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大浜高架橋の大規模耐震補強、塗装塗り替えも終盤

堺市 大和川線の2019年度末完成目指す

堺市
建設局長

中辻 益治

公開日:2018.06.11

 堺市は、2006年に政令指定都市となり、今年で13年目を迎えた。古くは会合衆に代表される商業都市と知られたが、それゆえに兵家必争の地であり、三好松永の争いや織豊政権を乗り越えたものの、その末尾たる大阪の陣で堺の街は全焼を経験した。再建された堺は、江戸時代には大和川の付け替えが行われるなどした結果、港の機能が減退したが、新しい堺港(現在の堺旧港)を切り開くなどして繁栄を維持し、今日では工業化も進み、国内有数の工業都市となっている。内陸部には仁徳天皇陵など古墳群が古代のロマンを伝え、世界的にも名高く、観光客も増加している。そうした潜在的成長を道路・交通網をどのように拡充・維持管理することにより支えようとしているのか、中辻益治建設局長に聞いた。(井手迫瑞樹)

観光資源を生かし 産業の育成を円滑にする道路作り

 ――堺市の現状と道路行政上の課題について
 中辻局長 堺市は、人口約84万人、面積約149.8㎢の市域で構成されており、2006年4月に政令指定都市に移行しました。全国で15番目、関西では4番目の政令指定都市です。
 市域は大阪府の中南西部に位置しており、西は大阪湾に面し、大阪湾東岸沿いの沖積平野とその東南に伸びる台地から構成されています。北は大和川が流れ、東は美原台地や富田林丘陵、南は南北方向に泉北丘陵が続いています。標高が最も高いのは泉北丘陵地の268.9mで、海から丘陵地に向かって穏やかに地形が変化しています。
 近年、仁徳天皇陵古墳をはじめとする百舌鳥古墳群、中世の自治都市「堺」を起源とする環濠都市区域における刃物や線香などの伝統産業など多くの観光資源を有しており、そうした観光資源を生かしながら調和する道路づくり、公園づくりを進めています。
 一方で臨海地区を中心に、シャープやシマノ、新日鉄、アマゾン、IHI、横河ブリッジなど様々な分野の大小多くの企業が立地しており、人口1人当たりの製造品出荷額等は政令市で1位(2016年工業統計調査)となっています。こうした産業の物流をより円滑にしていくことも市に課せられた道路上の課題と言えます。

道路総管理延長は約2,092km  幹線道路である国・府道は約207km

 ――政令指定都市移行後の間もないころ、取材させていただきました。当時は大阪府から時限的な応援を受け、政令指定都市移行により移管された道路インフラなどをどのように管理していくかで、非常に忙殺されていたことを思いだします。12年を経て、人の問題などはありませんか
 中辻 そうですね、06年に政令市に移行した際、補助国道や、府道を一括して堺市で管理するため、点検・維持管理や補助金関係を中心に様々なノウハウを教えていただきました。出向していただいた期間は2、3年でしたが、非常に有難く感じています。現在の状況ですが、人員はそう増やすことはできませんが、職員の質を上げることで対応しており、業務は円滑にこなすことができています。
 ――市管理の道路の現状は
 中辻 17年4月現在で、道路管理総延長は約2,092kmとなっています。そのうち政令市移行後に府から移管された国・府道は37路線約207km、その他の市道は10,521路線約1,855kmとなっています。国・府道は100%舗装されており、市道も舗装率は99.4%に達しています。道路改良率は85.8%に達しています。
 都市計画道路は90路線約271kmが都市計画決定済みで、17年度末現在でそのうち約196km(72%)が完成しています。
 ――現在進捗中の主要道路事業は
 中辻 阪神高速道路大和川線(総延長9.9km)です。同事業は堺市が延長約1.6km部分の用地取得および本体工を分担しており、事業費は堺市負担分だけでも約987億円に達します。堺市が政令指定都市に移行して初となる巨大事業です。本体工は終盤に入っており、2019年度末の完成を目指して、事業が進んでいます。
 ――大和川線のアクセスで新たに建設する道路はありますか
 中辻 大和川線は地下構造となっていますが、地上の常盤浜寺線(主要地方道大阪高石線)に接続する出入口が2箇所計画されており、今後、出入口部の工事や、現道に接続する交差点改良工事を進めていきます。

諏訪森神野線のJR阪和線交差部でアンダーパスを構築
 南花田鳳西町線で橋長約650mの跨線・跨道橋を計画

 ――市が主管する道路事業は
 中辻 主な事業中路線としては、大阪河内長野線(南余部・北野田地区)、南花田町鳳西線(金岡・白鷺地区)、諏訪森神野線、錦浜寺南町線などがあります。
 ――大阪河内長野線は
 中辻 大阪市内から松原市、堺市と経由して大阪狭山市に至る都市計画道路です。周辺には主要な南北の幹線道路が大阪狭山線しかなく、北余部・北野田周辺を中心に慢性的な交通渋滞が発生しています。大阪狭山線のバイパス道路として、整備を進めることで渋滞の解消や安全性の向上などを図る目的として、南余部・北野田地区(堺市美原区南余部~東区北野田間の約500mが事業延長)の整備を進めているものです。2013年2月から事業着手しており、2018年度末の完成を目指し工事を進めています。構造物としては、西除川渡河部に橋長24.1m、幅員32mのプレテンション式PC単純ホロー桁を計画し、昨年度に架設を完了しました。現在は舗装などの工事を進めています。


西除川橋一般図

同橋は上部工まで工事が進んでいる

 ――諏訪森神野(すわのもりこうの)線は
 中辻 市道上野芝宮下1号線と常盤浜寺線(主要地方道大阪高石線)の間を結ぶ延長1,050m区間に建設が進められている都市計画道路で、JR阪和線で分断されている交通のボトルネックを解消するために、アンダーパスで立体交差を進めている事業です。現状でもアンダーパスはあるのですが、幅員は4mと非常に幅員狭小な道路でした。それを解消するために幅員を18mに広げ、桁下を約2m掘り下げてボックスカルバートを構築し、十分な桁下空間(4.5m)も確保しようというものです。

完成イメージ

 同箇所は元々(JR側が)鉄橋形式でした。しかし、今回の工事でボックスカルバート形式に変えるため、底板や上床版厚を考慮する必要があります。そのため下を大幅に掘り下げる必要があるのです。
 具体的な施工方法としては、線路軸方向に56.5mの工事桁を順次架設、さらに線路軸直角方向に5本のかんざし桁(13.6~14.6m)を順次配置し、線路の変状を起きなくした上で、掘り下げを順次行い、基礎杭(5か所)を施工した上で、カルバートボックスを構築していくものです。現在は掘り下げが進んでいる状態です。


施工手順

 本路線は2019年度末の供用を目指して工事を進めています。


現況写真

 ――南花田鳳西町線(金岡・白鷺地区)は
 中辻 堺市の3本の環状道路整備(他路線:常盤浜寺線(主要地方道大阪高石線)、松原泉大津線(主要地方道泉大津美原線))に位置付けられている道路事業で、堺市北区と東区および中区を繋ぐ延長1,850mの道路事業です。現在は用地買収等を進めています。
 ――主要構造物は
 中辻 南海鉄道高野線と府道35号堺富田林線を跨ぐ箇所に橋長約650m、幅員16.5mの跨道・跨線橋を予定しています。橋梁形式は予備設計段階ではPC8径間連結プレテンT桁などを予定しています。全体事業費は概算で174億円に達する予定で、大和川線終了後は最大の道路事業となる予定です。


完成イメージ

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