道路構造物ジャーナルNET

高架橋工事では下部工施工が進展

NEXCO西日本 新名神大阪東 淀川渡河部は最大支間長210mのエクストラドーズド橋

西日本高速道路株式会社
関西支社 新名神大阪東事務所
所長

森脇 清

公開日:2021.03.18

 NEXCO西日本関西支社新名神大阪東事務所は、新名神高速道路の八幡京田辺JCT・ICから淀川右岸までの延長6.3kmの整備事業を推進している。淀川渡河部では、右岸の河川敷に自然環境だけでなく歴史・文化的にも重要なヨシの群生地があり、計画段階から環境保全の取り組みを行い、橋梁形式もそれに配慮したエクストラドーズド橋を採用した。市街地は主に延長3.0kmのトンネル構造となるが、トンネル区間以外では交通量の多い交差道路部に工事車両用の仮橋を設置するなど、交通や近隣住民への影響を小さくするための対応を行っている。それらの取り組みと整備状況について、森脇清所長に聞いた。

事業延長は八幡京田辺JCT・ICから淀川右岸までの6.3km
 構造物比率は75%でトンネル48%、橋梁27%

 ――所管事業の概要からお願いします
 森脇所長 新名神高速道路は名古屋市を起点として神戸市に至る延長約174kmの高速道路で、大津JCT(仮称)~城陽JCT・IC間と八幡京田辺JCT・IC~高槻JCT・IC間の2区間が事業中となっています。
 当事務所では、八幡京田辺JCT・IC~高槻JCT・IC間延長10.7kmのうち、八幡京田辺JCT・ICから淀川右岸までの延長6.3kmの事業を担当しています。行政区分では、京都府八幡市、大阪府枚方市と高槻市にまたがります。


八幡京田辺JCT・IC~高槻JCT・IC間事業概要図(NEXCO西日本関西支社新名神大阪東事務所提供。注釈なき場合は同)

八幡京田辺JCT・IC~高槻JCT・IC間完成イメージパース

 ――構造物比率と構造物数は
 森脇 構造物比率は75%です。橋梁が6橋で延長1.7km(27%)、トンネルが1本で延長3.0km(48%)となります。土工延長は1.6km(25%)です。
 ――事業進捗率は
 森脇 用地取得率は96%、事業区間の48%を占めるトンネルが2020年末に契約され、工事着手率は100%となっています(2021年2月末現在)。
 ――事業区間の構造を教えてください
 森脇 起点側の第二京阪道路と接続する八幡京田辺JCT・IC部では、新名神高速道路は第二京阪道路の下を通り、第二京阪道路と並行する国道1号バイパスの上を通る形になります。八幡京田辺JCT・ICからは下り勾配で掘割構造となり、現地盤から路面が約30m下がったところがトンネルの東側坑口です。延長約3.0kmのトンネルで枚方市街地を抜けていき、上り勾配で西側坑口を出た後は掘割と擁壁盛土構造となります。市道楠葉中宮線の交差部からは高架橋となり、京阪本線、府道京都守口線を横過して、淀川を渡河する橋梁につながります。淀川右岸の3橋脚が一連の構造体となりますので、そこまでが事業担当区間です。


新名神大阪東事務所の工事一覧

八幡京田辺JCT・IC部の本線橋は3橋
 第二京阪道路を跨ぐランプ橋架設では1,600t吊クレーンを用いる

 ――八幡京田辺JCT・IC部の橋梁について進捗状況をお願いします
 森脇 本線橋では、起点側から大谷川橋(橋長約70m、鋼箱桁橋)、美濃山第一高架橋(橋長20.5m、PC単純プレテンション中空床版桁橋)、美濃山第二高架橋(橋長21.5m、PC単純プレテンション中空床版桁橋)の3橋があります。大谷川橋(上部工)は2021年度の発注を予定していて、送出し架設を検討しています。
 美濃山第一・第二高架橋は国道1号バイパスの下り線と上り線を跨ぐ橋梁で、国道1号バイパス上り線を跨ぐCランプ3号橋(延長20.5m、PC単純プレテンション中空床版桁橋)と本線を跨ぐKランプ橋(橋長48.0m、PRC2径間連続2主版桁橋)とともに、上部工事を2020年9月に契約して工事準備中となっています。本線橋2橋とCランプ3号橋の架設は、国道1号バイパスを通行止めにして行うことになります。


