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多摩川に架かる日野橋では架替え事業を展開

東京都 都心部の環状線整備を重点的に推進

東京都
建設局 道路監

奥山 宏二 氏

公開日:2021.09.28

 東京都では、延長2,245km(2020年4月1日現在)の道路を管理している。道路整備では、区部・多摩地域の幹線道路ネットワークの完成に向けた事業などを推進しており、区部では臨海部と都心部を結ぶ交通・物流ネットワークの強化などに資する環状第2号線や、羽田空港やリニア中央新幹線の玄関口となる品川駅周辺で環状第4号線の整備に取り組んでいる。多摩地域では、完成から90年以上が経過し老朽化が進行し、2019年の台風19号で被災した日野橋の架替え事業に着手した。保全においては、全国に先駆けて1987年度から5年に一度の橋梁定期点検を開始するとともに、予防保全型管理への転換を図っている。これら整備事業と保全の取組みについて、奥山宏二道路監に詳細を聞いた。

管理延長は2,245km、都市計画道路では3,212kmの整備を進める

 ――東京都の地勢的特徴と道路網の現状からお願いします
 奥山道路監 東京都の面積は約2,200km2で、香川県、大阪府に次いで全国で3番目に小さいですが、関東平野南西部の内陸地と、南方洋上に分布する伊豆諸島・小笠原諸島などの島しょなど、変化に富んだ多様な地域から構成されています。西部は関東山地や多摩、狭山丘陵、東部はおおむね扇形に広がる武蔵野台地と低地で、西から東へ向かって階段状に低くなっています。


東京都の地形(東京都提供。注釈なき場合は同)

 道路の管理延長は2,245kmで、面積では41.8km2となります(2020年4月1日現在)。都内には現在、延長3,212kmの都市計画道路が計画されていますが、2019年度末時点でその完成率は64%であり、多くの未着手区間が存在しています。なお、区部の完成率は66%、多摩地域の完成率は62%となっております。


主要道路の現況図

 残る未着手の路線で事情が異なりますが、都県境や鉄道交差など関係者間の調整が必要となっている箇所、住宅密集地や高低差のある地形など、事業化までに時間を要する箇所が増えてきていることが課題になっています。
 山間部については道路事業として整備を進めていますが、防災目的の比重が大きくなり、ダブルルートの確保という観点から事業を行っています。島しょ部の道路も強靭化の必要があり、トンネルの新設などを行っていきます。
 ――事業中の路線について、目的と概要をお教えください
 奥山 区部の環状線は放射線に比べて整備が遅れていますが、都心への通過交通分散を図るため、重点的に整備を推進しています。その事例として、環状第2号線と環状第4号線の事業を紹介します。
 環状第2号線は都心部と臨海部を結ぶ大動脈で、旧築地市場の前後区間が未開通となっていて、事業を進めています。環状第4号線のうち、港南・高輪区間は、品川の旧JR車両基地をJR東日本が中心となって再開発を行っていますが、そこの鉄道を跨ぐ橋梁部を含む事業となっています。

環状第2号線本線トンネル
暫定開通区間を除く1,050mのトンネル本線部分の掘削が完了し、躯体工が概ね完了
 築地側の取付部において、躯体工事と換気所の建築・設備工事を実施中

 ――環状第2号線の事業詳細は
 奥山 環状第2号線は江東区有明から、中央区、港区を経て千代田区神田佐久間町に至る全長約14kmの都市計画道路です。これまでに、港区虎ノ門から千代田区神田佐久間町までの約8kmを外堀通りとして供用しているほか、江東区有明から豊洲までの約1kmを合計した約9kmが開通しています。
 事業中区間は、中央区晴海から港区虎ノ門までの約3.1kmですが、2014年3月には新橋から虎ノ門までの約1.4km、2018年11月には事業中区間を含む豊洲から築地までの約2.8kmが暫定開通しました。さらに、2020年3月に築地地区の地上部道路(0.43km)が開通しています。
 現在は2022年度の全線開通を目指して、本線トンネル工事などを進めています。


