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インタビュー詳細

阿蘇大橋架け替え、俵山トンネルルート本復旧にも全力

熊本復興事務所 阿蘇長陽ルートの今夏の供用に尽力

国土交通省
九州地方整備局
熊本復興事務所長
辻 芳樹 氏

 国土交通省九州地方整備局熊本復興事務所はこの4月に熊本地震で被災した阿蘇大橋地区、俵山ルート、長陽ルートの道路や砂防の復旧・防災を目的として新たに設立され、約60人体制で業務を進めている。長陽ルートの応急復旧は今夏、阿蘇大橋の架け替えは平成32年度内と工期が定まっている中で、地域交通の一刻も早い復旧・復興のため尽力している。俵山ルートの橋梁群の復旧も含め、その詳細について辻芳樹所長に話を聞いた。(井手迫瑞樹)


約60人体制で大規模斜面崩壊復旧および道路復旧

 阿蘇大橋地区斜面対策は今年から有人化施工が可能に

 ――熊本復興事務所の業務概要と体制は

 辻所長 熊本復興事務所では、砂防事業と道路事業を所掌しています。砂防事業としては、阿蘇大橋地区において発生した大規模な斜面崩壊への対策工事。道路事業は、権限代行による国道325号、県道熊本高森線、村道栃の木~立野線および、国道57号の災害復旧を行います。


所管事業箇所(熊本復興事務所提供資料より、資料類について以下注釈なきは同)

 事務所の体制としては4つの課があり、事務担当、砂防担当、道路担当の副所長が各1名います。現場の技術的な部署として、砂防事業担当の工務第一課と道路事業担当の工務第二課があり、用地取得のための用地課と、契約と総務を担当する総務課があり、職員は34名です。熊本復興事務所には同時に設置された国総研の熊本地震復旧対策研究室の3名の職員もおり、事務所の期間業務職員や事業監理業務などを含めると総数は約60名となります。


熊本復興事務所庁舎(井手迫瑞樹撮影、写真について以下注釈なきは同)


 ――阿蘇大橋地区の大規模斜面崩壊の復旧状況は

 辻 阿蘇大橋で発生した土砂災害の緊急的な対策工事を昨年5月5日に国による直轄砂防災害関連緊急事業として着手しました。斜面崩壊によって、国道57号とともにJR豊肥本線や田畑の用水路、国道325号の阿蘇大橋や大橋に添架されていた南阿蘇村の水道も損失しています。これらのインフラ復旧が阿蘇地域の復興のために鍵になると思っています。


大崩落個所の復旧状況

 現地は、長さ約700m、幅は斜面中腹で約200m、国道57号では約300mの範囲が崩壊しました。その斜面対策として中腹部の土留盛土工と、頭部に残る不安定土砂の除去(ラウンディング)までが完了した昨年12月に阿蘇大橋地区復旧技術検討会の委員に、土留盛土工より下の区域では有人化施工が可能であるとの確認をいただき、1月より斜面下部の有人による作業が開始できました。今年度から新たに恒久的な斜面の安定化に向けた対策を行っていきます。


大崩落個所の復旧状況2

 現場環境は、崩壊斜面上部には多数の亀裂があり、また余震や降雨により崩落する危険性がある不安定土砂も多量に残っていたことから、監視・観測体制を整えた上で無人化施工により土留盛土工を行いました。頭部の不安定な土砂の除去には、重機をワイヤーで吊るしてモニターを見ながらオペレーターが作業を行いました。その重機は頂上部までヘリにより空輸して組み立てています。

 崩壊部一帯は「黒ボク土」といわれる火山灰が積もった脆弱な地質で、雨が降ると重機をうまく稼動させることができずに、昨年度の梅雨期の現場の稼働率は50%にも満たない状況でした。しかし、8月は休みなしのフル稼働でがんばって頂きました。

 土留盛土工と不安定土砂の除去が完了したことから、斜面下部は有人化施工で行います。斜面上部は引き続き無人化施工エリアですが、斜面上端からは有人化施工により下方に向けて施工することになります。まだまだ非常に現場環境が悪いため、有人化施工においても斜面の監視体制をしっかり整え、たとえば下から斜面頂部が霧などで見えないときは作業中止にしています。安全に工事ができる現場の環境を整えつつ、確実に行いたいと考えています。

 ――国道57号の復旧については

 辻 斜面下部の地質調査を開始しています。現在、ボーリング調査は終わりましたが、熊本側、大分側ともに大きく崩壊しており、熊本側の国道325号交差点近くは5車線のうち4車線が欠壊している状況です。大分側も路面が破損して黒川側1車線が欠壊しています。斜面崩壊部については国道57号の路面から約15m崩壊しており、その崩壊面に崩壊土砂が5m堆積している状況です。

 熊本側、大分側ともに、地震後の経過により浸食が進んでいます。斜面崩壊部を含めてこれ以上の欠壊を防ぐための工事に4月より着手したところです。

 崩壊部でのボーリング調査は6箇所で行っていますが、その6箇所以外でも、崩壊土砂を取り除いて基盤となる地盤面の強度を詳細に調査していかなければなりません。欠壊防止工事については、追加の地質調査等の結果を踏まえ具体的に検討していき技術検討会に諮り、決めていく流れになっています。