八幡京田辺JCT・IC部の橋梁

 ――架設方法は
 森脇 隣接工事とのヤードの調整を図りながら、トラッククレーン架設または支保工架設を予定しています。
 ――他のランプ橋については
 森脇 Bランプ1号橋(橋長205.5m、鋼3径間連続非合成箱桁橋)、同2号橋(橋長144.0m、鋼3径間連続非合成箱桁橋)、Cランプ2号橋(橋長44.0m、鋼単純合成箱桁橋)、同4号橋(橋長101.5m、鋼2径間連続非合成箱桁橋)の4橋を施工し、いずれも架設と床版工が2020年6月までに完了しています。
 ――第二京阪道路や国道1号バイパスと立体交差しているので、架設は大変だったのでは
 森脇 架設箇所に応じて都度、夜間通行止めをさせていただき施工していきました。本線を跨ぐことになるCランプ4号橋は供用中のランプも跨ぎますので、架設時に夜間入口閉鎖も行っています。
 第二京阪道路を跨ぐBランプ1号橋の架設では、作業半径が長くなることから橋梁架設用では日本最大級の1,600t吊クレーンを用いました。
 ――1,600t吊クレーンで架設した桁の長さと鋼重は
 森脇 Bランプ1号橋で1,600t吊クレーンを用いて架設を行ったのが4ブロック(最大ブロック長約35m)、鋼重最大約160tです。


1,600t吊クレーンによるBランプ1号橋の架設と現況

交通量の多い交差道路 ボックス推進工法で函体設置
 工事車両の進入を回避するために仮橋を設置

 ――八幡京田辺JCT・ICからトンネル東側坑口までの掘割構造の施工状況は
 森脇 延長約1kmの掘割造成を美濃山中工事と美濃山西工事の2工事で行っています。坑口の東側約200mで都市計画道路・山手幹線と交差しており、山手幹線の東側が美濃山中工事、西側が美濃山西工事の担当です。現在は、捨土掘削工を行っています。
 美濃山中工事では、山手幹線の下をボックス推進工法で本線を通すことも行っていきます。推進ボックスの延長は約56m、幅は約49mとなります。


八幡京田辺JCT・IC~山手幹線の全景

美濃山中工事(左)と美濃山西工事(右)の掘割掘削

東側坑口の施工状況

 ――ボックス推進工法というのは
 森脇 開削してボックスカルバートを設置後に埋め戻すのではなく、山手幹線の機能を生かしたまま、地中を掘削していき、函体を設置していくものです。
 ――山手幹線の切り回しをしないで施工するということですね
 森脇 そうです。山手幹線は日交通量が約2万台弱で、週末には渋滞が発生しています。切り回しをすると、施工時に渋滞が発生する可能性があるとともに、施工に時間がかかるので、本工法を採用しました。
 また、交通量の多い山手幹線へのダンプなどの工事用車両の進入を回避するために、山手幹線を横過する仮橋を設置しました。仮橋は八幡インター線に接続していて、掘割部の土砂に加えて、今後トンネル掘削で発生する土砂もこの仮橋を活用して搬出する計画です。
 ――仮橋はどのように設置したのですか。採用した工法があれば教えてください
 森脇 仮橋は、全長255m、総重量980tで、山手幹線上はトラス桁(トライアス)を採用しています。施工にあたっては、平日の夜間に山手幹線を通行止めし、550t吊クレーンでトラス桁の架設を行うなど、14夜間で行いました。


山手幹線を跨ぐ仮橋の架設/完成した仮橋(右:大柴功治撮影)

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