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高岡環状道路 2.6㌔の高架化に着手

富山県 ASRや塩害による損傷橋を一部架替

富山県
土木部 道路課長

水口 功

公開日:2015.12.17

 富山県は黒部川、片貝川、早月川、常願寺川、神通川、庄川、小矢部川の七大河川が県を縦断するため、道路や鉄道の設置において橋梁は必須である。しかし、特にコンクリート構造物においては常願寺川産の川砂利をはじめとした反応性骨材によりASRによる劣化が多く起きており、保全上の課題になっている。そうした道路構造物の保全上の課題や新設橋、架替橋の話題について富山県土木部の水口功道路課長に聞いた。(井手迫瑞樹)

全国トップレベルの住みよい県
 北陸新幹線開通により利便性がさらに向上

 ――富山県の地勢的特徴と道路網の現状について
 水口課長 富山県は、明治16年に石川県から分県して誕生し、今年で132年を迎えています。以来、この分県の契機となった治水事業や砂防事業が積極的に進められるとともに、道路や港湾など様々な施設を整えてきました。その結果、現在では全国トップレベルの「住みよい県」という評価をいただいています。
 地理的には、本州日本海側のほぼ中央部に位置し、東京、大阪、名古屋の3大都市圏からほぼ等距離にあります。県土は、蝶々が羽を開いたような形で、東西約90㌔、南北約76㌔、面積は約4,247平方㌔と国土の約1%を占めており、山々と海に囲まれたまとまりの良い地形です。
 一方、3,000㍍級の山々が連なる立山連峰と、ここに源を発する黒部川や常願寺川などの急流河川、その下流に広がる富山平野、日本海側最大の外洋性湾で海底谷が発達した水深1,000㍍を超える富山湾に至るまで、高低差4,000㍍のダイナミックで変化に富んだ地形を有しています。
 富山県の人口は平成27年8月現在、約107万人であり、その多くは県都富山市と高岡市、その間に位置する射水市に70万人あまりと約65%がこのエリアに集中しています。
 本県では、去る3月14日に富山県民の半世紀にわたる悲願であった北陸新幹線が開業し、県内には現駅併設の富山駅、新駅となる黒部宇奈月温泉駅及び新高岡駅が設けられ、富山駅から東京まで最短2時間あまりで結ばれました。3大都市圏からほぼ等距離に位置しています。また、本州日本海側のほぼ中央に位置することから、環日本海・アジアのゲートウェイとして、本県からアジア諸国・極東ロシア・ヨーロッパへの環日本海の拠点となる「富山きときと空港」と「伏木富山港」があります。こうした利便性を生かすためにも道路整備は益々必要です。
 ――富山県は米どころ、転じて酒どころ、富山湾の魚、ほか伝統的な製薬業があり、戦後は工業立地も進み有数の工業県でもあります
 水口 黒部川や常願寺川の伏流水は清水として有名で、全国的に名水として知られおり酒造に適しています。特に常願寺川から取水している富山市の上水道水はモンドセレクションで金賞を受賞しているほどです。またミネラル分豊富な水が富山湾に流れ込むため、富山湾の特殊性とも相まって(固有冷水と日本海の暖流がぶつかる)水産資源も豊富です。一方で大正期から県営の水力発電による安い売電を売りにして産業の振興誘致を図っており、アルミや木材関係の工業も発達しているなど日本海側屈指の工業県でもあります。

自動車利用率は72.2%の高比率
 東海北陸自動車道の4車線化を熱望

 ――その道路整備状況は
 水口 平成26年4月1日現在の県内の国道と県道の状況は、一般国道が11路線(総延長519㌔、改良率95.8%)、県道が278路線(総延長2,158㌔、改良率87.1%)です。うち県管理道路は286路線(総延長2,459㌔、改良率87.8%)となっています。
 本県の1世帯あたり自家用車保有台数は1.71台(25年、全国1.07台)と全国2位の高い水準であり、県民が移動の際に用いる代表交通手段は、自動車が72.2%(11~14、富山高岡広域都市圏第3回パーソントリップ調査)と、全国と比べても自動車利用の比率が高いことが裏付けられています。
 ――具体的な進捗を高規格幹線道路から
 水口 本県の道路網の骨格となる高規格幹線道路網は、日本海側を縦貫する北陸自動車道、中京圏と結ぶ東海北陸自動車道及び能登半島に伸びる能越自動車道で構成され、小矢部砺波JCTで接続しています。うち北陸自動車道は、平成12年に全線4車線で供用されています。能越自動車道についても暫定2車線ではありますが、平成27年2月末に県内区間6.0㌔を含む七尾ICまでの区間について開通し、県内区間43.9㌔が全通しました。能越道では、追加ICとして氷見南IC(仮称)が今年度中の供用を目指し、国等により工事が進められています。
 一方、東海北陸自動車道は(一宮JCTから本県の小矢部砺波JCT間、延長約185㌔)、平成20年7月に全線開通しましたが、県内区間33㌔を含む岐阜県内の白鳥IC~県内の小矢部砺波JCTまでの約108㌔が暫定2車線となっています。
 岐阜県内の白鳥IC~飛騨清見IC間の約41㌔は平成30年度完成を目標に4車線化が進められていますが、当県としては、県内区間を含む残部の早期の全線4車線化を国に要望しています。
 東海北陸自動車道の県内区間においては全線開通時に比べて、1日あたりの交通量が約2倍(3,600台→7,800台)に大幅に増加しています。また、3月の北陸新幹線開業や能越自動車道の七尾までの開通、南砺及び高岡砺波スマートICの供用、さらに、7月のアウトレットモール(小矢部市、北陸初、年間350万人の来場が見込まれる)の開業、伏木富山港の日本海側の総合的拠点港への選定、富山空港の国際路線の充実などもあり、今後、さらなる交通量の増加が見込まれます(1日当たり交通量は8月前年比約900台、9月約1300台とそれぞれ増加)。また、昨年6月に閣議決定された「国土強靭化基本計画」で、多重性・代替性を高めるため日本海側と太平洋側の連携等が盛り込まれており、東海北陸自動車道の重要性は一層増しています。
 また、スマートICについては、高速道路の有効活用や地域活性化を図るために導入が進められており、県内では、これまでに入善、流杉の2箇所を供用していました。今年3月には、北陸自動車道の高岡砺波スマートIC及び東海北陸自動車道の南砺スマートICを新たに供用しました。また、今年度に入り、国において、「準備段階調査」箇所として、北陸自動車道(上市町)が選定されたところです。

