道路構造物ジャーナルNET

桑折高架橋、阿武隈川橋など下部工が進捗

福島河川国道事務所 霊山~福島間の建設が最盛期

国土交通省
東北地方整備局
福島河川国道事務所
所長

石井 宏明

公開日:2017.11.16

新幹線および東北本線跨線部は送り出し架設
 そのほかは全てトラッククレーン+ベント架設

 ――桑折高架橋の跨線路の送り出しの長さはいかほどでしょうか。また送り出しはき電停止から始発までの間に行わなければならないと思いますが、何回に分けて施工するのですか。新幹線と在来線の間にベントが立てられるスペースがあるのか、どのような安全対策を行うのかも含めて教えてください
 石井 鋼桁の架設に関しては、東北新幹線および東北本線を跨ぐ部分のみ送り出し架設を行います。その他の径間は全てトラッククレーン+ベント架設です。


終点側から桑折高架橋全体を見る

 跨線部の架設長は75mですが、手延べ桁と併せて124mを架設します。貨物列車も含めた電車や新幹線が通過する同地の施工時間は1日当たり正味140分しかありません。この時間内に必要な長さを架設するため、エンドレスジャッキを使って2日間で施工を終え、別日にジャッキダウンさせる予定です。施工では安全かつ迅速な高い技術が要求されることから、工事は軌道管理者であるJR東日本に委託しています。架設は来年夏ごろを予定しています。

阿武隈川橋の河川内橋脚基礎はニューマチックケーソンを採用
 ピア高は20m程度

 ――阿武隈川橋も相当な長さであり、阿武隈川を渡河する橋梁ですが、特徴は
 石井 河川内のP1、P2がニューマチックケーソンの構造になっています。今年の非出水期に施工する予定ですが、施工期間が決まっていることから、工程管理や安全管理に気をつける必要があります。ケーソンの規模はP1(W12m・L18m・H11m)、P2(W12m・L15m・H12m)の小判型です。ピア高は20m程度となっています。現在は、現地調査などを行っています。


阿武隈川橋構造概要図

 ――他、特徴的な橋梁は
 石井 完成した橋梁ですが月舘高架橋があります。同橋は橋長462mのPC6径間連続ラーメン箱桁橋です。上部工はワーゲンによる張り出し架設を行いました。また、今後の技術革新や維持管理に役立てるために、PCケーブルに光ファイバーを設置し、PCケーブルの張力を確認するシステムを導入しています。
 また生コンのポンプ圧送に伴うスランプ量を8→15cmに変更、温度拘束ひび割れ抑制のためのセメント種類を早強→普通コンクリートに変更し、膨張材の添加を実施しています。

東北中央道(福島~米沢北)が11月4日に開通
 県北地域に新しい東西高速道路が誕生

 ――次に東北中央自動車道(福島~米沢北)事業の進捗状況は
 石井 東北縦貫道福島JCTから山形県米沢市の米沢南陽道路米沢北ICを結ぶ事業です。全長は37kmで、福島JCT~栗子川橋間20.6kmは当事務所、栗子川橋~米沢北IC間16.4kmを山形河川国道事務所が担当しています。
 そのうち一部、東北縦貫道福島JCTから大笹生ICまでの1.4kmを昨年9月11日に開通しました。残りの35.6kmも11月4日に開通する予定です(取材は9月に実施)。日本道路公団時代の平成10年から事業着手しており、約20年の整備を経て今年度全線供用となり、福島県の県北地域に新たに東西の高速道路ができることになります。今年度は(相馬福島道路の一部と併せて)合計52kmの事業区間が一挙に開通する予定ですが、一事務所の同一年度でこれだけの延長が開通するのは極めて珍しいことです。当事務所はもちろん、福島県北地域の道路網にとって大きな節目の年になります。
 ――構造物の延長比は
 石井 栗子峠を越える区間ですので、構造物は延長比約50%と高くなっています。栗子トンネルから福島間に限定すると構造物比率は約8割に達します。また、山岳ルートであることから、長大橋も多くなっています。

栗子トンネルは国内5位の8,972m
 施工時の湧水は最大600㎥/時に達したことも

 ――栗子トンネルの延長は8,972m(道路トンネルでは国内5位の長さ)に達しますが、どのように掘削したのですか
 石井 NATM工法を採用しました。NEXCOから新直轄事業として引き継いだ段階で、避難坑(これも延長は8,990mに達する)一部はNEXCOがシールド工で施工していましが、当事務所で発注する段階では、比較検討して、全てNATM工法としました。


