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インタビュー詳細

会員に対して安全・環境汚染対策を発信

橋塗協 奈良間会長インタビュー

一般社団法人 日本橋梁・鋼構造物塗装技術協会
会長
奈良間 力 氏

施工者の立場から

 首都高の安全対策に取り組む

 ――首都高速道路の話を聞かせてください。鉛中毒のこともありますが、平成27年の塗装塗替え工事火災後、各種の大きな対応を行っていますが、協会として関わっていることはありますか

 奈良間 火災事故の後に、首都高速道路さんが「首都高速道路の塗装塗替え工事による火災事故再発防止委員会」をすぐに立ち上げられて、私も委員会に参加していました。安全に関わる大きな問題ですので安全対策はきっちり行いますが、業界としてできることと、できづらいことがあることも、立場上申し上げました。


 ――それはどのようなことでしょうか

 奈良間 これまでの現場と火災事故の現場では大きな違いがいくつかあります。ひとつは、様々な前提条件から、かなりクローズドな塗装システムであったということです。橋梁塗装はこれまでは開放型でした。クローズドな空間でのリスクアセスメントをさらに充実させていく必要があります。

 今後は様々な事態、例えば火気対策や有機溶剤などの揮発の問題、空気の循環対策などを考慮していく必要があります。あわせて、作業員自体の安全対策や、安全の意識の問題にもなってくると思います。また、万一火災が発生した場合の対策としては、完全にコストを度外視したものになりますが、緊急避難路の設置なども対策のうちに入るわけです。

 防具においても、剥離剤の臭いや揮発溶剤に対して、さらに適正で安全なものに充実させていく必要があります。防具の試行をしたときに作業員のなかで作業がやりにくいという問題があったことも事実で、作業性もさらに向上させていく必要があります。

 首都高速道路の現場では、とても狭い空間で塗装を行っています。その狭いところでミラーを通して、奥までケレンができたか、できていないかを確認していますので、すべてブラストができるわけではないという実態があります。そのような現実的に難しい問題は考えていただきたい、と委員会では申し上げました。

 同時に、施工者として作業員への教育指導が十分にできていなかったことは、協会としての指導責任があることを認識していますので、安全ハンドブックの作成や講習会での指導を、首都高速道路さんと一緒にさせていただくことになりました。講習会は首都高に入るすべての人を対象に、現在約1,100名に10数回行っています。材料に関することでは、事故が発生する環境にしないための材料や方法ということで、新要領のなかに水性塗料のことが盛り込まれています。加えて、今後の安全対策をどのような仕様でやるべきかを安全部会で議論をした結果、現場管理を厳密に行うため、常設監視員と巡回監視員を設置する話が出ています。

 監視員のことはどちらかというと、消防からの話を受けての話になってきていると思います。管理のための管理となるとさらに書類が増えることになり、現場の技術者、監督者の負荷があまりにも大きくなりすぎます。現実的に時間的余裕がなくなり、現場に対する指導ができなくなる懸念は伝えました。


 ――油性塗料、溶剤形塗料から水性塗料という流れですね。水性塗料は低VOCや環境に優しいことがキーワードになっていましたが、首都高速道路さんなどでは安全というキーワードが加わっています。それだけではなく、重防食水性塗料のJIS化が目前に迫っているから、水性化は首都高速道路だけの問題ではなくっているという話も業界でなされています。重防食塗料の水性化は塗装の世界でのパラダイムシフトと言えますが、これは国交省さん、NEXCOさん、阪神高速道路さんなどほかの発注機関に波及するものなのでしょうか。そして、波及することが橋塗協さんなど施工者にとって、どの様な影響をもたらすのかをお聞きしたいのですが

 奈良間 首都高速道路さんでは、水性委員会を1年間やっていましたがその委員のほとんどが防食便覧を作成する委員になっていました。つまり、本当にそうなるかはわかりませんが、防食便覧を変え得るものになる可能性はあります。

 ただ、一般の県で、首都高速道路のような養生防護をしないでできるかといったら、技術的には疑問が残ります。都市内高速の鋼橋塗替えは、火災や避難にとってはよくないことですが、騒音対策などで防護をしなければなりません。その防護があるから、換気も良く、雨にあたって塗料が流れ出ることもないので、塗膜欠陥になりにくいのです。そうした面を防食便覧に反映するかどうかはわかりませんが。

 以上は技術的な見解から述べましたが、私のこれまでの業界の知見からいうと、水性は扱う条件設定がいろいろと難しい、ということを申し上げました。水が飛ばなければ当然乾かないし、湿度の影響もどうしても受けます。それに一般論としてダレやすく、圧膜塗装を行うにはかなり工夫が必要です。さらに材料代も高くつきます。

 一方で重防食水性塗料JIS化委員会では、平成30年5月に(JIS化を)公布予定で委員会を開いて議論を進めています。塗料メーカーとしては、これから首都高速道路で毎年約50万平方メートルを水性塗料で塗装をやるわけですから、スケールメリットによるコストダウンも見込み、経産省もJIS化を進めているのでしょう。


 ――首都高速道路さんの委員会では、橋塗協さんも施工者の立場からたくさん発言されたのでしょうね

 奈良間 首都高速道路さんの委員会でも歩掛はきちんとしてください、と伝えました。JISの委員会では塗装の歩掛のことは言えませんが、塗料代を高くしないと、業者の利益が圧迫されます、と言いました。

 ――コストの上昇は発注ペースの低減につながる可能性があります

 奈良間 結果として発注ペースを落とさざるを得なくなることや、大型発注で塗装工事として請け負いにくい規模になってくる可能性があります。そうなると、業者にかなりの体力がないと不可能です。そこを橋塗協としては注視しています。


 ――他の大型発注機関でも、鉛含有塗膜対策のマニュアル整備の遅れや発注ペースの減退が目立ちます

 奈良間 それが転じて発注者側にも技術者がいなくて、手が回らないからまとめて発注する、そのため大型工事になるというのでは困ります。技術者がいないのは国交省さんに限らず、各行政ともみんなそうです。さらに、塗装工事をわかっている技術者が発注しているのかといったら、そうではありません。まったくわかっていない人が行っていることもあります。

 橋梁をやっている塗装業者の管理者や技能者は、最初に足場ができるときに入るので、現状をよく知っています。そのため、実際に塗る人間にエッジ部は厚めにとか、この部分は錆びるとか、などの指示をしています。橋梁は30、40年持たせなければならなりません。そのため、発注者も管理しますし、橋梁塗装技能者も技術と知見を持っていますから、実際に塗る人間に指示をしています。

 例えば3種ケレンの場合、見本写真ではわからないところまで臨機応変にやっています。これは経験です。だからこそ、作業員に対してはプライドを持ちなさい、そしていい仕事をして結果を出そうと伝えています。マニュアルをつくれば、すぐにロボットのように働けるわけではないことを理解してもらうことが重要です。

 ――ありがとうございました