道路構造物ジャーナルNET

市街部橋梁は両側拡幅、トンネルも様々な対策必要

NEXCO西日本佐世保工事 佐々IC~佐世保大塔IC間16.9kmを4車線化

西日本高速道路株式会社
九州支社
佐世保工事事務所
所長

大岡 慶巳

公開日:2022.07.13

鋼桁架設 支点部桁ブロックはトラッククレーン、中間部を吊上げ架設

 ――鋼桁部の架設はどのように行うのですか
 大岡 まず支点部の桁ブロックをトラッククレーンで架設します。桁ブロック上には吊上げ用のジャッキを仕込んでおき、夜間に中間部の桁を自走多軸台車で運んで、ジャッキで一気に吊上げます。吊上げ高は15mに達します。ブロック同士の接合は高力ボルトによる添接です。
P46-P47間の径間長が一番長い箇所(鋼床版箱桁部)は本線上に93メートルを4ブロックに分けて縦取りして、ジャッキを用いた横取り設備で横取り架設をします。

 

鋼鈑桁部はⅠ期線を踏襲してプレキャストRC床版を採用
 プレキャストPC床版部は既設床版と横締めで一体化

 ――鋼桁部もPC床版ですか
 大岡 PC桁はプレキャストPC床版、鋼箱桁は鋼床版、鈑桁部はプレキャストRC床版を採用する予定です。
 ――NEXCOでRC床版というのは珍しいですね
 大岡 Ⅰ期線を踏襲したものです。拡幅桁部のみPC床版ということはできませんし、1期線の床版を取り替えるというのはナンセンスですから、構造を統一しました。
 ――プレキャストPC床版部と既設床版との一体化はどのように行うのですか
 大岡 間詰コンクリートを打設します。既設床版に設置されている横締めPC鋼材と拡幅部のPC鋼材をカプラーで連結し、プレストレスを導入して一体化させます。
 RC床版部については、現場の地組ヤードで鋼桁と床版、さらには壁高欄をなるべく一体化させて、現場に運び、一括して吊上げ架設を行う予定です。

佐世保中央IC付近 狭いヤードに下部工を4基新設
 桁はP62側から送出し

 ――P62からA2は新たに下部工を設け、桁を架設するということですが、ここの施工方法は
 大岡 まず、下部工は佐世保中央IC内の近接部に新たに本線橋脚としてP63、P64、P65とA2を建設します。押し並べて言えることですが、地下水位がGL-5mと高いことや、GL-7~10mまで硬岩があることから、水の影響を考慮しつつ、静的破砕剤や先行掘削などを行って基礎(深礎杭)を施工しました。
さらにP65橋脚は既設のCランプ橋の高欄へ非常に近接していることから、橋脚の梁部の施工に際し、完全に下からベントを建てられず、対策として斜ベントを使用して足場を組んでいます。
A2は土壌汚染の可能性があるためその対策も行っています。

佐世保高架橋橋梁一般図(P62~A2)(拡大して見てください)



佐世保中央IC付近の下部工の施工


佐世保中央IC付近の下部工、非常に狭隘な箇所に建設されている(井手迫瑞樹撮影)


P65橋脚は既設のCランプ橋の高欄へ非常に近接している(井手迫瑞樹撮影)

 上部工は、クレーンベントと、ランプ交差箇所は送出しを採用する予定です。現在は狭いヤードの中で橋脚を施工中です。4車線部を先行建設し未供用になっている桁がP62側にありますので、それを利用して送出します。
 現在は下部工が完了した状況です。

P4~P12 Ⅰ期線は鋼開断面箱桁を通常の鋼箱桁に変更
 A1~P4は2主鈑桁 合成床版を採用

 ――同様にP12~P17は
 大岡 部分拡幅ですので、トラッククレーンの相吊り架設と門型架設機による施工を行います。この区間はPC桁です。
 ――A1~P12は
 大岡 桁形式はⅠ期線では鋼開断面箱桁構造であったのをⅡ期線では通常の鋼箱桁に変更しました。P4~P12までが6径間連続箱桁形式、A1~P4までが鋼2主連続合成鈑桁となっています。P4~P12間はⅠ期線の番号に沿っており、実際はⅠ期線と基礎が隣接しないように桁を飛ばし、橋脚の位置を変えています。
床版は全径間とも合成床版を採用する予定です。


Ⅰ期線のA1~P12区間(井手迫瑞樹撮影)

Ⅰ期線は開断面箱桁形式を採用しているが、Ⅱ期線は通常の鋼箱桁に変える予定だ(井手迫瑞樹撮影)

 ――A1~P12の進捗状況は
 大岡 下部工を発注したばかりの状況です。海上部に位置しますので、県道とⅠ期線の間の狭いスペースに作業構台を設置していく形になります。基礎は鋼管矢板井筒基礎を採用します。上部工の桁架設はまだまだ先です。
 ――基礎の深さはどの程度になりますか。また、近接施工となりますがその対策は
 大岡 基礎の深さは28mに達します。おっしゃる通り近接施工になるため、できるだけ供用線に影響を与えないよう、低空頭打設ができる工法を採用することになるであろうと考えています。

