HOME現場を巡る一覧佃大橋の耐震補強で乾式PCMを採用~東京都道路整備保全公社 ~

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建築限界を侵さないよう、細心の注意を払いつつ施工

佃大橋の耐震補強で乾式PCMを採用~東京都道路整備保全公社 ~

 (公財)東京都道路整備保全公社は、現在佃大橋取付部など8橋の耐震補強工事を進めている。中でも佃大橋(取付部)は、交差道路に隣接するPL3、PL10の2橋脚で乾式ポリマーセメントモルタル(PCM)を吹き付けることによって増厚し補強する手法を採用した。ほか落橋防止装置についても建築限界を侵さないような工夫を施している。現場を取材した。

 

50年前、東京五輪時に架設
 抜本的な耐震補強を図る  
 対象は隅田川に架かる佃大橋のうち、両岸の取付高架部(左写真)(中央区湊3丁目地内~月島1丁目地内)。1964年4月に東京五輪に合わせて開通した部分で、橋長256.25㍍の上部工は単純合成鈑桁橋および3径間連続合成鈑桁橋13径間、新富町側(湊3丁目)が11径間206.25㍍、月島側が2径間50㍍、下部工は逆T式RC橋台(AL1)、2柱式ラーメンRC橋脚(PL1~PL7)、多柱式ラーメンRC橋脚(PL8~PL10、PR1~PR2)となっている。昭和55年道示以前の設計で製作された橋であり、1997年ごろPL2とPL10、PR1の橋脚補強および部分的な桁どうしの連結や縁端拡幅など一部耐震補強は行われているが全体としてシステム化はされておらず、変位制限装置も付いていないことなどからL2地震を想定して、じん性、曲げ耐力の向上、容易な復旧性能確保など抜本的な耐震補強工事を実施している。
 平成24年3月に改定された道示に基づいて、平成24年度に東京都第一建設事務所で詳細設計を行っている。過年度に行われた縁端拡幅の再構築、落橋防止システムの取り付け、RC巻き立て等による橋脚補強を行う。

建築限界に配慮してPCM、せん断ストッパーを採用
 当初PL3は50㍉のPCMにより巻立てを行うが、他の橋脚は250㍉厚のRC巻立てだった。PL3にPCMを用いたのは主に歩行者が使う道路に隣接しており建築限界を侵すのを防ぐため。PL10についてもPCM(梁部で80㍉厚、柱は橋軸方向の面が75㍉厚、橋軸直角方向の面が85㍉厚)を採用(右図面参照)したのは、RC巻立てにした場合、桁下都道との関係で当初から既設の縁石外に巻立て部が突出し、建築限界を侵すことが現地を精査した中で判明し、更に上空部の建築限界を一部侵すことが判明した。そのためPL10についても橋脚ならびに梁について、建築限界を侵さない厚さで補強できるPCMによる施工を採用した。
 また、落橋防止システムもブラケットの位置や部材高、ケーブルの長さを変更した。また、当初設計では、地震時の水平力が作動した際に落橋を防止するためのRC突起と緩衝ピンを付ける予定だったが、その代わりに(1装置で橋軸、橋軸直角方向の2方向の変位に対応でき桁の浮き上がりも抑制できる)せん断ストッパーを取り付ける(右図参照)ことで「外部からの支承の点検もし易く」(同公社)なるようにした。同時に縁端拡幅、PC鋼材による桁連結なども施工する予定だ。

高性能、施工性の良さを考慮して乾式PCMを採用
 ワイヤーソーイング(無水カッター)で騒音を抑制
採用工法
 既設の縁端拡幅部を壊す必要があるが、付近がマンションで占められているため、施工時の騒音は最小限にとどめる必要がある。そのためブレーカーなどを使わずワイヤーソーイング(無水カッター、(株)アクティブ)などを採用するとともに防音シートで覆い施工した。


ワイヤーソーイング(無水カッター)を採用して騒音を抑制

 PCMの吹き付けは乾式を使用した。「建築限界を侵すためRC巻立ては無理で、鋼板巻立てを行うにも根巻コンクリートが必要なためこれも難しい。炭素繊維シートでは補強では基部の曲げ補強への対応が難しい。そのためPCM吹き付けによる増厚を行った」(元請の戸田・ショーボンドJV)。
乾式吹き付け(Sto乾式吹付耐震補強工法)を採用したのは、「品質・強度とも湿式吹付けより高い性能を期待できることや、施工性を考慮した」(同JV)。具体的には今回の現場では70㍉程度の厚さが必要だが、湿式PCMでは一度に20~30㍉程度しか吹付けできず、層間にはプライマーを塗布して接着力を確保する必要がある。それに比べてSto乾式吹付耐震補強工法はプライマーなしで最大50~100㍉の厚付けができ、PL3では1層で施工でき、PL10のように施工効率を考慮して2層吹きする場合にも層間にプライマーを塗付することなく直に吹付けできるため施工時間も短縮できるメリットがある。母材下地についてもプライマーは必要なく表面を水で湿らせるだけで必要な付着力を確保できる。


乾式PCMの施工(上段および下段左)/施工前の確認作業(下段右)

 その理由は「乾式吹付工は水セメント比が約40%のポリマーセメントモルタルを圧縮空気にて高速で吹付ける運動エネルギーにより既設コンクリート構造物への付着性に優れ、1層の吹付け厚も湿式吹付工より2~3倍程度となる。また高密度断面形成により劣化因子の侵入を阻止し中性化・塩害・凍害等に対する耐久性が高い製品になる」(一次下請の(株)田中建設)ため。付着強度は要求性能1.5N/平方㍉に対して高い2.2N/平方㍉以上、圧縮強度は60N/平方㍉以上を有している。また「圧縮空気で吹付ける構造であるため鉄筋裏にも密実に施工できる」(StoCretec Japan㈱)としている。