道路構造物ジャーナルNET

塩害を考慮して新設、保全対策

北部国道 名護東道路など5事業が進捗

内閣府沖縄総合事務局
北部国道事務所
所長

喜舎場 正秀

公開日:2016.07.28

鋼橋は添接部およびエッジ部の腐食
 コンクリート橋は塩分総量規制前に供用した橋梁で損傷

 ――点検を進めてみての管内各路線の劣化傾向についてお答えください
 喜舎場 沖縄は四方を海に囲まれ、夏は台風の常襲地、冬は強い北西の季節風と厳しい塩害環境にあり道路構造物は、塩害による劣化損傷が著しいのが特徴です。北部管内の橋梁においても、大部分が海岸に近い厳しい環境下にあり主に塩害によるものです。塩害原因は飛来塩分によるものですが、一部塩分総量規制前の海砂使用が原因のものもあります。塩害以外では、ごく一部分にアルカリ骨材反応による損傷もありますが、原因については不明です。
 ――具体的には
 喜舎場 鋼橋から申し上げますと、主な損傷は鋼桁の添接ボルトの腐食です。付着した飛来塩分が降雨により洗い流されにくい部位であること、また鋼材のエッジ部は塗装厚が薄くなりやすいことなどが要因と考えられます。
 PC橋は、主な損傷は桁下フランジでのひび割れ、浮きがあります。海側からの飛来塩分が桁下を巻き込んで付着し、降雨でも洗い流れにくいことが原因と考えられます。また、コンクリート塩分量規制前(1986年以前)に建設された橋梁も35橋(全体の27%)あり、内在塩分が要因となるひび割れ、浮きが生じていると考えられます。加えて、ASRが発生している橋梁も確認されています。
 RC橋は、主な損傷は桁、地覆、橋台のひび割れ、浮き、剥離・鉄筋露出です。主な要因は塩害です。飛来塩分に加えて、コンクリート塩分量規制前に建設された橋梁も6橋あり、内在塩分が要因となるひび割れ、浮きが生じています。
 国道58号の大宜味村内にある平南橋については、塩害の損傷がかなり厳しい状況にあります。
――具体的な状況は
 喜舎場 国道58号大宜味村内の平南川河口部に架かっている8径間連続ポステンT桁橋で昭和53年に供用されました。
 損傷状況は、主桁ではコンクリートの剥落及びシース管が露出している箇所があり、床版はコンクリートの剥落及び鉄筋露出がみられます。また橋台ではパラペット部に鉄筋露出がみられる状況です。架け替えも選択肢の1つと考えLCCを考慮した対策を検討いたします。




塩害で損傷している平南橋は補修を重ねている(上写真6枚とも同橋、2010年撮影)

 ――古い時代のPC橋(とりわけポステンT桁)は鋼製シース内径の狭さからグラウト充填が不十分であることに加え、定着方式が上縁定着のため、そこから塩分を含んだ水が浸透し深刻な損傷を招く、ということも生じています。北部国道管内ではそうした損傷が平南橋以外でも生じていないか、教えてください
 喜舎場 北部国道管内では、そういった損傷事例はありません。
 ――NEXCO西日本は、沖縄海洋博覧会(1975-76年開催)に間に合わせるため突貫工事で供用した区間(沖縄道許田IC~金武IC間)について、現在コンクリート桁の架け替えやグレーチング床版のPC床版への取替を進めています。北部国道においても塩分総量規制前に供用されたPC橋については架け替えという判断はしないのでしょうか
 喜舎場 長期的に見れば架け替えざるを得ないと考えます。最近でも国道329号東港(あがりみなと)橋(金武町屋嘉地)については、昭和61年に供用したPC橋ですが、塩害が著しいため上下部工一式を架け替えています(橋長10.4㍍、プレテン単純床版橋)。

トンネル 名護東道路の1号トンネルで漏水
 鋼製ブラケット溶接不良 6橋で確認し今年度内の対策完了目指す

 ――トンネルについては
 喜舎場 在来工法から申しますと、主な損傷は天端およびアーチ部の浮き、剥落で材質劣化が主原因と考えられます。NATMに関しては名護東道路の1号トンネルで漏水が見られます。降雨による水位の上昇や裏面排水工の詰まりが原因と考えられます。
 ――耐震補強および落橋防止装置の設置状況は
 喜舎場 全て完了しています。
 ――落橋防止装置の鋼製ブラケットの溶接不良についてその有無は
 喜舎場 残念ながら6橋で確認されました。今年度内には対策を完了させたいと考えています。
 ――橋梁の長寿命化修繕計画に基づいた対策の進捗状況は
 喜舎場 管内の要対策箇所数は16橋です。うち27年度までに11橋で対策完了しています。今年度は2橋で対策を予定しており、29年度以降に残り3橋を計画しています。
 ――経年劣化や疲労に伴う損傷の有無はまた、床版の損傷原因として防水工を施工していないことが散見されるが、その有無は把握しているか
 喜舎場 経年劣化や疲労に伴う損傷はありません。管内の主な損傷は後でも申し上げますが塩害、ASRによるものです。
 床版については著しい劣化が見られていないため、概ね施工済みとみています。今後は損傷が発生した箇所について詳細調査を行い、防水工を検討していきます。
 ――塩害、ASRによる損傷の具体的状況と、対策について
 喜舎場 管内ではこれまで54橋で塩害を確認しており、42橋で延命のための補修を行っています。損傷部位は桁下フランジに集中しており、浮き、ひび割れ、剥離、鉄筋露出を確認しています。
 過年度には、国道58号の名嘉真橋で塩害補修を行っています。劣化部位は主桁・横桁・床版・橋台と多岐にわたり、浮き、剥離、ひび割れを確認しています。なおひび割れ注入、充填工や断面修復工などのほか、コンクリート表面にシラン系表面含浸材を塗布することによる対策も施しています。



名嘉真橋で行った塩害補修(断面修復工の状況)

塩屋大橋で施工したシラン系表面含浸工(左)とASRによる損傷が顕著な国道58号柳橋(右)

 ASRは7橋で確認しました。主に主桁、橋台に集中しており、国道58号柳橋では最大で橋台表面積の8割を占めていることを確認しています。
 過年度の対策としては、国道58号柳橋(下り線)において、ひび割れ注入・充填工、断面修復工、シラン系含浸材をコンクリート表面に塗布することによる対策工を施しました。

ご広告掲載についてはこちら

お問い合わせ
当サイト・弊社に関するお問い合わせ、
また更新メール登録会員のお申し込みも下記フォームよりお願い致します
お問い合わせフォーム