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景観的特徴を変えず補強

愛知県 橋暦90年 歴史的名橋「殿橋」の上部工連続化による耐震補強

 愛知県西三河建設事務所は、昭和2年に建設され、いまだ現役で供用されている殿橋について上部工の連続化および耐震補強工事を進めている。同橋は一般県道岡崎幸田線の一級河川乙川渡河部に架かる橋梁であり、国道1号および248号を結ぶ主要ネットワーク路線の一部を担うほか、歴史ある外観やライトアップにより作りだされる重厚な風景から多くの市民に親しまれている。供用時から戦後の一時期までは中央を名鉄岡崎市内線が走っており、構造的に大きな特徴を有している。こうした景観的特徴を変えず、構造的特徴を捉えながら補修補強している現場をルポした。(井手迫瑞樹)


重厚な面影で岡崎市民に親しまれる殿橋


(左表)設計条件/(右表)補修・補強履歴


橋梁概要

 同橋の橋長は112.74㍍、形式は12径間単純RCT桁で今回はその単純桁を全て連続化し12径間連続RCT桁とするもの。既設上部工は昭和54年に沓座を拡幅し、床版や主桁の一部に鋼板接着補強をしているが、落橋防止装置の設置はなされていない。加えて、下部工は現在まで耐震的に一切手を着けておらず、耐力は大きく不足していることが予想されており耐震性能が低い橋梁である。加えて現橋の河積阻害率は7%を超えており、許容阻害率の5%を既に満足していないため、下部工の補強はできるだけ避ける必要がある。一方で昭和初期に建設された単純桁構造であるため、支点上の遊間部からの漏水がRC部材や鋼材の損傷原因となっている。床版防水も現在まで未設置の状態だった。


殿橋の側面図および平面図


補修補強工事前の概況(耐震性能)

 平成25年度に実施した耐震補強設計では、下部工の沓座部に設けたRC突起構造を落橋防止装置にする設計を行ったが、下部工の耐力不足により落橋防止装置が機能した際に発生する水平力に対して下部工が耐えられないことが想定されるとともに、橋の景観も損なうことが考えられた。このためNEXCOの床版連結構造などを参考に、単純桁構造の中間支点上を連結した連続化構造にすることで、落橋防止装置の設置を不要にし、下部工への影響を抑制することに主眼を置いた。

 上部工の連結を行うと、当然ではあるが橋梁全体の挙動が変わる可能性が出てくる。殿橋は元々上部工と下部工を繋ぐ支承構造が、少し不明確だった。古いRC橋では上部工と下部工をアンカーバーで繋いで連結している構造物もあるが、X線などを用いて調査してもそうした形跡は発見できなかった。「古い図書を調べると昭和初期では、アンカーなどを入れずにただ橋脚の上に桁が載っているだけの構造も見られる。そのため殿橋の支承構造は基本的には可動相当で、若干可動のすべり摩擦ぐらいは下部工に入っているであろうことが考えられる」(中日本建設コンサルタント)と推定した。

 下部工も復元設計した。柱の鉄筋はφ25程度であり、それから推測すると、水平震度としてはkh=0.12ぐらいの耐力は有していると考えられる。当時の基準(大正15年)として水平震度に対する耐力はkh=0.1~0.3の範囲内という数字があり、それは満たしていたようだ。一方で現行基準(平成24年道示)のレベル1 地震設計水平震度kh=0.2に対しては、柱断面および鉄筋量が不足する結果となった。しかし、過去の三河大地震の時は特に大きな損傷はなかった。「殿橋に入ってくる力というのはkh=0.12相当のものしか入ってこなかったものと考えられる。理由は支承条件が現在でいう可動支承相当であり、上部工に作用する地震力が下部工に大きく伝わらない構造であるためではないかと推測される」(同)としている。

 以上の結果から上部工を連続化しただけでも下部工への地震力の影響はkh=0.12程度の限定的なものと考え、裏付けるために様々な動的解析を行った。具体的には現況構造全体系照査(上部工連結前+支承条件Move)、上部工連結後全体系照査(支承条件Move)、下部工単体(支承条件Move)での解析、上部工連結後の多点固定で全体系を照査した場合(橋脚上の支承条件をFix)にした場合をそれぞれ検討した。

 元々、kh=0.12程度の水平震度しか考えていないため、平成24年度示方書基準のレベル1(kh=0.2)やレベル2相当の地震動に対しては、耐力が不足していることが判明しており、特に橋軸直角方向のせん断応力に対しては大きく不足している結果が出た。

 但し、殿橋の下部工は、少し補強してやれば耐力が飛躍的に向上することも分かった。そのため、(今回は施工しないが)、将来的にせん断耐力と曲げ耐力を網羅するような形で炭素繊維シートを巻いて補強すれば耐力も満足する見通しが立っている。

 殿橋は直接基礎で(強固で)あるため補強に伴う基礎への影響は限定的で、追加補強は必要ない。