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上下線とも90㍍送り出し 安全を強化

NEXCO中日本東京支社 新東名下糟屋第三高架橋を夜間架設

公開日:2016.11.07

 中日本高速道路は、11月5、6の両日に国道246号および県道22号の架設個所付近を5日24時~6日5時までの間、夜間通行規制して、国道246号上を跨ぐ新東名高速道路下糟屋第三高架橋の夜間送り出し架設を行った。上り線は132㍍、下り線は111㍍手延べ桁を用いて送り出す架設工事の初日を取材した。(井手迫瑞樹)


現場位置と上空写真/現場施工の流れ(NEXCO中日本提供資料より抜粋、以下注釈なきは同)

架設は国道246号と県道22号を通行止めして行った

鋼重は上り線が780㌧、下り線が600㌧
 初日は90㍍ずつ送り出す

 現場は伊勢原市下糟屋の国道246号を跨ぐ個所(県道22号と交差する上北ノ根交差点付近)にある。形式は鋼12径間連続箱桁+鈑桁2連で橋長は上下線とも680.171㍍で、幅員は9.565~10㍍となっている。今回送り出した桁形式はいずれ鋼箱桁で、その後の交差道路直上での施工がしやすいように合理化合成床版の底鋼板と左右高欄の埋設型枠を設置した状態で架設している。現在までに上り線はP22~P31間の桁架設を完了しており、下り線もP26~P32間の桁架設を完了している。今回の工事はそれに接続する桁を架設するもので、上り線で81.2㍍、下り線で68.1㍍の箱桁を手延べ桁を用いて送り出すもの。送り出し重量は上り線で約780㌧(手延べ桁含む)、下り線で約600㌧に達する。上下線で架設長が異なるのは、橋梁が国道246号を斜めに横切るようになっており、上下線で橋脚の位置が異なるためだ。
 初日夜の工事ではこのうち上下線とも90㍍ずつ送り出し、翌日夜に残りを送り出す。さらに12月3日に桁降下を行い、10日に微調整を施し完成というスケジュールだ。

効率的な施工と安全を両立
 特に安全面を強化

 同工事で重要な点は効率的な施工と安全の両立である。
 新名神有馬川橋の架設中桁落下事故を受けてNEXCO各社は安全対策を強化しているが、この現場の安全対策としては①仮設構造物の転倒対策、②仮設構造物の常時計測、③架設中の本体構造物の固定の3点について特に留意した。
 ①は送り出し構台用ベントと橋脚間にワイヤーを張って固定するほか支持地盤の耐力の確認を行うことである。特に支持基盤耐力の確認は有馬川橋桁落下事故の教訓から近接地盤ではなく、ベント直下を試験ボーリングした上でさらに平板載荷を行って耐力を確認し、ベントを架設している。

 ②は、送り出し構台用ベントについてトータルステーションにより自動計測するとともに、橋脚上ベントにもワイヤレス傾斜計を用いて自動計測するというもの。
 ③は施工後に架設桁や手延べ桁と本体構造物を仮固定するというもの。発進側は架設する本桁端部に治具を設置するとともに受け点となる橋脚の一つ後ろの橋脚背面にセンターホールジャッキを設置(アンカーボルトで橋脚に固定する)し、その間をPC鋼より線で結び、仮固定する。到達側の桁も手延べ桁、本桁ともに架設済みの桁とチェーンで仮固定している。本体構造物(この場合は橋脚および桁端部の治具設置部)になるだけ傷をつけたくない、というのは発注機関共通の思いだが、それを転換したもので、現場の危機感が窺える安全対策である。

手延べ桁先端部にたわみ取り装置を設備
 ダブルツインジャッキ+エンドレスローラーを採用

 効率的な施工という点では、ダブルツインジャッキおよびエンドレスローラーおよび、横河ブリッジの独自技術である手延べ桁先端部のたわみ取り装置を使用している。
 ダブルツインジャッキはラム運動ジャッキとシリンダ運動ジャッキの併設方式を採用しているもので、ラム運動ジャッキが稼働して架設物を押している間にシリンダ運動ジャッキが反転戻し運動を行うため、連続稼働が可能なジャッキである。1分間に最高2㍍ほどの架設速度が可能だが、現場の安全性を考慮し、1分間に平均1.2㍍の速度とした。また、エンドレスローラーを用いることで盛替え作業を最小限(手延べ桁と本桁の境界部通過時など)にできるため夜間の限られた時間内に効率的な作業を行うことができる。

 手延べ桁先端部のたわみ取り装置は、内包しているジャッキが既設桁に到達後、その反力を利用して梃子のように上昇し、架設時に生じるたわみを取り除くことができるもの。今回は最大2.4㍍のたわみが生じる計算であり、通常であれば、その分を計算した高さから架設し、架設後の桁降下時に調整する必要があるが、それらの手間を減らすことができる。

 当日の施工は6日0時に通行止め規制を完了し、予定より15分早い0時15分から架設を開始した。桁は400㌧台車を後方、中央、前方に一台ずつ計3台配置して送り出した。エンドレスローラーは最大250㌧の耐荷能力のある上下線4基ずつ計8基採用した。設計最大荷重は175㌧だが、その75㌧の余裕荷重を用意し、不測の事態が起きても十分対応できるように備えた。
 架設はスムーズに進み、下り線は2時46分ごろ、上り線も3時頃に桁が到達し、既設桁上のガイドレールに手延べ桁先端を接続し、到達側のエンドレスローラー上に誘導するとともに、反力を利用して先端部を上昇させ、最大2.4㍍に達するたわみを取り除いた。その後、所定の位置まで送り出した後、桁を本体構造物に仮固定して工事を完了した。


0時15分ぐらいに施工開始(井手迫瑞樹撮影)

いったん始まると順調に進む。先端の手延べ桁が恐竜の顎のよう(井手迫瑞樹撮影)

1時間弱で交差点中央部を超えた(井手迫瑞樹撮影)

下り線橋脚付近から撮影/手延べ桁と箱桁との境界部(井手迫瑞樹撮影)

手延べ桁先端の形状の変化。2.4㍍のたわみをここで取り除く(井手迫瑞樹撮影)

交差点部を桁が完全に横架した(井手迫瑞樹撮影)

実際の安全対策① 仮固定(発進側) 橋脚と桁をPC鋼より線でつなぐ(中日本高速道路提供)

実際の安全対策② (到達側)チェーンで桁と架設済み桁を繋ぐ(中日本高速道路提供)

12月に桁降下

 6日深夜から7日未明にかけて残りの送り出しを行った後、12月3日と10日の両日夜間に今回と同じく国道246号と県道22号を夜間通行止めして桁を所定の位置まで5.1㍍降下させて、架設済みの桁とつなぐ。ここでも降下直前まで桁を下から支える構造にし、降下時のトラブル対策として、ゲビンデスターブ(総ネジPC鋼棒)をバックアップ材として用いるなど安全対策を強化している。
 製作・架設は横河ブリッジJFEエンジニアリング。一次下請はみなと(架設)など。今回の夜間架設ではJVの職員・架設鳶などの職人合わせて170人(警備込み)が従事した。

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