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100m以上の長大・特殊橋は452橋に達する

2019新春インタビュー③ 西日本高速道路四国支社 長大特殊橋の耐震補強に着手

西日本高速道路
四国支社
保全サービス事業部長

熊野 賢二

公開日:2019.01.01

 西日本高速道路四国支社は、松山道、高知道、徳島道、高松道など5路線約474kmを所管している。1,000橋余りの橋梁のうち、長大橋は4割を超え、トラスやアーチなどの特殊橋も多く、今後の耐震補強の難しさがうかがえる。長大鋼橋の中には耐候性鋼材を使用している橋梁もあり、手厚い維持管理は必須だ。一方で昨年7月の豪雨で被災した立川橋は、夏休み時期までの復旧を目指す。そうした内容について熊野賢二保全サービス事業部長に詳細を聞いた。(井手迫瑞樹)

7月豪雨では2路線5箇所が被災
 立川橋は大規模な斜面崩壊で橋桁が巻き込まれ落橋

 ――2018年7月豪雨の各路線の損傷状況、復旧状況、および橋梁やトンネルなどの損傷状況から教えてください
 熊野 7月の豪雨では2路線5箇所が被災しました。高知道では立川橋が大規模な斜面崩壊により橋桁が巻き込まれて落橋しました。また、区域外から土砂と水が沢から流れ込んできて、ブロック積みを洗掘した箇所もあります。切土、のり面でも小崩落が発生し、計4箇所が被災しました。あと1箇所は松山道で、大洲TB(料金所)の電気室が浸水して、一時使用不可能となりました。ただし、立川橋の上部工流出以外は応急復旧が完了しています。


立川橋周辺の被災前状況と被災状況(NEXCO西日本四国支社提供、以下注釈無きは同)

立川橋の復旧①(2018年11月21日、井手迫瑞樹撮影)

立川川まで流れ落ちた立川橋の桁/立川橋上部の斜面は大きく崩れている(同日、井手迫瑞樹撮影)

 ――切土、のり面の小崩落では、2010年ごろに久留米で切土の崩落があって2人亡くなられた事故がありました。できるだけ切土、のり面に水抜き穴を設置して崩落を防止することを進めています。今回のような豪雨が常態化しているなかで、区域外からの土砂、流水を防ぐために先に対策するようなことは今後、考えていきますか
 熊野 なかなか難しい話で、今後の課題になってくると思います。
 ――立川橋は来年7月の夏休み前に復旧を完了させる方針ですか
 熊野 現在、7月13日に下り側の対面通行で交通を確保しており、全面復旧(完全4車線化)を来年の夏休み前までに行う予定です。
 ――立川橋付近の斜面の補修も同時期に終わらせる予定ですか
 熊野 のり面は他機関との事業調整もありますが、鋭意進めている状況です。現在は、仮橋の設置や倒木処理などに着手した段階です。

構造物延長は橋梁が101km、トンネルが85km
 PC橋が最も長く66km、トンネルはほぼNATMが占める

 ――次に、管内のトンネルと橋梁の内訳を教えてください
 熊野 四国支社では高松自動車道(鳴門~川之江JCT、124.2km)、松山自動車道(川之江JCT~大洲、大洲北只~西予宇和、142.9km)、高知自動車道(川之江JCT~須崎東、91.9km)、徳島自動車道(川之江東JCT~徳島~鳴門、106.2km)、今治小松自動車道(いよ小松IC・JCT~今治湯ノ浦IC、13.0km)の5路線約474kmを管理しています。構造物延長は橋梁が101km、トンネルが85kmです。構造物比率は約4割に達します。橋種別では、RC橋が45km(223橋)、鋼橋が45km(254橋)、PC橋が66km(392橋)、その他が3km(191橋)です。トンネルはほぼNATMで在来工法は6トンネル(高知道の津家、堂々谷、桧生、馬瀬、繁藤、平山トンネルの一部)と、ほんの一部で0.5kmしかありません。