環状第2号線[虎ノ門~豊洲]概要図

築地虎ノ門トンネル全体図

 整備効果としては、臨海部と都心部を結ぶ交通・物流ネットワークの強化、並行する晴海通りの渋滞緩和など地域交通の円滑化、臨海地区の避難ルートの多重化による防災性の向上が期待されています。また、東京の臨海地域における新しい公共交通機関である東京BRTのルートにもなっています。
 ――事業中区間(約3.1km)の構造物と構造物比率は
 奥山 延長1,840mの築地虎ノ門トンネルと、築地大橋、勝どき陸橋、黎明大橋の橋梁3橋(合計橋長約900m)で、構造物比率は約88%となります。
 ――橋梁部は暫定開通していますね
 奥山 そうです。築地大橋(橋長245m、鋼3径間連続中路式アーチ橋)は勝鬨橋の下流に位置する新たな隅田川第一橋梁であり、特徴のある橋梁ですので紹介をさせていただきます。
 隅田川には、勝鬨橋・清洲橋・永代橋をはじめ歴史的な著名橋が多数あります。築地大橋の形式選定に当たっては、これらの橋梁群を尊重するとともに、首都東京のウォーターフロントの新たなシンボルとなるように「22世紀にも建設意思が伝わる橋」をデザインコンセプトにしました。そのコンセプトをもとに、設計では周囲と景観的に調和するよう勝鬨橋とのダブルシルエットにも配慮するとともに、アーチリブを外側に傾斜させ、かつ上横支材を設けず、橋上の開放感が得られるようにデザインしています。技術的にも鉛直力だけでなく、副次的に水平力にもアーチ効果を得られています。


築地大橋

 施工では、アーチリブがスレンダーなシルエットとなるよう高強度で極厚な鋼板を用いる必要があったため、現場溶接の品質管理を考慮して、橋梁用高降伏点鋼板(SBHS500)を採用しました。また、2014年5月の桁架設では、隅田川では初めてとなる大型起重機船による大ブロック架設を行い、工期短縮を図りました。(設計:大日本コンサルタント、上部工施工:IHIインフラシステム・川田工業JV、下部工施工:JFEエンジニアリング、日立造船、オリエンタル白石、大成建設、青木マリーン。2018年度土木学会田中賞(作品部門)受賞)
 ――築地虎ノ門トンネルの進捗状況は
 奥山 延長1,840mのうち、暫定開通区間が790mで残りの港区新橋4丁目から中央区築地5丁目までの1,050mの工事を行っています。開削工法で掘削し、躯体工は概ね完了していて、設備工事に着手しています。現在は、築地側の取付部において躯体工事と換気所の建築設備工事を進めています。


築地虎ノ門トンネル 躯体工は概ね完了して設備工事に着手

築地側取付部の施工状況(2021年2月時点)

同(2021年8月時点)

 都心部を横断する築地虎ノ門トンネル周囲には公共施設・医療施設・商業施設・学校などが立地していることから、トンネル坑口周辺部の環境保全を目的に換気設備を設置します。
 トンネル内を走行する車から発生する排気ガスが、トンネル外へ漏れ出すことを抑制するため、虎ノ門側と築地側に換気所を設け、排風機及び電気集じん機により、トンネル内の空気が坑口からそのまま漏れ出さないように外回りと内回りそれぞれで換気所内に吸い込み、きれいな空気にしてから屋外に排出する集中換気方式を採用しています。虎ノ門側は稼働中で、築地側が建設中となっています。
 ――掘削開始年月と完了年月は。また、地下交差物や埋設物が多くて、施工は大変だったと思います
 奥山 2005年4月頃に都営浅草線交差部付近から掘削を開始して、2021年3月に掘削が完了しています。
 汐留付近では首都高速八重洲線と交差し、その橋脚基礎が干渉することから、八重洲線の北行きと南行きを支える6基の橋脚と橋桁を撤去して、新しく4基の橋脚と橋桁を架け替える工事を行いました。首都高速道路に委託をして実施しましたが、八重洲線の汐留から新橋間を約 18カ月という長期間に渡って通行止めにするという大工事になりました。


首都高八重洲線交差部の工事概要(首都高速道路ホームページより)

 ――土被りはどのくらいになりますか
 奥山 汐先橋交差点では、環状第2号線本線トンネルの地下に首都高速都心環状線が供用しているため、限られた空間での施工となりました。このため、本線トンネルの土被りは最大で約1.4m、最小で約0.5mとなります。現在、本線トンネルの施工にあたり交差点部を盤上げしていますので、今後、元の高さに戻す盤下げ工事をしていきます。汐先橋交差点の街路築造工事は2023年2月に完了する予定です。