佐世保みなとIC~佐世保大塔IC間 天神山トンネルは月進80m
 防音ハウスで付近に配慮 工事用エレベーターで土運搬

 ――佐世保みなとIC~佐世保大塔IC間は
 大岡 佐世保市の工業地帯および住居地域を通過しています。延長は約4.9kmで、土工部は既に概成しており、天神山トンネル(約0.9km)および橋梁3橋(約0.8km)の施工を進めています。天神山トンネルは、昨年12月から東側坑口より掘削を開始したところで、2022年5月末現在で約240m掘進しています。
 当該トンネルの両坑口部は、土被りが薄く、民家や公共施設が多くあるため、機械掘削により、慎重に施工を実施しているところです。


天神山トンネル坑口部

 3橋の橋梁のうち1橋(白岳橋、橋長20m)は竣工済みです。残り2橋についても工事発注済であり、卸本町跨道橋、沖新高架橋とも上部工の施工を行っています。
 ――天神山トンネルは施工が難しそうですね
 大岡 供用車線との分岐がトンネルにほど近く、1日交通量3万台近い重交通路線であることから、安全面を考慮すると本線を使った運搬作業が出来ません。そのため、ダンプトラックを2台乗せることが出来る工事用エレベーターを新たに造り、直下の佐世保市道を利用させていただいて土運搬を行っています。



工事用エレベーターを新たに造った

工事用エレベーターは一度に2台のダンプを載せて上下できる(井手迫瑞樹撮影)

 施工効率は月進80mほどとなっています(昼夜2方×5日+土曜隔週昼勤)。支保工は1m~1.2mピッチとしています。民家にほど近い箇所に坑口があるため、ずり出しはベルトコンベアを使用して防音ハウスまで運び、そこで、防音ハウス内に入れたダンプトラックに積み込みを行い、ダンプトラックを工事用エレベーターで約17m下まで降ろして搬出します。


天神山トンネルの掘進状況(右下写真を除き井手迫瑞樹撮影)

ずり出しはベルトコンベアを使用して防音ハウスまで運ぶ(井手迫瑞樹撮影)

防音ハウス内に入れたダンプトラックに積み込みを行う(右写真は井手迫瑞樹撮影)

沖新高架橋 送出し長最大は80mを1夜間で施工
 A1側がサグの頂点 ジャッキダウン量は5m以下に抑えたい

 ――沖新高架橋について詳細を教えてください
 大岡 沖新高架橋は、679.9mの鋼3+4径間連続鋼床版箱桁+鋼3径間連続箱桁(PC床版)橋です。7月から架設を行う予定で、現在架設の準備中です。

沖新高架橋橋梁一般図(拡大して見てください)


沖新高架橋(井手迫瑞樹撮影)

 ――架設はどのように行う予定ですね
 大岡 架設はトラッククレーンベントと送出しの併用です。送出し最大長さは80m超(P2~P3)に達します。ベントも立てることが出来ません。一夜間で80mを送り出さなくてはいけません。
 ――この長さを一夜間で送出しですか……
 大岡 特にA1~P3間の送出しの難易度が高くなっています。理由はA1付近が頂点のサグがあるため、降下高さが高くなりジャッキダウンがかなり大変になりそうです。
ジャッキダウン量を5m以下に抑えられるようにしたいと考えています。アバットの裏を少し削ってでも対応したいと考えています。

卸本町跨道橋は鋼開断面箱桁を採用 ヤードが狭く難易度の高い工事
 旋回は極小、殆どスライドするような形で架設

 ――卸本町跨道橋は
 大岡 同橋は鋼開断面箱桁形式を採用しています。同橋については、下部工はできており、上部工も架設を完了しました。現在は合成床版を施工中です。

卸本町跨道橋橋梁一般図(拡大して見下さい)



卸本町跨道橋の夜間桁架設状況

 架設は550tATCを使って夜間架設したのですが、ここもヤードがなくて、架設する径間の橋脚の裏にクレーンを構えて、アバットから架設ベントまでのブロック長の架設を(9回に分けて)行いました。
地組ヤードがないため、支点上のブロックは、架設ヤード内のクレーンの裏で合成床版底鋼板まで地組を行い、橋脚越しにクレーンで吊って架設しています。供用線と側道に囲まれているため、旋回などを行う余地はほとんどなく、クレーンのアームをほぼ鉛直に立て、桁ブロックは架設を予定する方向を向くようにして、小さく旋回はするものの、殆どスライドするような形でアームを動かし、介錯を最小限にした形で架設を行っています。中間部の桁に関しては、側道を規制して同様にクレーン架設しますが、これも山越しの架設となります。
 沓のサイズが大きいため架設に際しては、沓座とセットボルトの位置を合わせるのにかなり時間がかかりました。


昼間に撮影した施工中の卸本町跨道橋(左2枚のみ井手迫瑞樹撮影)

 ――鋼橋の防食上の工夫は
 大岡 基本的にはC塗装系を採用しています。塗替えが難しい中央ランプとの交差部だけAl-Mg溶射を採用しています。
 ――ありがとうございました

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