 ――現在は道路復旧よりは斜面崩壊対策が緊急の課題となりますね

 辻 阿蘇大橋地区全体について、新たな段階に入ったところです。これまでは無人化施工しかできなかったのが、有人化施工が可能となりました。復旧の足がかりがようやく見えてきたことになります。どちらが緊急と言うことではなく一つの事務所で所掌している事業ですから、一体的にしっかり進めていきたいと思っています。

 ――JR豊肥本線の復旧についても国土交通省が行うのでしょうか

  JR九州が行います。ただし、復旧について関連する事務所の復旧事業と調整を図りながら進めさせて頂きます。


阿蘇大橋 ピア高は100m近く 

 両岸の高低差は約40m 切土工も膨大

 ――阿蘇大橋は平成32年度開通予定となっています。黒川の底部に橋脚を建てて、ピア高が100m近くになるので、相応の基礎をつくらなければならず、普通に考えれば4、5年はかかると思います。これをアプローチ部分も含めて4年以内に、どのように実現するのか教えてください

 辻 落橋した元の阿蘇大橋の下流側約600mに架設し、復旧する延長は約1kmとなります。橋梁形式はPC3径間連続ラーメン箱桁橋です。右岸(57号側)と左岸(325号側)では高低差が約40mあり、橋脚高もかなり高くなります。


阿蘇大橋架替事業区間


架替事業地区周辺状況

 黒川の両岸は渓谷になっていて、底部に橋脚がありますのでそこまで下りていかなければなりません。また黒川には柱状節理によるトップリングが起きているところがあり、さらに斜面崩壊の恐れがある箇所もあるので、大規模な斜面工事を行っています。

 ――斜面工事の対策は

 辻 危険な箇所にはのり面対策を予定しています。地質調査から切土勾配を想定していますが、切土勾配以上にトップリングで全体の岩が落ちる可能性があります。また、トップリングが起きている岩盤は、岩が重なっている形になっているので硬い層を形成しています。そのため、現場の状況によっては有人機械では切土箇所に近づけない箇所もあるため無人化施工の可能性もあります。切土の段階から非常に難しい現場になっていますが、昼夜24時間施工を取り入れるなど工期短縮に努めているところです。

 ――崩落するときはどのような崩落の仕方を

 辻 亀裂が開いて落ちるイメージです。垂直に亀裂が入っているものが重なっている状態ですから、安定勾配での掘削が非常に難しくなっています。すべてそのような地質構造で、掘削して下まで到達しなければなりません。

 ――どのくらい掘るのでしょうか

 辻 切土量でいくと、右岸(57号側)約156,000㎥と左岸(325号側)約270,000㎥で合計約426,000㎥となります。


切土量は約42万6,000㎥、ピア高は100m弱に達する


 ――切土を終わらせないと、橋梁の建設に入れないということですか

 辻 大規模な斜面工事が進み進入路が確保されたのち、本体橋梁の準備工に着手することになります。


切土の進捗は5~6割

 阿蘇大橋架替え橋の基礎は深礎杭を採用

 ――斜面工事は全工程の何割程度進んでいるのですか

 辻 切土量からいくと5割から6割くらいです。工程別にいえば、切土を行って斜面を安定させないと、底部まで(基礎工の施工のため)下りていけません。次に橋脚の基礎の位置でボーリング調査を行い、支持層を決めることになります。その後、施工ということになります。


切土が進む阿蘇大橋(右岸)

 ――支持層を決めるのはいつごろになりますか

 辻 不確定要素が多く、現時点では具体的な工程を示せる段階に至っていません。

 ――基礎はどのようなものに

 辻 A2は深礎基礎で、渓谷部のPR1、2、3が大口径深礎杭を想定しています。

 ――深礎杭ということは基礎地盤としての地質はそんなに悪くないということですね

 辻 ジャストボーリングをきちんと行わなければなりませんが、現段階の調査結果では悪くはありません。まだ不確定要素があるので、ジャストボーリングの結果で基礎形状を決めていきます。

 ――橋梁本体は、PC3径間連続ラーメン橋ですね

 辻 国道325号ルート・構造に関する技術検討会で架け替え位置が決定され、橋梁形式については、近くに推定活断層があり、将来の地震でも落橋・倒壊しにくいことなどから決定したと聞いています。同形式の村道の阿蘇長陽大橋の損傷が少なかったことも評価されたようです。

 ――桁かかりで持たせるわけではなく、中央で自立する構造ですね。平成32年度内の供用というのは非常に時間的にはタイトに感じます

 辻 阿蘇大橋ルートの主要な構造物である阿蘇大橋の工事にあたって受注者からの機械の大型化など工期短縮に関わる技術提案を踏まえ、工程を精査した結果、ルート全体の目標を設定したものです。開通には、橋梁本体の完成後、引き続き舗装工事や標識設置工事等がありますし、アプローチ部の工事と一体的に進める必要があります。いずれにしても、一日も早く復旧できるよう、しっかりと取り組んでいきます。


アプローチ部は鋼橋形式

 ――橋梁本体以外の工事の進捗見通しは

 辻 橋梁本体工事は発注できましたが、土工と橋梁構造となっているアプローチ部も地元の協力を得ながら、工事に早く着手したいと考えています。現在、用地取得率は約6割となっています。アプローチ部分の橋梁下部工の工事公告は先日行いました。同部分の上部工は鋼構造です。