道路構造物ジャーナルNET

仮設橋と橋梁メンテナンスをワンストップで提供できる体制を構築

ジェコス 野房喜幸社長インタビュー

ジェコス株式会社
代表取締役社長

野房 喜幸

公開日:2021.11.10

 ジェコスの社長に野房喜幸氏が6月に就任した。同社では、主力事業の重仮設の賃貸、工事、加工分野に加えて、仮設橋梁「PABRIS(パブリス)」を核にした仮設橋梁事業を展開するとともに、2021~2024年度中期経営計画では「インフラメンテナンス事業の成長加速」も主要施策のひとつとしている。これら事業について、どのように取り組んでいくのかを中心に、野房喜幸社長に聞いた。

どのような状況下でも業績を維持できる盤石な基盤をつくる

 ――社長としての抱負と就任後のご感想をお聞かせください
 野房社長 当社には4月に顧問という立場で入社し、6月の株主総会で社長に就任しました。入社して半年が経ちましたが、業績に加えて社員に活力のある非常に素晴らしい会社であると感じています。先人が築き上げてくれた立派な会社をしっかりと引き継ぎ、発展させていくことが私の責務です。
 さらに、馬越学前社長の時代から売上と利益は安定したものになっていますが、どのような状況下でも業績を維持できる実力が備わっているかというと、まだ少し足りない部分があると考えています。その部分を補強して、盤石な体制にするべく足場固めに注力していきます。
 ――どのようなところが活力のある会社であると感じますか
 野房 社員間の風通しが良く、業務上のさまざまなことに関して意見を交わし合える環境が整っています。コロナ禍で対面での会話は限られていますが、それを感じさせないほど、コミュニケーションを取ってくれています。また、私にも毎日、明るく声をかけてくれます。

2024年度に売上高1,400億円、経常利益100億円を目指す
 仮設橋梁事業やインフラメンテナンス事業の拡充を図る

 ――過去3年間の実績と、今年度からの中期経営計画の目標を教えてください
 野房 2018~2020年度中期経営計画の目標は、20年度において売上高1,200億円、経常利益85億円でした。さまざまな環境変化があったなかで安定した業績にはなっていますが、売上高1,102億円、経常利益65億円と、中期経営計画の目標には少し届きませんでした。好業績を上げていた建機事業がコロナの影響を受けてこの数年苦しい状況になっていることも一因であると考えています。
 その前の3年間(2015~2017年度)の売上高をみると、3年間平均で960~970億円でしたので、中長期的にみれば売上は順調に伸びていると言え、会社としては成長軌道に乗っていると考えています。


業績の推移(以下、ジェコス提供)

 2021~2024年度中期経営計画では、意欲的な高い目標を掲げていて24年度に売上高1,400億円、経常利益100億円を目指しています。20年度の実績から売上高で約300億円、経常利益で約35億円増やさなければならない高い目標達成に向けてさまざまな手を打ちながら全社一丸で目標に向かって邁進していきたいと考えています。
 ――「さまざまな手を打ちながら」とのことですが、目標達成のためにどのような取り組みを行いますか
 野房 当社では、重仮設の賃貸と工事、加工が会社を支える3本柱となっていますので、これらの事業でしっかりとした結果を出していくことが基本です。ただし、それだけでは目標の達成は難しいと思いますので、これに加えて水処理、地盤改良、本杭工事といった山留周辺の工事も一式で受注できる体制を整え、さらに仮設橋梁、インフラメンテナンナス分野の拡充、建機事業にも力を入れて、全体として売上高1,400億円を達成していきます。また、中期経営計画にも盛り込みましたが、必要であればM&Aも活用していきたいと考えています。


山留め周辺工事では一括受注できる体制を整える

 ――各部門の業績は
 野房 橋梁やインフラメンテナンス、加工は、重仮設の賃貸や工事と比べるとまだ売上規模は小さいですが、きちんと成長軌道に乗っています。建設業界の環境は、土木が公共投資も含めて非常に堅調で、建築が多少踊り場的なところがあります。

「PABRIS」関連の新商品を投入
 道路上などの仮設橋で吊り防護工を不要とする「G-PANEL」

 ――橋梁事業の取り組みでは
 野房 横河ブリッジと提携し、仮設橋梁事業に参入し展開しています。その中で、仮設橋梁「PABRIS(パブリス)」を核にしながら事業を行っており、徐々に実績を伸ばしてきています。今後も事業拡大を目指し、営業努力に加えてパブリスに絡めた新商品も投入していきます。例えば、大型重機の上載に耐えられる「PABRIS-HG」や、落下防止対策など安全性を高めるパブリス専用のオプション「G-PANEL(ガーディアン パネル)」があります。「G-PANEL」は他社にはないオンリーワンの商品となっています。これらの商品を足掛かりにして、さらに実績を伸ばしていきたいと思います。
 ――PABRISの採用事例を教えてください
 野房 国土交通省近畿地方整備局が架け替えを行っている国道9号若宮橋の迂回路用仮橋(橋長44m、幅員14m)や鉄道建設・運輸施設整備支援機構(JRTT)発注の敦賀駅高架橋の本設桁架設防護工(橋長40m、幅員16m)として採用されているほか、災害時応急橋では徳島県発注の徳島県中部山渓轟公園線災害復旧橋(橋長18m、幅員3m)などがあります。


迂回路用仮橋(左)/本設桁架設防護工(右)

災害時応急橋

 ――「PABRIS-HG」について
 野房 最大200tの重機に対応可能な仮設橋梁となります。支持杭打設時や本設部施工時を考慮した設計となっていますので、大型クレーンの作業位置制限がないことや、橋長は最大で22mを実現していることも特徴となっています。直近では、横浜市発注の末吉橋掛替工事での工事用仮橋(橋長98m、幅員16m)に採用されています。


PABRIS-HGの概要図と末吉橋掛替工事で採用された工事用仮橋

 ――「G-PANEL」は
 野房 道路上や鉄道上に仮設橋梁を架けるケースがありますが、仮設橋ですので橋面は床版ではなく覆工板となります。そのため、隙間から物が落ちる危険性があり、従来は吊り足場を設置する防護工が必須となっていました。
 G-PANELはその防護工を不要とするために開発した商品で、パブリスの桁間(下フランジ部)に設置して桁と一体化することにより、安全性の向上を図っています。落下物防止になるほか、道路や鉄道上での吊り足場設置作業がなくなることでの安全性確保や工程短縮などが実現できます。さらに、吊り防護による桁下空間が不要となることで、仮橋路面レベルの低下が可能となります。


G-PANEL。パブリスの桁間に設置することにより、従来の吊り足場は不要に

 直近では、北陸新幹線の敦賀駅付近の道路を跨ぐ箇所で大規模に採用されました。現場は冬場を中心に風が強く、従来の吊り足場は風に対する課題がありましたが、G-PANELによってそれも解決できるため、安全性に加えて高い評価をいただいております。採用実績も増えていますので、パブリスとともに提案をしていきたいと考えています。


北陸新幹線敦賀駅付近の高架橋での採用事例

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