高岡環状道路2.6㌔を本線高架化

 ――地域高規格道路は
 水口 県内の地域高規格道路は現在、富山高山連絡道路、富山高岡連絡道路及び富山外郭環状道路、高岡環状道路の4路線が指定され、各路線で整備が進められています。
 富山高山連絡道路は、本県と岐阜県飛騨高山地域を結ぶ路線です。中部縦貫自動車道と接続し長野県松本地域を経由して首都圏とを結ぶもので、現在、直轄事業で猪谷楡原道路の整備が進められています。さらに昨年度、大沢野富山南道路が新規事業化されました。
 また、本県の大動脈である国道8号では、富山外郭環状道路の豊田新屋立体及び富山高岡連絡道路の坂東立体が直轄事業で推進されており、坂東立体は今年度中に本線が供用される予定です。
 富山県では、神通川や庄川などの大河川があり、こうした大河川の渡河部では、通勤時を中心に渋滞が発生していることから、道路整備にあたっては、①都市間連携と渡河部の渋滞対策、②都市における環状道路、③広域的な活動、交流、物流、観光を支えるため、鉄道、空港、港湾などの拠点間の連絡――を重点的に取り組んでいます。


富山県が予定、施工している主な橋梁一覧

 ――都市間連携と渡河部の渋滞対策を具体的に
 水口 都市間連携のうち南側については、国道41号から北陸自動車道小杉IC付近を経由し、高岡市の庄川に架かる南郷大橋まで(約20㌔)4車線化が整備済であり、今後、能越自動車道の高岡ICまでの約5㌔について、順次、4車線化を進めたいと考えています。同区間は、地域高規格道路の高岡環状道路でもあり、南郷大橋から国道156号までの2.6㌔の区間について、今年度、本線の暫定2車線高架化に新規着手したところです。
 次に県道姫野能町線を整備中です。これまで、国道8号、南側の県道の2ルートで都市間の連携強化を図ってきましたが、この2ルートに加え、北側(海側)に都市間連携と共に、伏木富山港との連絡強化を図ることを目的とした事業です。事業区間3.8㌔のうち、庄川に架かる牧野大橋を含む2㌔が暫定2車線で供用済みです。
 ――都市における環状道路は
 水口 富山市内は、環状道路28.1㌔のうち94%の26.3㌔が完了済みであり、残る1.8㌔については、現在、県にて国道415号富山東BP事業を進めています。
高岡市内は、東側は4車線で整備済((都)能町庄川線1.2㌔)、南側は、地域高規格道路高岡環状道路として、副道(側道)による暫定2車線で供用済みです。
 ――拠点間連絡は
 水口 北陸新幹線開業に伴い、県内に設置された新幹線新駅へのアクセス道路の整備を重点的に行っています。例えば黒部宇奈月温泉駅に関しては、県道黒部宇奈月線(黒部市荻生(おぎゅう)~若栗)など、新高岡駅については県道高岡環状線(高岡市佐野~六家(ろっけ))などが該当します。
また、都市間連携道路の中間部において、南北に連絡する道路を整備することとで、北陸自動車道と伏木富山港の広域交通拠点間の連絡を密にするため、あいの風とやま鉄道線(旧JR北陸本線)を跨ぐ県道小杉婦中線を整備中です。
 ――観光地へのアクセスは
 水口 この他に、この富山高岡射水地域から、県内の主要な観光地である、①黒部峡谷鉄道のトロッコ観光や剣岳、立山黒部アルペンルートのある立山黒部地域、②世界遺産五箇山合掌造り集落のある五箇山地域、③海越しの立山連峰を望める氷見地域などへ放射状に延びるアクセス道路の整備や、「世界で最も美しい湾クラブ」に富山湾が加盟承認され、その美しい景観の見える湾岸沿いの道路(富山湾岸サイクリングコース)の整備も進めています。

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