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インタビュー詳細

日本最大級の制震ダンパーを採用 主塔部・端部に配置

NEXCO中日本豊田保全 名港西大橋Ⅰ期線の耐震補強に着手

中日本高速道路株式会社
名古屋支社
豊田保全・サービスセンター所長
浦 敦 氏

狭隘な現場で耐震補強を施す名港西大橋(Ⅰ期線)

 ――名港西大橋(Ⅰ期線)の現況の耐震性能と耐震補強検討を具体的に述べてください

 浦 名港西大橋(Ⅰ期線)は、建設当時、学識経験者による最新の知見と最新の解析技術で設計され、当時考えられる大規模地震を考慮した構造として建設されていました。しかし、平成7年に発生した阪神・淡路大震災による構造物の甚大な被害から、国内の耐震設計基準が大きく見直され、平成23年の東日本大震災の発生に加え、東海・東南海地震の連動を考慮すると、大規模な耐震補強が必要との判断に至りました。

 まず、想定する地震動として、H24道示Ⅴに規定されるレベル2地震動(タイプⅠ・タイプⅡ)に加え、東海・東南海地震の連動を考慮した想定複合型東海地震や近隣の断層で生じうる内陸直下型地震など、東海地域で想定される最大規模の地震波を入力地震動としています。

 これらの地震波を入力して非線形動的解析により現況照査を行った結果、上部構造や主塔の耐力超過、両端橋脚のせん断耐力超過、約1.5㍍の変位による桁端衝突、支承部の耐力超過など、橋梁の各部位で照査を満足しない結果が得られました。さらに、名港西大橋の特徴として、主塔部に弾性拘束ケーブルという部材が配置されています。弾性拘束ケーブルとは、上部構造と下部構造を橋軸方向に連結するケーブルですが、このケーブルが損傷することもわかりました。なお、弾性拘束ケーブルは、温度変化に伴う水平力を両主塔に分散し、主塔に作用する水平力を緩和する目的で設置されたもので、大規模なゴム支承が普及する以前に考えられた分散支承のような挙動を期待したデバイスです。


解析モデル


 このような厳しい現況照査結果を受け、各部位で補強が必要となりますが、主塔や主桁を鋼板当て板などにより全面的に補強するのは、施工性や工費の面で無理があります。そこで、最新の制震・免震技術を駆使して地震時エネルギーの吸収を図ることで、主桁・主塔の補強量を最小化することを意図して対策検討を行いました。その結果、主塔の応力は降伏点以下に抑えることができ、主桁についても軽微な補剛だけで対処できる結果となりました。また、桁端変位も1/3程度に抑えることができ桁衝突も回避できました。

 ――具体的な補強部位は

 浦 まず、両端橋脚と主塔部に制震ダンパーを設置します。制震ダンパーは、橋軸方向には全支点に設置し、橋軸直角方向には主塔部のみ設置します。両端橋脚にはペンデル支承が設置されているため、橋軸直角方向に可動させるのは困難と判断し、固定機能の強化を図ります。具体的には、橋軸直角方向に固定する役割をもつウィンド支承の耐力アップを図るため、これを交換します。加えて、端支点で上揚力が作用した時にペンデル支承が破損するのを防止するため、アップリフト防止ケーブル(想定アップリフト 地震時:4,900kN、復旧作業時:8,900kN)を設置します。


端支点の制震ダンパー設置イメージ

 主塔部では、制震ダンパーの設置に加え、既設ピボットローラー支承を免震支承に交換します。主塔部の既設支承条件は橋軸直角方向に固定となっていますが、今回の耐震補強で免震化するとともに、想定を超える変位が生じた場合に備え、緩衝装置を併せて設置します。さらに、上下部構造を弾性的に支持する弾性拘束ケーブルの機能を廃止し、主塔側の弾性拘束ケーブルを取り付けるための突起部に、免震支承を追加で設置します。ただし、主桁に作用している圧縮力のバランスを保つため、弾性拘束ケーブルは存置します。

 また、制震・免震対策を実施したうえでも主桁の一部で圧縮耐荷力を超過する部位が残ったため、座屈防止のため形鋼などを用いて補剛します。

 ――制震ダンパーは非常に巨大ですね

 浦 川金コアテック製の荷重2,000kN、最大ストローク±650㍉のシリンダー型制震ダンパーを採用します。国内の耐震補強などで一般に使われる制震ダンパーのストロークは±350㍉程度ですから、従来の2倍程度のストロークとなり、日本最大級の制震ダンパーといえます。この点が今回の耐震補強の最大の特徴といえます。

 過去に実績のないストロークを有する制震ダンパーを採用するためには、その性能検証が極めて重要となります。本来であれば、動的解析で想定した最大応答速度(約2㍍/秒)と最大ストロークの条件で性能検証試験を実施すべきところですが、国内にこのようなスペックの実験装置が存在しないため、実挙動の再現試験は叶いませんでした。そこで、縮小試験体と一部実物大試験体を用いた検証試験を行いました。


シリンダー型制震ダンパーの構造イメージ

 シリンダー型の制震ダンパーは、ピストンの受圧面積とシリンダー内部においてピストンが通過する際の粘性体速度によって抵抗力が変化する速度依存型の制震デバイスです。このため、動的解析で設定した速度-抵抗力の関係に大きな差異が生じると、地震時挙動を誤って評価することが懸念されます。そこで、縮小試験体による試験では、オリフィス(粘性体が通過する部分)の面積を調整して最大応答速度と同等の粘性体通過速度を再現させ、その時の速度-抵抗力の関係が設計で想定した通りであることを確認しました。また、一部実物大試験体による試験では、ピストン周辺のシリンダー部全長を実物大で再現し、一次剛性の特性やダンパー内部のたわみなどにより異常が生じないことを確認しました。


航路を横切って資材運搬

 安全性確保をしっかりと

 ――当工事で一番注意しなくてはいけないことは

 浦 今回の工事は上部の路面に影響を与えることはありません。但しNEXCO中日本としては久し振りに港の中で行う作業ですので、港湾(航路)への影響、安全の確保が非常に重要です。必要な資材も150㌧吊クレーン付き1,000㌧台船で各主塔、橋脚に設置している仮受架台付近まで運び、最長36.5㍍のブームで架台上に仮起きし、それを予め足場上に設置してある吊上げジャッキで吊り上げていきます(左図参照)。上空作業は橋脚の範囲での施工ですので、周辺への影響という意味では限定的ですが、一方で資材を運搬する際に航路を横切りますので、その安全確保をしっかりやっていく必要があります。また悪天候にも耐えられる足場をしっかりと構築する必要があります。

 技術的な課題としては、現場の狭隘さです。既設のペンデル支承やウインド沓、鋼製支承は、限られたスペースの中に収まるように設置されています。そこに今回巨大な制震ダンパーなどを新たに設置するため、これらをきちんと中に収めることができるか、設計上も非常に苦労しましたし、施工上も狭隘なスペースの中で確実に施工していく必要があります。