道路構造物ジャーナルNET

創造的復興の象徴としての橋梁復旧、土嚢存置した本復旧護岸を模索

八代復興事務所 100㎞の道路復旧、10橋の橋梁架替えなどを所管

国土交通省九州地方整備局
八代復興事務所
所長

徳田 浩一郎 氏

公開日:2021.07.30

 昨年7月、球磨川流域を襲った豪雨による被害は甚大なものとなった。僅か12時間で最大325mmを超える雨量が観測され、それが各支流を通じて球磨川になだれ込んだ。人吉市大橋の水位は7.25mと観測史上最高位を示し、人吉市の市街地など約1,060haが浸水、約6,280戸の家屋が被災した。地域の大神社である青井阿蘇神社では、昭和40年に起きた水害の水位を超え、1699年に起きた水害と同程度の水位に至っていたという。球磨川では2か所の堤防が決壊し、被害を広げた。球磨村渡地区では、最終的な水位は推定で相良橋の橋上さらに3mに達していたと考えられている。まさに記録ずくめである。道路・橋梁も例外ではない。両岸延長100㎞におよぶ護岸上に位置する道路が寸断され、橋梁は深水橋、坂本橋、鎌瀬橋、神瀬橋、大瀬橋、松本橋、相良橋、沖鶴橋、天狗橋、西瀬橋という10橋の道路橋が流されたほか、JR肥薩線の鉄道橋2橋、くま川鉄道の同1橋も流失した。この状況をどのように復旧・復興していくのか、地元八代市出身でもある国土交通省九州地方整備局八代復興事務所の徳田浩一郎所長に詳細を聞いた。

八代復興事務所事業概要(同事務所提供、以降注釈なきは同)

河川は本川と、9支川の復旧を担当
 支川部分140箇所のうち、90箇所を着手

 ――管内の損害状況の各地域の原因の詳細とそれを踏まえての復興状況の詳細から教えてください
 徳田所長 球磨川流域の道路橋(県管理国道および県道)は10橋流失しています。また両岸100㎞の護岸及び道路と、県管理の9つの球磨川支川が大きく損傷しており、直轄権限代行として当事務所が復旧を担っています。併せて球磨川本川の河道掘削についても施工しています。9つの権限代行の支川のうち小川が一番上流に位置しています。ここから下流域の遥拝堰までの球磨川本川及び権限代行支川の河道掘削と護岸復旧が復興事務所としての仕事になります。

流失橋梁位置図

流失橋梁一覧

 ――河川の規模感は
 徳田 なかなか言いづらいですね。小川一つとってもそうなのですが、県の権限代行区間とそれより上流域は市町村管理の河川であり、施設被害など権限代行区間と混在しているからです。当事務所管内の護岸復旧等を行う被災箇所の数で申し上げますと、9支川約140箇所の被災箇所のうち、90箇所を着手しています。河道掘削は、今回の水害で生じた堆積物を除去し、現状復旧するための掘削です。

河道内の堆積土砂撤去状況(川内川)

流失した橋梁の撤去を行う
 護岸上の道路を2車線確保

 ――現在は
 徳田 現在は流失した橋梁の上部工と下部工を撤去しています。併せて、仮橋を西瀬橋、相良橋、鎌瀬橋、坂本橋に設置し、仮復旧しました。加えて被災した護岸および道路の応急復旧を施しています。崩れた護岸を復旧することで対面1車線ずつの2車線を通せるようにしました。本復旧は、復旧護岸の計画高さが決まっていない状況です。高さが決まるまでは、とりあえず現道の高さで、2車線確保できるようにしています。

被災状況詳細(深水橋/坂本橋)

被災状況詳細(鎌瀬橋/神瀬橋)

被災状況詳細(大瀬橋/松本橋)

被災状況詳細(相良橋/沖鶴橋)

被災状況詳細(天狗橋/西瀬橋)

 ――今日、取材した土嚢は河川の護岸としての位置づけではなく?
 徳田 道路復旧の位置づけとして、2車線を確保するための土嚢を積み、道路幅員を確保したものです。河川はこれから行っていきます。