栗子トンネルの湧水状況

 ――湧水は生じませんでしたか
 石井 福島側はかなり湧水がありまして、約600㎥/時に達しました。ただ、避難坑を掘っていますので、そこで地質は把握しており適切な施工ができました。また突発湧水もも一部で生じました。とはいっても大規模な工事の見直しに到るものではありませんでした。また、その湧水は福島側の無散水消雪施設の熱源に利用しております。
 ――補助工法などは用いなかったのですか
 石井 その他には、掘削断面の変状対策として、縫い返し工法を実施しました。
 ――トンネルの換気はどのように行いますか
 石井 中間部に延長2.6kmにおよぶ換気坑1本を建設すると伴に、ジェットファン26基を設置しています。換気坑は斜坑で現道の国道13号東栗子トンネル福島側脇に開口部を設けています。
 ――(避難坑は)コンクリート舗装を施しているのですか
 石井 そうです。救急車(消防)や警察のパトカーも避難坑を通行できることを、実際に車両が入り、確認しています。


避難坑の救急車走行確認状況

福島西道路(Ⅱ期)は伏拝交差点などの渋滞緩和狙う
 構造物はトンネル1本、橋梁3橋

 ――国道13号福島西道路(Ⅱ期)事業については
 石井 福島市の南側、松川町浅川~大森までの延長6.3kmとなります。現道は4号と13号および115号が交差する箇所や伏拝交差点などで渋滞が起きています。平成22年3月にはⅠ期工事区間7.7kmを供用しました。Ⅱ期事業はその延伸部を施工しています。
 ――伏拝交差点の勾配が激しいという話がありましたが、それを避ける形になるのでしょうか
 石井 黒岩交差点から伏拝交差点の間が、縦断勾配5%ときつい箇所ですので、その交通量を転換して、安全にしていくことを狙っています。
 ――勾配も緩やかになる形ですか
 石井 縦断勾配は3%とゆるやかになります。また、事業区間の延長は6.3kmでトンネル1本、橋梁4橋です。その内、トンネルは約1.8kmに達します。事業は平成24年度から始まったばかりで、今年度から工事に着手しました。
 ――国道4号伊達拡幅事業の概要と進捗状況は
 石井 同じく福島市から北側の伊達市や国見町区間の交通渋滞緩和を図るため、現道の4車線化を進めている事業です。全長9.1kmのうち、5.78kmは供用しており、残る3.32kmの工事を進めています。
 ――残区間の現状は
 石井 部分的に現道拡幅工事を行っている状態です。現道拡幅なのでできるところから、進めています。
 ――3.3km区間での構造物は
 石井 短い橋が3橋あります。

 ――管内で困難な施工が予想される箇所はどこですか
 石井 やはり相馬福島道路の霊山~福島間です。平成25年5月に事業化されましたが、復興・創生期間の平成32年度に終了するという制約があるので工程管理を厳密にやり期間内に事業を完了させなければなりません。路線内は、(仮称)福島北JCT付近は市街地で東北縦貫道を跨ぎ、桑折高架橋は東北新幹線や東北本線を跨ぎます。また国道4号(国道4号こ道橋、橋長41.5m、鋼単純非合成鈑桁)や国道399号(伏黒こ道橋、33m、PC単純ポステンコンポ橋)、阿武隈急行(上保原こ線橋、84.5m、鋼2径間連続非合成鈑桁橋)と交差する箇所もあり、河川との交差も阿武隈川をはじめ5箇所あります。霊山付近は山岳部であることからトンネルを計画しています。このように構造物比率が非常に高いだけではなく、重要な交差施設が沢山あることから、協議や設計・工事を適切かつ迅速に行なう必要があります。


桑折高架橋の進捗状況③ 馬場(東向田地区)/橋本地区

 また、伊達市街地では盛土構造物が多くを占めますが、これは霊山のトンネルや切土で生じる約100万㎥に達する発生土を山岳部から平地部に搬送する必要があります。本来は建設した本線を使って運べばいいのですが、工程上どうしても並行して作業する必要があります。その過程で街の中をダンプが毎日数百台走ります。地域市民への周知および配慮も適切に行わなくてはなりません。
 ――盛土部分の用地取得は全部終わっていますか
 石井 ほぼ完了しています。事業着手の遅い早いはありますが、土を持っていくためには用地取得も同じ形で進めないとなりません。そこが事業工程の難しさです。
 ――そこで事業促進PPPを活用するということですね
 石井 そうです。
 ――南三陸や三陸で行っているものですよね
 石井 同じです。
 ――PPPはどのようなスタッフを何人入れているのでしょうか
 石井 用地業務2人、測量・調査設計業務2人、事業管理・工程管理業務2人、施工計画・施工監理業務4人の計10人です。また、工事推進連絡協議会を伊達市や桑折町とともに組織しており、工事内容を事前に周知しながら、要望を聞きそれを反映しながら工事を進めていきます。

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