道路構造物ジャーナルNET

道央自動車道の札幌エリアでは大規模工事を実施

NEXCO東日本 重交通路線のリニューアル工事に本格着手

東日本高速道路株式会社
取締役兼常務執行役員
管理事業本部長

髙橋 知道 氏

公開日:2021.10.12

 東日本高速道路(NEXCO東日本)は、2021~2025年度中期経営計画においてリニューアル工事として橋梁床版取替工事約200橋、橋梁修繕工事約300橋、トンネル修繕工事約50トンネルなどを実施する予定だ。今年度には同社として初めてとなる首都圏での床版取替工事に着手するなど、重交通路線でのリニューアル工事も本格化する。それらに対しての具体的な取り組みとともに、耐震補強の進捗状況や新技術の活用などについて髙橋知道取締役に聞いた。

NEXCO3社のなかで最も長い3,943kmを管理
 供用後30年以上経過した道路は全体の約5割

 ――NEXCO東日本の道路網の現状と概要からお願いします
 髙橋取締役 営業延長は3,943km(2021年3月現在)で、NEXCO3会社で比較すると最も延長が長く、管内の約6割が積雪寒冷地を通過するという特徴があります。利用台数は2020年度実績で259万台/日、料金収入は7,143億円ですが、新型コロナウイルスの影響により、利用台数、料金収入ともに減少傾向にあります。2019年度の実績では、利用台数295万台/日、料金収入8,575億円となっていました。
 個別路線では、一般国道の京葉道路、横浜新道、第三京浜道路が供用してから50年以上経過しています。高速自動車国道では、首都圏の東北自動車道、関越自動車道、東関東自動車道、札幌近郊の道央自動車道、札樽自動車道などが供用してから45年以上経過しています。


供用後45年以上経過している区間(NEXCO東日本提供。以下、注釈なき場合は同)

 このように古い路線が多くなっており、供用後30年以上経過した道路延長は、約1,870kmに達し、総延長の約5割を占めています。経年劣化の進行に加え、大型車の増加、とくに管内は積雪寒冷地が多く凍結防止剤散布量が多いなど、構造物に与える影響は非常に厳しい状況にあると言えます。


管理道路の経過年数の推移

 このような状況をふまえ、日常のメンテナンスを確実に行い安全・安心を確保しながら、高速道路の長期保全の確立に向けた大規模プロジェクトとして、高速道路リニューアルプロジェクトを推進しています。
 一方で、限られた財源のなかで高速道路整備を進めたことにより、暫定2車線区間が多数存在すること、2020年12月の関越道の大規模車両滞留発生をもたらしたような災害級の大雪が頻発していること、などの課題に加え、建設業や輸送業の担い手不足のなか、生産性向上や働き方改革も喫緊の課題となっています。

橋梁8,730橋とトンネル582チューブを管理
 RC橋が全体の約4割を占める

 ――管理する橋梁とトンネルの内訳は
 髙橋 当社では、8,730橋の橋梁と582チューブのトンネルを管理しています。
 橋種別では、RC橋が全体の43%と最も多く、PC橋が29%、鋼橋が27%となっています。橋長別では50m以下が5,382橋と62%を占め、1,001m以上は97橋です。供用年次別で見ると21年~50年が79%を占め、41年~50年は28%です。路線別では、東北自動車道の橋梁数が一番多くて23%です。


橋梁の内訳

 トンネルの工法別では、NATM工法が60%と最も多く、矢板工法18%、開削・シールド・その他が21%です。延長別では、1,001m以上が183チューブ(31%)となっており、次いで501~1,000mが131チューブ(23%)、251~500mが128チューブ(22%)です。供用年次別では、21年~30年が39%で、次いで31年~40年が29%、41年以上は3%となっています。路線別では、圏央道、北陸道、関越道、東北道がそれぞれ約10%となっています。


トンネルの内訳

橋梁は健全性Ⅲが全体の9% トンネルは同Ⅲが29%
 健全性Ⅲの橋梁 約5割で対策完了もしくは対策着手

 ――橋梁とトンネルの定期点検結果と、それに基づく対策の進捗状況を教えてください
 髙橋 2019年度までに点検が完了した8,730橋のうち、健全性Ⅲは737橋(9%)で、供用後30年経過すると健全性Ⅲが増加する傾向があります。健全性Ⅰは1,151橋(13%)、Ⅱは6,842橋(78%)です。
 健全性Ⅲの737橋のうち、2020年度末までに約5割が対策完了もしくは対策着手となっています。


橋梁の定期点検結果

 トンネルは582チューブのうち、29%にあたる167チューブが健全性Ⅲとなっており、供用後20年経過すると増加する傾向があります。健全性Ⅰは70チューブ(12%)、Ⅱは345チューブ(59%)です。健全性Ⅲの167チューブのうち、同じく約8割で対策完了もしくは対策着手となっています。


