日程度に短縮可能など、現場の負担を相当程度軽減することが期待できそうだ。

 開発には1億数千万円かかったとしているが、「数年でその開発費は回収できる」(土橋博保全・交通部長)としている。同社は昨年度から試験的に運用を開始、点群データの取得や差分のチェックなどを始め、今年度は一部の路線で運用を始めており、来年度から全面的な運用を開始していく。(2016年10月26日配信)

【記者の目】
 AIを用いたシステムの導入は時代の先端であり歓迎すべきことだ。構造物の老朽化により点検の頻度は増し、現場の負担は重く、それを軽減できることは非常に大きい。ただし、ジャッジは必ず人が行う。その重みは手放さないようにしなくてはならない。AIはあくまで「既存のデータの延長上にあるものであり」、特異な損傷の発見やデータの蓄積によって得た新技術の開発などはその範疇ではなかろう。そうした時に「権威」に逆らうことのできる骨太で創造性あふれる人材の育成こそ、同システムの導入による負担軽減によって作ることのできるもう一つの産物であると期待したい。

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