道路構造物ジャーナルNET

PC鋼材の破断や腐食を構造物の外側から非破壊検査診断

PC鋼材非破壊検査協会を設立

PC鋼材非破壊検査協会
会長
(京都大学 特任教授)

宮川 豊章 氏

公開日:2015.07.30

 PC鋼材非破壊検査協会は、7月29日に東京・都市センターホテルで設立総会を開催、会長に宮川豊章京都大学特任教授を選出した。同協会はPC鋼材の破断や腐食を構造物の外側から非破壊検査診断できる漏洩磁束法の技術を普及するために設立したもので、今後は年2回の講習会を開催し、発注機関を皮切りに普及を図る。設立総会には漏洩磁束法を用いた非破壊検査機「M.EYEチェッカー」の開発元である四国総合研究所をはじめとしてPCファブなど10社が参画した。以下、宮川会長と浄内明事務局長(四国総合研究所土木技術部長)に聞いた。(井手迫瑞樹)

 ――新協会設立の目的と経緯は
 宮川会長 
PC構造物におけるグラウト(充填不足の)問題は“パンドラの箱”でした。それを指摘したとたんにみんな及び腰になってしまう。それを調べる手法がなかったためです。私がそれを調べる手法として漏洩磁束法に可能性があると知ったのは10年ほど前のことでした。ただ、それがPC鋼材に対して使えるかどうかというのはその頃は良く分かりませんでした。それがどうも使えそうだと分かってきたのがここ5年ほど前です。そのため適切なサポートをした方が良いと考えました。
 一方で、PC工学会では既設ポストテンション橋のPCグラウト問題対応委員会があり、そこでPC鋼材の非破壊検査技術、PC部材の性能照査技術の検討・開発を行っていました。しかも他方ではNEXCO総研が非破壊検査技術の開発を進め、大きな成果を出しています。そこで、もう一歩踏み出す形で設立したのが当協会です。
漏洩磁束法はとても良いPC鋼材の破断を検知する非破壊検査手法で、腐食についても可能性があると考えていますが、より高度化を図る必要があります。また、他の手法と合わせてより詳細な損傷状況を確認できる方法を確立する、加えてそうした方法を多くの方に認知してもらうことが肝要です。


宮川会長(左)と浄内事務局長

 浄内事務局長 当社は研究所ですので、非常に限られた部分の研究のシーズは保持していますが、これを如何に展開するかという分野は不得手です。その辺りを、宮川会長ほか会員の皆様にご指導いただきながら普及を図りたいと考えています。
 具体的な機器は「M.EYEチェッカー」という商品ですが、漏洩磁束法はそもそも、その前に開発したコンクリートポールの鉄筋破断を外部から非破壊検査できる機器「CPチェッカー」で用いていました。


M.EYEチェッカー

 宮川 私が知ったのもその時期です。
 浄内 その時期から会長にはご指導いただいていました。しかし、広く普及するには当社のマンパワーがいかにも不足していました。そのためにもこの協会設立を契機に会員各社のお力を借りて普及を図りたいと考えています。
 ――具体的な活動内容は
 浄内 
PC鋼材を埋め込んだコンクリート試験体を用いるなどして、年2回程度の講習会開催を軸に普及を図っていきます。


測定状況

 ――普及の主対象はとりあえずどこにおきますか 
 浄内 
構造物を管理する発注機関の技術者の皆様です。
 宮川 もちろん最終的には建設コンサルタント、ファブ、補修補強専門業者など広く周知していきますが、とりあえずは発注者にこの手法を理解していただけないと業務として出ませんから。
 ――技術の高度化については
 宮川 
まだ具体的には決めていませんが、少なくとも高度化の中には検査スピードを速めるというテーマがあります。今は人力ですがこれを自動化、高速化することは必要と考えます。取得したデータを手軽に解析するソフトウェアの開発も必要です。
 もう1つは鋼材の破断・腐食の検査精度向上も図る必要があります。
 さらに分野を広げると、漏洩磁束法はPC鋼材の破断・腐食を調査することはできますが、その前段階であるグラウトの充填状況の確認は別手法が必要です。さらには破断している場合、どの程度の張力、耐力が残っているのかを計測する技術も別途必要です。加えてそれらを総合的に判断するシステムの確立が必要です。ただ、それを当協会でやるのか別の手段、組織で行うのかは定まっていません。
 ――まさに重要なのはその点です。漏洩磁束法はそれだけでも重要な非破壊検査技術だと思いますが、発注者はそうした損傷検知だけでなく、その損傷状況に対してどのように判断すべきなのか総合的かつ定量的な手法をこそ必要としています。そうした声にどう答えますか
 宮川 
今年中にも私が委員長を務めている既設ポストテンション橋のPCグラウト問題対応委員会で、診断マニュアル、補修・補強マニュアルを作成する予定です。そのマニュアルの中で今話したような手順がまとめられる予定です。同委員会には国交省、NEXCO、自治体のインハウスエンジニアリングに加え、四国総合研究所など非破壊検査技術の技術者にも入っていただいております。
 ――であるならば、PC鋼材の非破壊検査技術で専門の協会を作ったのはPC鋼材非破壊検査協会が初めてなわけですよね
 浄内 
そうです。
 ――ということは先行者としてある意味選択権があるわけで、これを機会に川上のグラウト充填探知から川下の耐力測定までを協会で固めてしまえばそうした非破壊検査技術同士がWin-Winの関係になり、発注機関も判断しやすくなる下地を示すことになりませんか
 宮川 
おっしゃる通り、発注機関はPC構造物の状態を定量的に判断する技術を求めています。M.EYEチェッカーそのものはその判断材料の1つの指標を提示するツールに過ぎません。最終的に川上から川下まで一気通貫できるシステムを構築する必要があると考えます。
 ――普及のスピード感は
 宮川 
2、3年で全国的な周知を完了し、5年後には具体的なPC橋の非破壊検査、耐力の定量的な提示が行え、各発注機関がスムーズに調査業務を発注できるシステムが出来上がっているようにしたいと考えています。
 ――ありがとうございました

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