汐先橋交差点下付近の掘削状況。土被りの浅いなかでの施工となった

環状第4号線 旧海岸通りから目黒通りまでの約2.1kmを整備
 品川駅北側で新幹線と在来線、国道を跨ぐ橋梁を新設

 ――環状第4号線は
 奥山 港区港南3丁目から江東区新砂3丁目に至る延長約29.9kmの都市計画道路で、西側は山手線の内側を、東側はその外側を通る形となります。最後の未整備区間となっていた旧海岸通りから目黒通りまでの約2.1km区間(港区港南1丁目~同区白金台3丁目区間)の整備に着手しました。
 この整備完了により、環状方向の道路ネットワークが形成されて交通の円滑化が図られるとともに、品川駅周辺の東西方向の連絡が強化され、羽田・臨海部・六本木方面とのアクセス性向上が期待されています。
 事業としては、品川駅周辺地区を通過する旧海岸通りから国道1号(桜田通り)までの延長1,270mを整備する港南・高輪区間と、国道1号から目黒通りまでの延長800mを整備する白金台区間に分かれています。
 港南・高輪区間は、鉄道と国道15号(第一京浜)の上空を橋梁で結ぶ構造となっています。また、国道15号へのアクセスは、高輪地区から道路の中央部分に側道を整備することで確保しています。2019年7月に事業認可を取得し、2020年度から準備工事に着手しています。
 白金台区間は幅員25mで、車道4車線とその両側に歩道および自転車通行空間を整備するもので、2020年12月に事業認可を取得し、事業着手しました。



環状第4号線および事業区間の概要

 ――橋梁延長と上部工形式は
 奥山 延長は約640mで、全部で14径間となりますが、3径間連続と4径間連続が組み合わさった鋼床版箱桁橋となります。


橋梁概要図

 ――東海道新幹線やJR在来線、京急線を跨ぐことになりますが、その径間の工事については鉄道会社とどのような調整を進めていますか
 奥山 一般的に、鉄道交差部は鉄道事業者への施行委託で進めることが多いです。本路線においても、東海道新幹線に近接する橋脚基礎についてはJR東海と、在来線を跨ぐ区間と東海道新幹線に近接する部分の橋脚などの施工についてはJR東日本への施行委託で進めています。京急線を跨ぐ区間の施行委託など、施行方法については今後調整していきます。
 ――委託部分の進捗状況は
 奥山 JR東日本およびJR東海の委託工事はすでに受注者も決まっており、今年度から橋脚基礎工事に着手しています。


鉄道交差部の現況

 ――新幹線を含めた鉄道との近接施工で難工事となりますね。鉄道営業線への影響がない施工方法も求められると思いますが
 奥山 まず、お互いの鉄道施設に近接しますので、東京都、JR東日本およびJR東海の3者により、近接施工に係る安全管理の実施方法について確認書を締結しています。工事は、主にき電停止後の夜間作業となりますので、作業時間の制約もあります。
 ――東京都が工事を行う区間は
 奥山 東京都が施工する区間は、今お話しした鉄道事業者への委託区間以外の区間となり、具体的には、橋梁部も含めた全区間の舗装などの仕上げ工事、港南側のアプローチ部および高輪区間などです。既成市街地ですから、オフィスビルや一般交通が供用されている部分での工事となりますので、多くの関係者との合意形成がなくては進められません。
 ――港南側の状況は
 奥山 品川駅周辺では、品川駅北口駅前広場と接続する補助第334号線と、高輪ゲートウェイ駅のアクセス路となる補助第332号線が環状第4号線と橋上で接続します。旧海岸通りから補助第334・332号線の接続部まで先行して整備を行い、2027年の一部開通を目指しています。
 東京都が施工を行うアプローチ部は現在、詳細設計を進めており、2022年度は企業者工事や支障物の移設などの準備工事を行い、2023年度から下部工事に着手していく予定です。
 ――高輪側は
 奥山 高層ビルなどの用地取得を進めるとともに、今後の工事が円滑に進められるように、関係者調整や橋梁の詳細設計を進めているところです。

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