道路構造物ジャーナルNET

鋼橋技術研究会の研究から始まった

鋼橋におけるワンサイドボルトの研究①

明星大学
理工学部 総合理工学科(建築学系)
教授

鈴木 博之

公開日:2018.08.07

 鋼橋をはじめとした鋼構造物への片側施工ボルトの需要は年々増加している。狭小部や閉断面のファスニング材としては、もはや無くてはならない材料のひとつに育ったワンサイドボルト、この技術を黎明期から研究し、今はその発展系の1つであるスレッドローリングねじの開発、研究にも携わっている明星大学の鈴木博之教授に詳細を聞いた。また、近日中には同様に近畿の実橋を使って、片側施工ボルトの研究を進めている関西大学の坂野昌弘教授のインタビューも掲載予定だ。

鋼橋技術研究会の維持管理部会で調査研究
 寺田氏の蒔いた種を芽吹かせ育てる

 ――ワンサイドボルトの研究のきっかけは
 鈴木 明星大学に着任したのは22年前ですが、すぐに鋼橋技術研究会に入会させていただき、維持管理部会で活動することになりました。その時の維持管理部会長がBMCの阿部允さんで、「次期部会長をお願いします」と頼まれて、幹事の方々とテーマ選定を行いました。その結果、施工面で省力化になる片面施工に着目し、調査研究することになりました。当時はワンサイドボルトに特段の意識はありませんでした。

 ――なぜ片面施工に着目したのですか
 鈴木 この調査研究の前に私はCFRP(炭素繊維強化プラスチック)板ならびにGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)を用いた鋼部材の補強に関する研究を行っていました。CFRP、GFRPに限りませんが、FRP部材による鋼部材の補強は、両側施工がない訳ではないですけど、多くの場合片面施工です。工場で完成させたFRP部材を構造物表面に貼るにしても、あるいはFRPを直接現場で積層する作業をするにしても構造物に片面から貼る場合が多いので、その辺からの発想です。

 ――ワンサイドボルトを取り上げた経緯は
 鈴木 維持管理部会の幹事の中に宮地鉄工所(現宮地エンジニアリング)の方がいて、ワンサイドボルトの存在とその技術を有しているロブテックスファスニングシステムのことを教えてくれました。すごく新鮮で、誰もやっていない分野だし、これから補修に限りませんが狭隘部での作業が増えるから、需要は出てくる、という話になり、維持管理部会としては良いテーマだからワンサイドボルトも含めて片面施工について研究しましょうということになりました。そこでロブテックスファスニングシステムの方にも鋼橋技術研究会の維持管理部会に参加していただき、ワンサイドボルトも片面施工のテーマの一つに取り上げ、研究を始めました。

 ――当初の技術を見た感想は
 鈴木 最初の施工デモを見たときは、40年ぐらい前の横河橋梁製作所(現横河ブリッジ)の寺田博昌さんの学会発表を思い出しました。土木学会の全国大会でワンサイドボルトについて発表されたことがあって、それを聞いた記憶が呼び覚まされました。論文の内容はあまり覚えていませんが、「このボルトは片面から施工ができますが、高いですよ」とおっしゃられたことは覚えています。しかしその後、研究を継続させていなかったようで、私の知る限り、これに続く発表がなく、巡り巡って私の所に来たんだなぁ、と。寺田さんがまいた種が、長い時を経てようやく発芽しつつあるのかなと感じたので、水をやって育てることにしたわけです。
 余談ですが、寺田さんには前任校のときから大変お世話になりました。感謝、感謝ですよ。

課題は塑性変形したボルト頭の耐久性と曲面への対応

 ――維持管理部会の活動は
 鈴木 平成18年11月から調査研究をスタートして、ワンサイドボルトだけでなく広い意味での片面施工に関係する論文を集めたり、施工事例を収集したりしました。ワンサイドボルト関連では、ワンサイドボルトを用いた遅れ破壊ボルトの取り換え実験やボルト締めストップホール工法へのワンサイドボルトの適用実験等々を行いました。ロブテックスファスニングシステムも維持管理部会に参加していただいたので、充実した調査研究になりました。ロブテックスファスニングシステムは橋梁だけでなく、建築の鉄骨分野も対象としていました。建築鉄骨に用いられる角形鋼管は断面が小さくハンドホールがあけられないので、ワンサイドボルトを使って施工するという話になり、そこから土木だけでなく建築にも足を突っ込み始めました。一連の研究成果は平成22年3月に「鋼橋技術研究会:維持管理部会報告書、No.073」にまとめました。



ワンサイドボルトの施工例

 ――研究上の残された課題は
 鈴木 塑性変形したボルト頭の耐久性が気になります。弾性設計された高力ボルト継手のなかで鋼管(バルブスリーブと呼ばれる)がふにゃっとつぶれて(塑性変形して)ボルト頭になっています。こうした部位が長期的に継手に悪さをしないのか? 塑性変形していると錆びやすいとも言われています。これらの点には注視すべきかなとは考えています。
 もう一つは、これまでに我々がやってきた実験は全て平板なのですが、パイプのような曲面を有する部材に適用したりする事例も出てくると思います。確認はしていませんが、実際適用事例があったという話も耳にしました。平板と見なせるほど径が大きければ問題ないようにも思いますが、そうでない場合はこれまでの平板の成果を適用することができません。まあ、それほど事例は多くないでしょうから、今後必要になった時に検証すればよいと思っていますが、残された課題と言えば課題ですね。

 ――報告書ができてからの研究状況は
 鈴木 F11Tの高力ボルトを取り換えようとする場合、ワンサイドボルトはF8T相当の強度で設計するので、2ランク強度レベルが下がるため、追加の添接版を既存の添接板の上に一つ増設してボルト本数を増やし、数で勝負する方法を考えました。

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