トンネルの定期点検結果

 ――部位別や路線ごとの劣化傾向について
 髙橋 健全性Ⅲの橋梁では、床版下面におけるひび割れ、浮き、剥離や、伸縮装置からの漏水による主桁端部に浮き、剥離といった劣化が多く発生しています。経年劣化のほか、東北地方の東北道や道央道、札樽道で健全性Ⅲが多いことから、凍結防止剤に含まれる塩分の浸透が劣化の大きな要因と推察されています。また、大型車の交通量が多い外環道や圏央道の鋼床版には疲労亀裂が発見されています。


損傷事例(床版下面の浮き・剥離・鉄筋露出)と対策後

損傷事例(疲労亀裂)と対策後(外環道・八潮橋)

 トンネルでは、上信越道、道央道、東北道、関越道に健全性Ⅲが多い傾向にあり、経年劣化による覆工の目地の劣化、ひび割れや剥離などが発生しています。また、地山が長期的に強度低下を示す岩種や膨張性を有する岩種である1998年以前に建設されたインバート未設置のトンネルでは路面隆起などの変状が発生しています。これらの対応として、炭素繊維シートによるトンネル覆工の補強やインバート設置などの対策を進めています。


損傷事例(左写真:山形道・笹谷トンネル/右写真:東北道・佐比内トンネル)

 ――インバート未設置のトンネルで、現在、対策が必要なトンネルは何チューブありますか。また、それらのトンネルのうち、対策が完了しているチューブ数は
 髙橋 現在、トンネルのインバート設置・覆工の補強を合わせ約60kmの対策を計画しているところです。損傷の程度に基づき計画的に対策を進めており、現在までのインバート設置完了延長は、約300mとなります。
 ――疲労亀裂の対策と最近の事例を教えてください
 髙橋 対策としては、溶接補修や当て板による補強を行っているほか、鋼床版の疲労耐久性向上を目的として、鋼床版上に鋼繊維補強コンクリート(SFRC)舗装を施工しています。


外環道・八潮橋でのSFRC舗装の施行

 直近では、外環道の芝川橋でデッキ、デッキとUリブの溶接部、横桁とUリブの溶接部などに約250箇所の亀裂が確認されています。現在、対策を検討中です。


外環道・芝川橋で確認された疲労亀裂

管内全体での凍結防止剤散布量は約13万t/年
 ASRは東北道や北陸道で確認

 ――塩害による損傷と対策は
 髙橋 当社は凍結防止剤の散布量が約13万t/年と非常に多く、橋梁の各部位に塩害が発生しています。とくに、劣化した伸縮装置からの漏水による桁端部の劣化が多いため、伸縮装置の止水材や桶の再施工のほか、橋梁排水管による導水対策を進めています。塩害により劣化したコンクリートについては、内在塩分量調査を行い、ウォータージェット(WJ)工法などにより塩分を含むコンクリートを取り除いた後に、必要に応じて亜硝酸リチウムや塩分吸着材を混入させた断面修復材による補修を行っています。
 伸縮装置からの漏水のほか、舗装からの浸透により床版上面のコンクリートの剥離やこれに起因した舗装のポットホールといった劣化も発生しています。床版の劣化は、床版下面にひび割れや遊離石灰が発生していない場合でも、上面から進行している可能性があります。これらの床版劣化は、舗装補修の際に舗装を剥がして初めて発見されることもあり、舗装面から電磁波レーダーなどによる非破壊調査により、床版上面の劣化状況を把握し、合わせて上面の目視、打音調査、塩分量調査を行い、床版取替を含め床版の補修方法を検討しています。
 ――塩害の具体的事例は
 髙橋 磐越道の小黒川橋では、桁端部および下部工にひび割れ、浮き、剥離、鉄筋露出の損傷が発生しました。これに対して、WJによる劣化部のはつりと塩分吸着効果のある断面修復材を使用するNSRV工法で桁端部の補修を行い、下部工は断面修復工を実施しています。


磐越道・小黒川橋での塩害による損傷

 ――ASRによる劣化状況とその対策事例を挙げてください
 髙橋 アルカリシリカ反応は東北道や北陸道で確認されています。アルカリ含有量試験や残存膨張量試験などの調査を実施し、コンクリートの脆弱部を取り除き、断面修復を実施するとともに、水の浸入を防ぐため表面被覆材による表面保護を実施しています。
 具体例では、東北自動車道の羽石川橋の橋台ウイング部に亀甲状のひび割れが発生しています。対策については設計中です。


東北道・羽石川橋のASRによる劣化状況

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