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WJで全面はつり 補修補強方法を模索しながら

関門橋 塩害で傷んだアンカレイジ側壁面を補修

公開日:2015.12.16

檀之浦PAに面した1,214平方㍍から補修

 西日本高速道路九州支社北九州高速道路事務所が管理する関門橋の下関側橋台部で、塩害で傷んだアンカレイジ側壁面の補修が進んでいる。約15年前に表面被覆を行っているが、一部コンクリートの剥落などが生じていることから今回全面的な補修を行うもの。4面のうちまずは下関側の檀之浦PAに面した1面(下写真)1,214平方㍍を補修している。現場を取材した。(井手迫瑞樹)


檀之浦PAに面した1面を補修

 補修にあたっては外面調査をした結果、浮き・剥離やひび割れなどの損傷が広範囲に出ていることが分かった。また、鉄筋近傍の塩化物イオン濃度は全体的に1.2㌔/立方㍍を超え、場所によってはその倍以上の値を示すカ所もあった。過去にも部分的に断面補修した個所もあったが、そうした個所が再劣化して鉄筋の断面欠損を生じていることも分かった。このため、ほぼ全面に足場をかけてウォータジェット(WJ)によるはつり、断面修復することにした。

場所によって症状は様々 再はつりする箇所も
 劣化は不均一、損傷が貫通している箇所も

 はつり
 同橋は1973年に供用された橋長1,068㍍の3径間2ヒンジ補剛桁吊橋で橋台1基当たりのコンクリート量は約57,000立方㍍を用いている。
 壁面コンクリートの厚さは400㍉。塩害による損傷状況は様々で、WJによるはつりは手さぐりしながら施工している状態と言える。基本的には表面から130㍉(被り厚110㍉+鉄筋(D16およびD19を使用)裏20㍉)をはつり、断面修復する方針だが、「WJではつりだした鉄筋はばらけた状態となる。そのため、鉄筋位置を計測してデータを残し、鉄筋の欠損情報も確認して、不足分の補修も含めた再配筋方法を検討」(富士技建)しながら施工する必要がある。WJは3月から施工し始めて、現在は8ヶ月が過ぎ、700平方㍍程度まではつっているが、「ところどころコールドジョイントになっている箇所もあり再度はつらなくてないけない箇所も出てきている」(同社)。


アンカレイジ部の損傷状況

安全施工のためキャリブレーションしながらはつる
 WJ 1日当たり最大でも7平方㍍しかはつれない

 施工で一番気をつけることは、劣化が不均一であることと、例の無い大断面の構造物の横向き施工であること。また、部分的に壁面の損傷が貫通し漏水している箇所もある。アンカレイジの中にある重要な構造物を傷つけることは許されないが、弱い箇所ではややもするとWJが貫通してしまう危険性がある。そのため壁の内外から状況を確かめつつ、慎重に少しずつキャリブレーション(出力調整)しながら施工を進めているが、「いったん施工しだすと止められないのがWJ」(同社)であるため、橋台の内側に監視人を配置するとともに、貫通が疑われる箇所には、はつり面の裏側に水止めの鉄板を配置し、貫通をあらかじめ防いでいる。こうした施工環境であるため、単純にパーティー数を増やしても効率は上がらない状態で、1日あたり最大でも7平方㍍程度しかはつれない状態だ(水圧は240MPa、水量は2.5~3立方㍍/h)。


(左)WJ装置/(右)WJはつり状況(コールドジョイント部、背面に鉄板を当てて施工)こうした箇所が頻繁に出るため連続施工できない

(左)コールドジョイント部(構造の不連続部、連続した閉曲線で出現、強度を考えての施工)
(右)コールドジョイント部(構造の不連続部、S構造柱が出現)


WJの施工状況 極端に硬度が低い箇所が部分的に出現する

不均一な面にきちんと充填できる断面修復工法を選定
 マクロセル腐食対策が必要

断面修復
 作業手順としては、基本的にWJで全断面積をはつった後に断面修復に入る予定だ。断面修復は新設と違い、壁面に(劣化状況の違いによる)凹凸があるため、「不均一な面にきちんと充填できる断面修復工法を選定しなくてはならない」(NEXCO西日本)。基本的には鉄筋が腐食している個所を防錆材で手当てし、欠損部は鉄筋を再度組み、その後にポリマーセメントモルタル(PCM)による吹き付けもしくは、型枠工でコンクリートにより断面修復を行い、完成となる。施工に当たっては下から打ち上げていくが、部分的に貫通している箇所に確実に充填できるように慎重に施工していく。一方で既設コンクリート部にも塩化物イオンを多く含む部分が残っている可能性もあり、マクロセル腐食対策が必要であるが、これについてはシラン系含浸材を新旧界面に塗布する形と亜硝酸リチウムを混入した断面修復材で施工する手法を検討中。断面修復工は、WJと異なりパーティー数を増やすことで1日あたりの施工面積を大幅に増やしていく考え、ただし部位によっては厚みが大幅に変わることから、「当初積算と比べたロスはかなり増えるだろう」(NEXCO西日本)としている。
 今後は、同壁面部だけでなく、下関側の他の3面、門司側のアンカレイジ壁面部についても調査した上で断面修復工を施工していく方針だ。
 元請は富士技建、WJ下請は久野製作所

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