上部工種別および延長別、路線別橋梁一覧

 ――4車線化率は
 熊野 暫定2車線の延長では、高松道が52km、松山道が58km、高知道が34km、徳島道が106km、今治小松道が13km。合計で263kmです。
 ――供用年次別は
 熊野 10年未満が11km、10年以上が178km、20年以上が215km、30年以上が70kmです。30年以上経過した路線は松山道と高知道の結節点である川之江JCT付近です。
 ――橋梁の延長別は
 熊野 100m未満が608橋、100m以上の長大橋が452橋となっています。

橋梁損傷原因は凍結防止剤散布
 明神トンネルで特定更新工事を施工

 ――点検を進めて感じた構造物の管理状況は。橋種別、部位別の損傷傾向とその理由も教えてください
 熊野 橋梁については、桁端部のコンクリートの浮きとはく離、鉄筋腐食が主たる損傷となっています。冬季の凍結防止剤の散布の影響があると想定しています。トンネルでは、ほとんどが健全ですが、高知道の明神トンネル下り線の一部で盤ぶくれが発生しており、インバート設置の対策工事(特定更新事業)を行っている。対策延長は約100mです。
 ――明神トンネル以外での盤ぶくれの発生は
 熊野 ほかのトンネルは調査中です。高知道のトンネルを重点的に調査しています。
 ――床版、地覆、高欄の損傷は
 熊野 通行に影響のある損傷はありません。損傷は比較的に桁端部へ集中しています。
 ――判定状況は
 熊野 ⅠもしくはⅡが多くおおむね健全、予防保全段階となっています。

高知道新宮IC~大豊IC間で5橋の耐震補強に着手
 熊本地震を踏まえた対応

 ――橋梁の耐震補強の進捗状況および落橋防止装置の設置状況と2018年度の設置予定は
 熊野 橋脚の耐震補強は完了済みです。熊本地震をふまえた橋梁の耐震化事業として、2017年度から設計に着手しており、現在、高知自動車道新宮IC~大豊IC間耐震補強Ⅰ工事1件が契約に至りました。
 ――耐震性能2まで引き上げることを目的とのことですが、熊本地震をふまえて耐震補強を行う対象橋梁数は
 熊野 管内全橋を対象に、設計照査しています。

 ――2018年度に実施の橋梁は
 熊野 契約しているのは松久保橋上り線(鋼3径間連続非合成鈑桁+RC4径間連続中空床版、橋長195.5m)、同橋下り線(鋼3径間連続非合成鈑桁、橋長96.0m)、新宮橋Cランプ:RC2径間連続中空床版×4、橋長130.8m)、新宮橋Dランプ(RC2径間連続中空床版、橋長14.0m)、久保ヶ内橋 ランプ(鋼3径間連続非合成鈑桁、橋長92.5m)の5橋です。


久保ヶ内橋

松久保橋

新宮橋

 ――ロッキングピアなど対策が必要な橋梁数と進捗状況
 熊野 ロッキングピアは管内にありません。
 ――長大特殊橋の耐震補強の進捗状況と、桁高違う橋梁の架け違い部の耐震補強の進捗状況について
 熊野 現在、設計を鋭意進めています。特殊橋では高知道の大豊IC間から南国IC間にある、管内最長の鋼橋である曽我部川橋(上り705m、下り703m、鋼3+4径間連続トラス橋)の耐震補強工事を公告しました。その他は設計段階です。長大特殊橋は管内に37橋あります。PC橋最長は池田へそっ湖大橋(705m、PC5径間連続逆ランガーアーチ橋)です。


曽我部川橋

池田へそっ湖大橋

 ――並柳橋で生じた桁の損傷を教訓として架け違い部の耐震補強が行われていますが、四国支社はどのように耐震補強していきますか
 熊野 水平力の分担構造と横変位の拘束構造と落橋防止構造の追加が対策の内容です。加えて、橋脚の炭素繊維巻立てを行います。
 ――該当橋はどのような橋種ですか
 熊野 3径間連続非合成鈑桁とRC4径間連続中空床版です。

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