護岸復旧状況2(井手迫瑞樹撮影)
 ――土嚢の上には布製の型枠を設けてモルタル及びコンクリートを打設していますね
 徳田 土嚢が再度氾濫などにより損壊しないようにするため、仮復旧として施工しています。

布製の型枠を設けてモルタル及びコンクリートを打設
(井手迫瑞樹撮影)

架替えのための検討会を設置
 かさ上げを考慮した道路の高さを考えなくてはいけない

 ――損傷した個別の橋梁や道路の内訳とどのような構造形式(橋梁・土工とも)で直していきますか。河川改修や地域の復興計画(集落の高台移転など)と構造物の被災に対する強化も含めてお話しください
 徳田 当事務所では、球磨川を渡河している道路の橋梁10橋(深水橋、坂本橋、鎌瀬橋、神瀬橋、大瀬橋、松本橋、相良橋、沖鶴橋、天狗橋、西瀬橋)と八代市から人吉市に至る球磨川両岸道路の約100km(国道219号約50km、県道7路線約40km、市町村道7路線約10km)の復旧を権限代行として行っています。その復旧・復興に当たっては、自治体が策定する復興計画により道路計画高さ等が決まってきます。

西瀬橋の仮橋設置と通行状況(八代復興事務所提供)

西瀬橋の仮橋設置状況(井手迫瑞樹撮影)

 例えばかさ上げ事業や遊水池など、地域の具体的な復興計画が決まらないと、橋の架設位置や形式などを決めて行くことは難しいと考えています。今回のような水害が起きた状況で、橋を現在と同じ位置で復旧することがいいかどうかは分からないわけです。橋梁については架替えのために検討会を立ち上げて、位置、高さ、橋長、形式などについて有識者の皆さまから意見を出していただき、最終的には国土交通省として決定していきます。

天狗橋左岸側の農地や渡地区の被災家屋はほとんど手つかずのままだ(井手迫瑞樹撮影)

 道路についても、本復旧をどの高さで仕上げていくかというのが見えてきている状況ではありません。そのため球磨川の両岸100㎞の道路については、かさ上げなどを考慮した上で決めていくことになろうかと思います。
 ――実際、今回も取材で仮復旧した道路を走っていると、集落によっては復興が難しいのではないか? と感じる箇所もありました。高台に集落ごと移転するようなこともあれば、集落としての復旧を断念することもあると思うのです。そういうところは選択肢としてトンネルも出てくるわけですよね
 徳田 単純に護岸の高さを上げるという選択肢もあります。水害で被害を受けた集落の皆さんが、かさ上げ事業などを選択して踏みとどまるのか、移転するのかで変わってきます。そうした復興計画に基づいて事業を進めていかなくてはいけないため、道路や橋の復旧が先行して行えないジレンマがあります。
 ――河川の本復旧における改修は、今回の水害を受けてどのように行いますか
 徳田 道路の護岸として整備するものと、河川の護岸として整備するものの2種類があります。球磨川の両岸には国道219号とその対岸を走る県道および市町村道が走っており、そのうち県道部分にはさらにJR肥薩線が山側に沿って走っています。JR肥薩線の復旧の有無については、まだ決まっていませんが、線路部分も浸かっていますので、復旧するとすれば線路部分も被災しないようなかさ上げを行うでしょうし、それとどう計画面や工事面で連携していくのか、など調整が必要になってきます。

被災した線路(一勝地付近)(井手迫瑞樹撮影)

肥薩線の駅舎。左が那良口駅、右が玉泉洞駅。南阿蘇鉄道や豊肥線のように復旧することを願う
(井手迫瑞樹撮影)

上部工の半分以上が流失した球磨川第一橋梁(井手迫瑞樹撮影)

 ――阿蘇の事例(JR豊肥線復旧と国道57号復旧の並行作業)に似ていますね
 徳田 そうです。自分たちだけで決められない事柄が非常に多いといえます。

ご広告掲載についてはこちら

お問い合わせ
当サイト・弊社に関するお問い合わせ、
また更新メール登録会員のお申し込みも下記フォームよりお願い致します
お問い合わせフォーム