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ポストテンション橋のグラウト未充填対策指針を9月に発刊

公益社団法人プレストレストコンクリート工学会
既設ポストテンション橋のPCグラウト問題対応委員会
委員長
京都大学大学院 
特任教授
宮川 豊章 氏

各種点検方法を明示

 適用箇所を明確にして分かりやすく 

 ――委員会で明らかになった損傷原因や損傷傾向はどのようなものか、またPCグラウトの充填性調査、PC鋼材の健全性把握手法、ポストテンション橋の健全性診断の方法など点検方法および解析、診断方法に関して今回のマニュアルで提示している非破壊、微破壊検査方法、およびフローなどについて教えてください

 宮川 微破壊ではやはり削孔調査が一番信頼できると思います。また応力解放法(スロットストレス法)なども残存プレストレス量の微破壊調査方法として示しています。

 非破壊としてはPCグラウト調査としてX線、打音振動法、広帯域超音波法、インパクトエコー法を、PC鋼材そのものでは、漏洩磁束法を紹介しています。

 どこにどういう工法を使えばよいのかという丁寧なフローがあると良いのですが、今の所、そこまでは書けていませんが、ただ使い方使う部位については指針を出すまでの短い時間に書き足す方針です。



各種非破壊検査例


 ――フローはいつ頃書き足しますか

 宮川 フローというか適用箇所を発刊までに明確にしていきたいと考えています。例えばX線であれば、I桁の横から当てて計測する、コンクリート厚が分厚いけれどPC鋼材は表面に近い所にある形式であれば広帯域超音波法を使うなど、手法に応じた使い方を明確にします。1つの非破壊検査で全てを調査することは不可能なため、複数の手法を適宜組み合わせて調査していくことを推奨します。

 ――微破壊調査方法で削孔がありますが、過去の事例では削孔したばかりに損傷が生じた例もあったと聞きます。今回の指針で採用する削孔はどれ位の径をどのような技術で開けることを念頭に置いていますか

 宮川 鉄筋やPC鋼材に当たれば機械が止まる超音波ドリルなどを念頭に置いています。通常の削孔機械では損傷を招くという留意事項は当然付けておきます。

 なお、既設ポステン橋は原則調査を推奨します。


既設ポステン橋は原則調査

 優先順位の高い個所から調査へ

 ――それはすごい決断ですね。良いことだとは思います。しかし同形式の数量を鑑みるとしり込みする機関も多そうです

 宮川 そのため、先ほどの調査で得た情報をもとに優先順位(リスク)の高いものから調査をかけていくことを想定しています。優先順位としては、①変状状況、②建設時期、③PC鋼材種別、④構造形式、⑤架橋環境、⑥PC鋼材の防錆――などを考慮しながら調査することを推奨しています。但し、健全なものは調査しなくてもよいということではいけないため、何らかの年数的歯止めは必要かと考えています。またリスクの一覧表も作成していますが、そればかり見ていても仕方ないので、指針本編の文章は変状状況に関する記述を主にして、一覧表は参考資料で示すようにしています。

 ――NEXCOなど大規模発注機関はどういう状況なのでしょうか

 宮川 NEXCOについては大々的にではありませんが、コツコツと調査や対策を行っています。また大規模更新・大規模修繕事業において、PC橋については、グラウト充填不足という課題があることを認識し、調査をしましょうという風なことがうたわれており、順次調査をしています。

 ――今回の指針は道路橋だけでなく鉄道橋にも適用されるのでしょうか

 宮川 JR各社および鉄道総研も委員として入っており、当然そうなると考えています。


耐久性向上 再注入と防水を主に対策

 耐荷性回復 外ケーブル、アウトプレートを想定

 ――PCグラウト充填不足、PC鋼材損傷時の補修・補強の提案について具体的な内容を教えてください

 宮川 まずはグラウト充填不足の有無、次いでPC鋼材の腐食状況、既設グラウトの塩分調査を行った上で、耐久性について課題がある個所は、再注入と橋面・桁端部防水を中心に対応します。要するに(上縁定着部等を通じてグラウト充填不足部を伝い鋼材表面に)水が行かなければ良いわけです。防水対策はなおざりにされがちですが、実は非常に重要です。 

 耐荷性および供用性に影響のあるPC鋼材の破断の方については、それが本当に問題のあるレベルであれば、プレストレスの導入、例えば外ケーブルやアウトプレート設置、補強材(鋼板接着やCFRP補強材)などの追加が必要です。そこまで行くのは稀であると思いますが。


(左)外ケーブル補強/(右)アウトプレートによる補強


低粘性タイプを推奨

 塩害対策には亜硝酸リチウムや塩分吸着材を混入

 ――防水は技術的には比較的容易であると思いますが、再注入はあの狭い内径の中にどのように施工していくのでしょうか

 宮川 そこで留意点として、削孔個所や材料の選定、注入時の作業方法、注入完了時の確認方法などを明確にしました。グラウト材は非常に狭い個所に入れる必要がありますので、低粘性のものを推奨しています。また、損傷状況に応じて亜硝酸リチウム混入タイプや塩分吸着材入りタイプ(いずれもグラウトに練り混ぜて使用する)を紹介しています。


PC橋のグラウト充填対策としては世界初の指針

 運用によって改善を期待

――今後、この指針を如何に実効性のあるものにするか、国交省の橋梁定期点検要領など各種要領への反映や各発注機関、土木学会などの技術資料への反映について教えていただけましたら幸いです

 宮川 グラウト充填不良により腐食し、劣化していく可能性のあるものへ体系立ててまとめたものは世界で初めてといえます。そのため試行錯誤していく必要はありますが、しかし、今後色々なところで標準的に採用されていくような調査方法や工法を紹介したつもりです。今後様々な調査、補修、補強工事を経て改善されていくことを期待します。この指針はその初版として出したと考えています。4月中には意見照会をもう一度各委員にお願いして、最終原稿を確定します。

 ――土木学会、国土交通省、NEXCOの技術資料などに反映されますか

 宮川 道路管理者にとっては参考資料として用いられていく方向になると考えます。但し、調査や補修補強には予算が必要ですので、徐々に採り入れられていく方向になると思います。

 ――上梓はいつ頃になりますか

 宮川 9月に講習会を開催する予定で、それに合わせて指針を発刊する予定です。

 ――ありがとうございました


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