道路構造物ジャーナルNET

2018年わが社の経営戦略 大手ファブ トップインタビュー ⑦高田機工

橋梁事業は堅調を維持 新分野への進出推進

高田機工株式会社
代表取締役社長

寳角 正明

公開日:2018.09.24

 当NETの姉妹メディアである「週刊 鋼構造ジャーナル」では、毎年、橋梁を主事業のひとつと位置付ける鋼構造ファブリケーター各社のトップに経営戦略を訪ねるインタビュー記事を掲載している。その内容について、数回に分けて転載していく。今回は、高田機工の寳角正明社長と日本鉄塔工業の有田陽一社長の記事を掲載する。

 ――2017年度業績は
 寳角 橋梁事業では、東北・中部地方整備局からの発注量が多く、高速道路会社からの発注量は一段と減少した。このような環境で、当社の新設鋼道路橋の受注はここ4年間良好に推移し、特に昨年度は受注量1万5,000t超、受注高182億円と目標の120%を確保し、業界順位でも5位と良い結果であった。生産面でも年度繰越しの受注残がかなりあったため、生産は順調に推移した。
 一方、鉄構事業では繰越受注残が多く、和歌山工場の操業度向上や協力工場の活用で生産性を高めた。需要は首都圏一極集中がさらに進行し、再開発や東京五輪関連の大型案件の発注があったものの、当社の受注高は20億円台に留まり、ここ5年間で最低となった。
 そのなかで、昨年度の業績は完成工事高172億円、経常利益は9億8,000万円と年度当初に設定した目標を上回り、橋梁、鉄構の両事業セグメントとも黒字となった。当社は、事故の発生もなく、安全や品質面から見ても良好な年度であった。これも全社員が一丸となって努力し、知恵を出した結果と認識している。
 ――今年度の見通しは
 寳角 橋梁事業では、国土交通省と地方自治体からの発注は減少が予想され、昨年度ほどの量は期待できない。高速道路会社からの発注は増加が予想されるが、工事のロットが非常に大きい案件や4車線化が主体となり、新設鋼道路橋の受注を目指す当社にとって厳しい受注環境を想定している。
 国内の新設鋼道路橋の発注量は、昨年度を少し上回る22万t程度が予想されるなかで、受注目標は1万3,000tに設定した。
 これまでと同様に顧客のニーズに沿った技術提案の内容強化と積算精度の向上により他社との差別化を図りたい。また、評価の低かった案件の分析に基づいた対策による工事成績の向上や配置する優秀な技術者の確保に努めている。生産部門は繰越受注残が多いため、今年度は工場、現場ともにフル操業を予想している。金額が増大しつつある現場架設に対してのさらなる原価低減の対策が課題である。
 鉄構事業では、需要の首都圏一極集中が継続しており、関西を基盤とする当社にとっては輸送費などの面で不利な条件にある。また、鉄構関連の人的経営資源が極端に不足しており、一層の選別受注を指示している。受注不足分の工場稼動は橋梁関連部材の生産による補完を考えている。
 喫緊の課題は、受注済みの工事を確実に工場で生産しつつ、組織の再構築を図ることと認識している。若手社員が夢を持って働ける組織を構築したい。


東京外環自動車道 稲荷木橋北工事

 ――設備投資計画は
 寳角 建設後25年が経過した和歌山工場では、設備の老朽化や時代の要請もあり、パレット付きNCボール盤や最新型ラジアルボール盤、大型ドラフターなどを更新する。また、供用期間100年橋梁に向けた長寿命化への対応に向け、製品の品質や耐久性の向上、環境対策に有効な全天候対応型の塗装工場を新設する。そのほか、生産現場での情報共有化や業務効率向上のため、スマートフォンを有効活用する。さらに、全現場社員の空調服着用等、健康面の配慮も継続して実施していく。
 ――新事業・新製品は
 寳角 橋梁需要が減少する環境下では、新分野への進出が必要だ。橋梁関連製品として、各種制震デバイス、高架橋上下線の遊間部からの落下防止用のアルミ製塞ぎ板「カルバン」などの販売を促進する。また、従来の課題を改善した、支圧板方式による鋼ポータルラーメン橋はすでに4橋で採用されており、さらなる普及を期待している。
 ――課題と対策・戦略は
 寳角 橋梁事業では、政府調達協定対象の大規模工事(WTO物件)の受注に向け全社員が問題意識を持ち、応札対応部署の人的資源の強化や選別受注を推し進めていく。工事では、ドローンの有効活用や橋梁事業の「i-Bridge」(全工程でICT化)を進める。鉄構事業では、人材確保を最重要課題として取り組みたい。また、原価積算の精度と生産管理能力の向上を着実に実行したい。
(聞き手=佐藤直人、文中・敬称略 2018年9月24日掲載)

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